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忘れへんうちに 旅編では、南イタリアの旅を再開しました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2020/05/01

ローマ国立博物館(マッシモ宮) リウィアの別荘のフレスコ画


入口や館内を撮り忘れ、まずはリウィアの家(La Villa di livia)のフレスコ画を見るために、エレベータで3階(ヨーロッパ風には2階)へ。

リウィアの別荘の庭園画ローマ、プリマ・ポルタ出土 前1世紀末頃-1世紀前半 全体358X590㎝
『光は東方より』は、ローマ初代皇帝の妻リウィアの別荘は、ローマの北郊フラミニア街道沿いのプリマ・ポルタの近くにあり、「白鶏荘」と呼ばれていた。「白鶏荘」と呼ばれるようになった由来について、ローマの著作家たちが以下のような興味深いエピソードをつたえている。
アウグストゥスに嫁いでまもないリウィアがこの別荘を訪れていたある日のこと、一羽の鷲がそばに飛んできて、攫った白い雌鶏を無傷のまま彼女の膝の上に落として去った。雌鶏は月桂樹の小枝を嘴にくわえていた。彼女がその枝を挿し木にしたところ月桂樹の林苑となり、以後ネロの時代まで皇帝たちの凱旋式に使われる月桂樹の枝は、この林苑から折り取られる習慣となった。一方、白い雌鶏は手厚く飼われ、たくさんのひなを孵したので、いつしかこの別荘は「白鶏荘」と呼ばれるようになった(プリニウス『博物誌』XⅤ:40、スエトニウス『ガルバ伝』1)という。

長方形の部屋の長辺半ばにアーチ形開口部がある。その唯一の開口部から入って、ひとまず反時計回りに写す。

東壁北側 落ち着いた青系をバックに、果樹や草花、その上を飛ぶ小鳥
同書は、この庭園画は1863年にこのリウィアの別荘から発見された。別荘の西側部分に位置する地下の矩形の部屋(11.7X5.9m)に、精妙な変奏曲を奏でながらほぼ同一の主題が四周の壁をぐるりと取り巻くように描かれているという。
その上には、平らな壁面からヴォールト天井の曲面へと移行する辺りに、ギリシアから受け継いだトリグリフとメトープのように、交互に白地と青地の額のようなものが並んでいる。
北壁
ヴォールト天井のため、短辺は上部にいくほどすぼまっている。
同書は、大理石の柵の中央は龕のように四角く湾曲し、そこにひときわ目立つ一本の木が立っている。木の種類は四方の壁でそれぞれ異なり、今ここに見る北壁中央の木は細かな針葉におおわれた蒼々とした松であるという
生命力あふれる若い松が枝葉を伸ばしている。その根元に生えているものと、鳥は・・・
西壁北側
同書は、庭園画に四方を囲まれたこの地下の部屋は、一説には夏用のトリクリニウム(食堂)であったという。とすれば、暑さを避けてこの部屋で食事をとる人は、ふと目を上げると緑深い林苑が目にとびこんできて、さながら戸外の田園の中に身を置いているかのような錯覚に浸ったかも知れないという。
西壁中央
いや、よく眼を凝らすと壁面上方に蔓とも岩屋根の稜線ともとれる不規則な縁取りが青空を限っているのに気づくから、室内は洞窟(グロッタ)もしくは草葺き屋根の四阿として想定されているらしい。
ここは冷んやりとした洞窟の中で、そこから見とおした庭園風景が広がっているという設定らしいという。
西壁南側
同書は、大理石製柵の中央の四角い窪みの遠近法的表現や、林苑の彼方の青空と溶けこむあたりの彩色による空気遠近法など、イリュージョニスティックな空間表現が見られるのに、全体の印象は奇妙にも遠近感を欠いていて二次元的である。写実的でいて何かしら非現実的な不思議な庭園。アウグストゥス時代の「ローマの平和(パクス・ロマーナ)」を象徴するような常春の楽園の雰囲気が溢れているという。
南壁
庭園画がローマ壁画において一つの独立したジャンルを確立するのは紀元前1世紀末頃、時あたかもリウィアの夫オクタウィアヌスが共和政末期の内乱を平定し、アウグストゥスと改名して帝政を布こうという時期に当たっている。このリウィアの別荘の壁画はこの時期に制作されたと推定されており、庭園画はその後ポンペイ第4様式の終わりまで流行するという。
東壁南側
同書は、中央の木はここではドイツ唐檜もしくは樅と推定されているという。
東壁中央 これで一周
不思議といえば、一体どんな季節にこれほど多種多様の花がいっせいに咲き誇り、さまざまな果実が熟し、色とりどりの鳥が飛翔するだろうか。ここには季節の推移は存在しない。ウェルギリウスによってサトゥルヌスの黄金時代の再来と歌われたアウグストゥスの「ローマの平和(パクス・ロマーナ)」を象徴するような、常春の楽園の雰囲気が溢れているという。

前景には黄土色の丈の低い垣根、その中央の開口部を通ると細い散歩道、大理石製とおぼしき桃色がかった沈み彫り装飾のある丈の低い柵、その向こうに青い空を背景として種々の果樹や常緑樹、ケシや薔薇、菊などの花が生い茂り、枝々を色鮮やかな鳥が飛び交っているという。
垣根も丁寧に描かれ、向こう側の草や小木が隙間からうかがえるほど。
大理石の柵も一面ずつ文様を変えている。
メトープとトリグリフのように交互に並んだ浮彫漆喰と彩色による装飾

火に遭って焼け残った跡かと思っていたが、壁面のへりには、蔓とも岩屋根の稜線ともとれる不規則な縁取りが青空を限っているのに気づくから、室内は洞窟(グロッタ)もしくは草葺き屋根の四阿として想定されているらしいという。
確かに描かれたものだった。後者の草葺きの四阿が相応しいと思う。
この鳥はツグミかな。実はカリンかマルメロ・・・のよう(東壁北側)。
草葺き屋根の軒が見えている方が雰囲気がいい。

東壁南側
細い葉だが、針葉樹ではない。
東壁中央の開口部右側
左側
鳥もいるし、果物もなっているが、白い花が気になる。
赤茶色の萼から出た白くふんわりした花が下向きに咲いている。
東壁中央の開口部右
黄色い花弁に深い切込のあるキク科の花
右の白い花は4弁
東壁北側
上の方で飛んだり留まっている小鳥を見てしまいがちだが、肢の長い鳥が地面を歩いている。
こちらを向いて描いてほしかったな。クイナのような鳥だろう。
ひょっとして、色褪せてしまったが、嘴の赤いバンでは🧐
東壁北側
カリンの実?それを狙っている小鳥

北壁東側
ここでもクロサギ?が留まろうとする瞬間を描き、枝に留まるツグミにやや遠方で飛ぶツグミ。大理石の柵の上を歩いているずんぐりした鳥はなんだろう。
右隅近くにナツメヤシの木が描かれる。
北壁中央の若い松の根元にはアカンサスがたくましく葉を広げる。
その左にいる鳥は、鷲がリウィアの膝に落として去ったという白い雌鶏?いやシラサギのよう。
右の垣根の上に留まった小鳥もツグミだろうか、後ろを向いてさえずっている。
北壁西側
果樹の下にはキク科の花、これは黄色いヤグルマギク?
実はザクロ

西壁北側
中程の枝に留まる白っぽい鳥は、尾が長いのでハトではない。
西壁の続き
大理石の柵の奥に出た箇所には1本の木が植えられている。その脇にいるのはサギだが、白くはない。
クロサギかな?
続いて
ここでも木々に鳥たちが留まっている。
低いオリーヴの木にはハト。ザクロの細い枝に留まるスズメかホオジロはハトを見ている。
西壁中央
オリーヴの木?に留まる2羽の鳥はやっぱりハト?
不思議な実
西壁南より
地上に2羽のハト
西壁その南
ザクロの下にカリン

南壁西側
またしても赤茶色の萼に白い花が下向きに咲いていた。
南壁中央
クロツグミ?が広葉の先に留まろうとし、すでに留まっている小鳥たち、木の右下で大理石の柵に留まるちょっと太めの鳥さん。
野ばら?
南壁中央より左
鳥籠は大理石の柵の上に置かれているはずなのに、草の地面に置かれているように描かれている。そしてその中の鳥は葉っぱに見え隠れして、姿を現さない。
ここにもその白い花が咲いている。
南壁東側
撓わに実るザクロの上方に留まり、実を突こうとしているのはツグミ?そしてツグミが落とした実をいただこうと待ち受けている白いハト、と思ったが、ハトは後ろを向いている。
大理石の柵の向こうには白いキク科の花と黄色いヤグルマギク。
南壁と東壁の角にはオリーヴの木。

『世界美術大全集5』は、ローマ時代に数多く描かれたこの種の庭園画の起源は、ヘレニズム時代のサテュロス劇における舞台背景画にさかのぼることができる。しかし、それよりも重要な要素は、メソポタミアおよびエジプトに起源をもつ庭園そのものである。セレウコス朝およびプトレマイオス朝を経由して東方の庭園の概念およびアルス・トピアリア(庭園術)がローマに伝わるのは前2世紀になってからである。パラディソスを具体化する庭園術がローマ人固有の自然に対する関心と相まって、都ローマにはいくつもの広大な庭園が出現する。
前2世紀から1世紀にかけて都ローマに建設された庭園は、貴族の別荘にも影響を及ぼし、田園にあるにもかかわらず別荘の敷地内に庭園を設けるようになる。ローマ人にとって自然と親しめる環境を確保することは、豊かさと幸せの象徴でもあり、したがってそのような緑あふれる場所を「喜ばしきところ(ロクス・アモエヌス)と呼んだ。リウィアが別荘地下室の壁面全体に庭園を描かせたのは、そのようなあこがれの具体的表現だったのであるという。 
リウィアの別荘については、イタリア ローマの新聞屋さんヴィッラ・リヴィア アウグストゥス帝の奥さんのリヴィアの家という記事に詳しく紹介されています。
見学できるらしいので、いつか、ローマ中心部にあるパラティーノの丘のアウグストの家とリウィアの家などと共に訪れたいところ。

             →ローマ国立博物館(マッシモ宮) オプス・セクティレ

関連項目
ローマ国立博物館(マッシモ宮) テルミニ駅の複合遺跡
ローマ国立博物館(マッシモ宮) ファルネジーナ荘
ローマ国立博物館(マッシモ宮) フレスコ画
ローマ国立博物館(マッシモ宮) 舗床モザイク

参考サイト
イタリア ローマの新聞屋さんヴィッラ・リヴィア アウグストゥス帝の奥さんのリヴィアの家

参考文献
「NHK名画への旅2 光は東方より 古代Ⅱ・中世Ⅰ」 監修木村重信他 1994年 講談社
「世界美術大全集5 古代地中海とローマ」 1997年 小学館