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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2025/03/18

シェフザーデジャーミィ Şehzade Camii の装飾


スレイマン大帝が自分の後継者にしたいと思っていたのに若くして亡くなってしまった皇子(シェフザーデ)メフメトのために建立したモスクには、時期的にイズニクタイルは少ないものの、様々な装飾で荘厳(しょうごん)されていた。その内の壁画か象嵌かよく分からないものが気になった。

シェフザーデジャーミィ平面図及び断面図
①モスク正門 ②中庭 ③シャドゥルヴァン ④回廊 ⑤礼拝室正面入口 ⑥ソン・ジェマアト・イェリ ⑦半ドーム ⑧主ドーム ⑨ミフラーブ ⑩エクセドラドーム ⑪隅のドーム ⑫ペンデンティブ ⑬主ドームを支える柱 ⑭中庭への脇入口 ⑮ミナーレ ⑯礼拝室への脇入口 ⑰スルタン用入口 スルタンのマッフィル
イスタンブール シェフザーデジャーミィ平面図 トルコ・イスラム建築より


シェフザーデジャーミィの中庭を囲む回廊とソンジェマアトイェリ(礼拝の時刻に遅れてきた人が礼拝する場所)は、他のモスクと同様に小ドームと尖頭アーチのアーケードが巡っているのだが、

入口より左の④回廊

入口より右の④回廊


中庭で気がついたのは、一つ一つ文様を違えたリュネットだった。スレイマニエジャーミイではリュネットではなく、四角い区画にタイルが貼られている。他のモスクでもタイルの方が一般的だと思う。
赤と白だけのものと、黒が入り込んでいるものがある。

左上と同じ文様で、二つの同心円を中央に六角形ができるように重ねて配置していて、その中には六点星がうっすらと見える。


④ソンジェマアトイェリの突き当たりにも窓の上のリュネットに赤っぽい装飾がある。窓の扉はキュンデカリ技法


幾何学文様のような、植物文様のような・・・

上の二つと同じデザイン。幾何学文様に同一のペンチが、上から1・2・3個と描かれている。

同じ幾何学文様の中に複数の種類のペンチ(花を上から見た文様、ロゼット)が、上から1・2・3個と描かれているものも。


どれだけの種類があるのだろうと、限られた時間の中、写して回った。

左上のリュネットと同じ文様

六点星が真っ黒ではない。


二つ右上に似たデザインのリュネット

石に赤や黒の部材を象嵌したものだろうか、それともただの彩色なのか。タイルでないのは確か。ところどころ補修の痕跡がある。

ヒビのようなものがある箇所には僅かに盛り上がりが見られるので、彩色だけではなさそう。


また、礼拝室内では
入口側のマッフィルの間と、下のアーチのスパンドレルにも装飾がある。

マッフィルの間の矩形の文様は中心の八点星から伸びた線がスクエア・クーフィー体のカリグラフィーへと繋がっていく。それは上下の植物文様と幾何学文様の装飾帯と同様に描かれたものだろう。

マッフィル下のスパンドレル施された蔓草文様も描かれたもので、古びが感じられない補修のもの。


ミフラーブ壁左端の⑱スルタンのマッフィル

スルタンのマッフィルだけではないが、ミフラーブ壁の窓の上には細い線が描かれたリュネットがあった。

ブルサのウルジャーミイの壁や角柱に描かれた目を見張るようなカリグラフィーよりも繊細。


そしてこの細いカリグラフィーはミフラーブ壁全体のリュネットに並んでいるのだった。

シェフザーデジャーミィには絵付けタイルはなかったが、それに替わる他では見られない装飾があった。