『THE ARCHITECT AND HIS WORKS SİNAN』は、このモスクはタイルで有名で、入口側のギャラリー天井には今でもオリジナルの装飾画が飾られているという。
ソンジェマアトイェリのタイル
拡大してみると、珊瑚の赤と呼ばれる釉薬が今にも滴り落ちそう。これくらい厚く塗らないときれいに発色しないと聞いたことがあるが、こんなにたっぷりと使って百年で原料が枯渇したともいう。
見上げていた時には気付かなかったが、地の青い色にこんなにムラがある。それに青い釉薬は蔓草の茎や花にまで滲んでいる。こんなものだったかなあ。
補修タイルは雑に貼られていて、四隅が合わないので文様も合っていない。せめて中心くらいは合わせてほしかった。
上は八点星、中心に八弁のペンチ(様式化された花の横断面)、下は十二の小さな弧で後世された円の中に花をしたから見た八弁のペンチ。それぞれペンチから出た茎がサズ(葦の葉)とハタイ(花を垂直に切った断面図を洋式化したもの)が描かれている。(文様の解説は『ルステム・パシャ・モスクとイズニック・タイル』・『TURKISH TILES』より)
盛期イズニクタイルの文様よりもかなり簡略化されている。
タイル装飾ではないが、礼拝室入口のドームは、正確にはドームではなく中国の伏斗式天井のように頂部が平たい。
その頂部の装飾は、タイルではなく壁画で、中心の八点星から白い組紐文が様々な幾何学文様を紡いでいる。中にはこれまで見たことのない組紐文も含まれている。
ただし、壁面の白さから考えて、枠の外を巡る文様帯は古くない時期に修復されたものだろう。主文様は濃淡があるので、ある程度古いものかも。
修復を重ねたからか、ステンドグラスは見るべきものはないが、その下には見事なタイルパネルのカリグラフィーの帯が続いている。
側壁のタイルパネルもトプカプ宮殿ハーレムのムラト三世の間への控えの間のものによく似ている。ヌルバヌはムラト三世の母后(ヴァリデ)なので不思議ではないけれど。
中心軸上に下から上まで赤い色があしらわれている。
これを見ると、どれがトルコブルー(トルコ石色)か分からなくなってしまう。
遠目ではまっすぐな幹から出ているように見えるが、よく見ると青地の中にはチューリップ、カーネーション、小さな花から現実にはない花までが赤と白で表されている。そしてそれらが大きな花の縦断面からほぼ左右対称に茎を伸ばしている。
窓の上のタイルパネルは一つずつ独立していて、濃紺に白のカリグラフィーが描かれ、トルコブルーの帯に囲まれている。光の当たり方によってはタイルの表面にうねりがあるのが見える。
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参考文献
「TURKISH TILES」 Özlem İnay ERTEN,Oğuz ERTEN SILK ROAD PUBLICATIONS
「ルステム・パシャ・モスクとイズニック・タイル」 イスマイル・カラケッレ著 金坂麻子訳 2012年