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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/07/31

トゥールーズ、サンセルナン聖堂 周歩廊の浮彫 


今回は鍵か掛かっていたため入場できなかった後陣には、5つの放射状祭室と周歩廊に囲まれた内陣背面、そして地下祭室ある。
『Visiter Saint-Sernin』には、周歩廊と地下祭室の見学は10時-11時30分、14時30分-17時(10月から6月の平日)なので閉まっていたのだった。

同書は、後陣の最初期の柱頭に朝の光がさす。最も古い柱頭は、南側最初の小祭室と2つの窓の、植物文様と小動物が二層になっていて、彫りは浅いが非常に優美である。次は力強く構成された2つの王冠のようなアカンサス唐草のコリント式柱頭が内陣の丸い後部にある。時にパルメットに入れ替わるアカンサスは、サンセルナン聖堂の大ヒット作である。しかし、聖書の物語を表した柱頭はすでに出現している。2つ目の小祭室の入口南に、4頭の寝そべったライオンの間に預言者ダニエルが両手をあげて坐っている。2頭は小さな顔と頭を引き延ばして角の渦巻の代わりとなっている。左右対称の小祭室には、二人の戦士が敵を追っている。ここで伯爵たちの門の工房の特徴を見ることができるという。
コリント式に由来するようなアカンサスの柱頭は同書の図版で確認できるが、残念なことに、他の柱頭は掲載されていない。
同書は、内陣後部の下方には、大理石の浮彫が7枚ある。そのうちの3枚は、大きさと様式の調和の取れた一連の作品であるという。
同書は、浅浮彫だが堂々とした、四福音書記者の象徴に囲まれたマンドルラの中の栄光のキリストという。
マンドルラの中はかなり彫り深り込まれているように見える。キリストは玉座に坐し、右手で祝福し、左手で膝に建てた聖書を持っている。ずいぶんと恰幅の良いキリストで、不思議な衣文線がその胴部を刻んでいる。
左上の鷲はヨハネ、右上の人間はルカ、右下のライオンはマタイ、左下の牡牛はマルコ。
左は天使ケルビム、右は天使セラフィム
『ロマネスク古寺巡礼』は、ケルビムは『旧約聖書』「創世の書」にあるイェッセの樹の警護者、セラフィムは6つの翼をもつ天使で、神の玉座の近くに使えた天使であるという。
どちらかというと、宙に浮いたような足先になっている。
欧羅巴の旅サン・セルナンバジリカ聖堂の周歩廊では、南に使徒のパネル2枚、北に天使のパネル2枚があって、それぞれの間から地下祭室に降りられるようだ。

クリプトへ。
その一つにサンジャックの聖遺物箱が安置されている。
『ヨーロッパ巡礼物語』は、内陣の祭壇背後には聖セルナンの墓があり、地下祭室へ下りて行くと、さまざまな聖遺物が収められており、かつてのコンポステーラに対抗して聖ヤコブの遺体を確認したといわれてるこの教会の、大きな祭室の意味を改めて知らされたという。

『図説ロマネスクの教会堂』は、初期中世からロマネスクにかけては、クリュプタの発達が著しい。クリュプタとは教会堂の一部分で、天井高が低く薄暗い空間をさす。クリュプタの起源は地下に設けられたコンフェッシオという聖人墓であるといわれる。初期キリスト教の教会堂のアプシスの地下に聖人の棺を収めた小さな墓室が設けられ、この墓室にお参りするために、教会堂の内部から降りる地下道が掘られ、墓室の周囲を半周する。コンフェッシオは、真上にちょうど大祭壇がくるように配置されている。
しかし、やがて、たんに墓室に参詣するだけでなく、聖人墓のそばで礼拝が行われるように、礼拝空間が設けられるようになり、広間式クリュプタが生まれる。
ロマネスクの中頃から、これらのクリュプタのもつ礼拝機能をすべて内陣のレベルに移し、内陣の大祭壇の空間と一体化しようとする動きが出てくる。その解決方法として登場するのが段状内陣と放射状祭室付周歩廊内陣である。
これはアプシスの外側に周歩廊を設け、さらにその外側に小アプシスを放射状に配置する形式である。
またサンティアゴへの巡礼路沿いの教会堂(コンクのサント・フォワ、トゥールーズのサン・セルナン、サンティアゴ・デ・コンポステラ)でも放射状祭室付周歩廊内陣が採用されているのは、多くの巡礼が周歩廊の小アプシスにお参りしても、内陣中央のアプシスで行われる礼拝が妨げられないという利点があるからであるという。
放射状祭室は、外側からは見ていた(ここからは3つしか見えていないが)。
『Visiter Saint-Sernin』というガイドブックの表紙には、少し上の方から眺めたサンセルナン聖堂の後陣が写っている。そこには、平面図にあるように、後陣に5つの小祭室、両翼廊に2つずつの小祭室が取り付けられている。

サンセルナン聖堂 ミエジュヴィル門の浮彫装飾← →ジャコバン修道院

関連項目
オーギュスタン美術館 サンセルナン聖堂の柱頭
サンセルナン聖堂 内部

ギリシアの聖堂でクリプトを見学した記事
テッサロニキ4 アギオス・ディミトリオス聖堂2 クリプト
オシオス・ルカス修道院5 クリプト

参考サイト
欧羅巴の旅サン・セルナンバジリカ聖堂の周歩廊

参考文献
「中世美の様式下 ロマネスク・ゴシック美術編」 オフィス・ドリーブル編 大高保三郎・岡崎文夫・安發和彰訳 1991年 連合出版
「visiter Saint-Sernin」 Quitterie et Daniel Cazes 1994年 ÉDITION SUDOUEST
「フランス ロマネスクを巡る旅」 中村好文・木俣元一 2004年 新潮社
「ロマネスク古寺巡礼」 田沼武能写真集 1995年 岩波書店
「ヨーロッパ巡礼物語」 田沼武能 1988年 グラフィック社