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忘れへんうちに 旅編では、南イタリアの旅を再開しました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/08/28

モワサック、サンピエール修道院 西回廊柱頭


モワサックのサンピエール聖堂回廊の柱頭彫刻はについて『Sculptures Romanes』は、その類似性から、最初の工房の作品は、モワサックの回廊完成のすぐ後に制作され、1100-1110年頃とされている8つの聖書の物語と6つの頂板で、モワサック集団の一工房が造ったものである。
全体の形や柱頭の大きさ、図柄の構成と、人物を特定できる姿がモワサックの柱頭と似ており、トゥールーズ風の柱頭彫刻が生まれるのはその後のことである
モワサックの回廊の柱頭のように、四角錐のピラミッドの形を俯せにした花籠飾りが特徴である。卵形の顔に小さくずんぐりした体の人物像は静的で、ほぼ正面向き、そして何もない背景から高く抜き出ている。場面は各面毎に区切られている
という。

サンピエール修道院回廊は、北西から入って北側から時計回りに回ったが、『moissac』の平面図では西回廊から番号が打ってあるので、それに従うことにする。
また、中庭には入らなかったので4面ある柱頭彫刻のうち3面しか見えなかったし、限られた時間の中で1面しか写せなかったものもある。
尚、その注釈は同書のものである。

四隅の支柱は2箇所に2本の付け柱があり、そこから単柱と2本の円柱が交互に並んでいる

1 支柱 西面 使徒聖フィリポ
ベトサイダ出身、聖アンデレとペテロの町
体は正面、顔は左を向いて、書物(聖書?)を示す。
ここから右方向に柱頭を見ていく。まず最初は支柱の付け柱(右に少し見えている)。
フィリポの縮れた髪はその毛並みが細かく彫られている。また、着衣の襞も、内着は浅く、外着は2本の突線で表すなど細かい。

2 アブラハムの犠牲 旧約聖書の物語 双円柱の付け柱の上
「イサクの犠牲」の方が分かり易い。
東面(画像なし) イサクは父が座っているところにロバを連れて行く。木と火を運んでいる
南面 イサクは薪の上に座り、アブラハムが剣を持つ。犠牲となるところで天使が手を挙げて止めた
西面 代わりに牡牛が犠牲となった
アブラハムの体は南面と西面の角に、剣を持った右手は西面に表される(上写真に少しだけ見えている)。

3 栄光の十字架 キリスト伝 単円柱の上
南面 宝飾品のように荘厳された十字架を、我々が崇拝するために、天使が見せている
トゥールーズのドラド修道院回廊で最初期の柱頭は、モワサックの工房からきた彫刻師たちが造ったとされていて(『Sculptures Romanes』より)、(オーギュスタン美術館)その一つに栄光の十字架があった。
頂板は上向きで横たわった鳥。顔は失われているが、耳があるので人面かも。
北面 
頂板は女性の頭部のように髪が長い鳥。

4 美しいアカンサスの葉文様 装飾的な文様 双円柱の上
北面
葉が2段に表される。
頂板には8弁の花が並ぶ。

5 8羽の巨大な鳥 装飾的な文様 単円柱の上
北面
頂板はライオンで、巨大な鳥と共に角で顔を向き合わせ、面の中央部では顔をそらせたり、尻尾を合わせたりしている。

6 ライオンの穴のダニエル 旧約聖書の物語 双円柱の上 
北面 ダニエルは2頭のライオンの間で祈ったので救われた
ドラド修道院の作品と同様に、両手を挙げて祈るオランス型で正面向きに坐っている。ライオンは左右対称に背を向けて角の生命の樹に寄りかかり、頭部をダニエルに向ける。
南面 羊飼いへのお告げ 
豚、牛、ロバの群を護る犬を連れた羊飼いに、天使が救世主の誕生という良い知らせを告げる

7 アカンサスの葉文様 装飾的な文様 単円柱の上
北面
アカンサスの大きく広がった葉とは異なり、大小の枠の中に収まっている。
頂板は石榴の実だろうか。

8 グロテスクな彫像 装飾的な文様 双円柱の上
北面 弩を張る生き物と、角笛に口をつける生き物

9 ラザロの蘇生 新約聖書の物語 単円柱の上
旧約聖書の「金持ちと哀れなラザロ」とは別人
北面 マリアとマルトがイエズスをラザロの墓に連れて行った
西面 主の呼びかけで墓から生きて出てきた
南面 驚く目撃者の前
浅浮彫で素朴な表現。

10 アカンサスの葉文様 装飾的な文様 双円柱の上
北面
これまでなかったアカンサスの葉の表現で、下部で折り返した葉の左右には水の流れのようなジグザグ文様がある

11 架空の人物や動物 装飾的な柱頭 単円柱の上
中央で脚を踏ん張って立つ人物、その脚にタツノオトシゴのような尾を絡ませて背面を向く鳥。

12 中央の柱
この回廊が1100年に建立されたことが、上から3・4行目に記されていた。

13 ダビデの聖別 旧約聖書の物語 単円柱の上
西面 塔の窓から首を出した住民の好奇の目にさらされている中、サミュエルは犠牲の牝牛をベツレヘムに連れて行くという口実で通る。
北面(東面からの続き) ダビデの父は「エッサイの枝」を手に、彼の息子のうちの3人を連れて行く。手を挙げた息子たちは王位の候補者だった。しかし、神は末っ子を選んだ・・・ 
南面 サミュエルは、前で跪く若いダビデを王として聖別するために、聖なる油の入ったリュトンをとった。

14 蔓草文様 装飾的な文様 双円柱の上
様々なアカンサスを見ていると、この蔓草の中の3弁または5弁の葉もアカンサスに由来するのでは。
頂板は蔓草が絡み合う蛇のようで、ケルトの文様を彷彿とさせる。

15 鳥と動物 装飾的な文様 単円柱の上
北面
翼を広げた鳥とその翼を掴む肉食獣

16 アカンサスの葉文様 装飾的な文様 双円柱の上
南面
これも2段かな。似ているようで少しずつ違う。

17 真福八端 キリスト伝 単円柱の上
貧しい者、飢える者、柔和な者、苦しむ者、哀れみ深い者、心の清い者、平和を好む者、迫害される者と、イエズスが山の上の説教で「幸いである」と述べた8名の人物が表される。
北面 

18 獣性 装飾的な文様 双円柱の上
獣の爪の下でつぶされる男
北面
小さな人物が脚と腕を縮めて台の上に乗っているよう
南面
ライオンは背後を向いて2つに別れ捻れた尻尾を噛んでいる。

19 カインとアベル 旧約聖書の物語 単円柱の上
文字が彫られている。
西面 アベルは祭壇に犠牲の動物を捧げ、天使はそれを受け取った。
南面 カインは収穫物の一束を祭壇に捧げ、それを奪ったのは悪魔。
東面 (写真なし) カインがアベルを殺した
北面 神がカインに尋問した「おまえの兄弟はどこだ?」殺人者は答えた「私は知りません」

20 蔓草文様 装飾的な文様 双円柱の上
14の蔓草文様をすっきりとさせたよう。

21 アレクサンドロスの昇天 旧約聖書の物語? 単円柱の上
2羽の鷲の首に縄を掛けて、天に向かって舞い上がろうとする男の望みは、求道の精神を象徴す
南面 鷲が大きすぎるものの、幅広の布を腰で広げ、その先か繩と鳴って2羽の鷲と自分の首に回したり、天使の翼型の凧を背負ったりして天に昇ろうとする仕掛けが具体的。当時そんな人がいたみたいだ。 
頂板は、2天使が持つ輪っかの中に丸い人の顔。

22 ダビデとゴリアテ 旧約聖書の物語 双円柱の付け柱の上
北面 サウル王(左)は天使に護られているダビデにの闘いを許可する
西面(右側) 巨人のゴリアテ 

23 支柱西面
回廊には光が入り込む事はないのだが、『moissac』の表紙(下図)のように明るく写せる時間帯もあるらしい。
使徒バルトロマイ
イエズスは彼について述べた、心がまっすぐで率直な人だ

旧約聖書や新約聖書の物語、装飾的な文様などの並んだ規則性はないようだ。

    サンピエール聖堂 南扉口←    →サンピエール修道院 南回廊柱頭

関連項目
サンピエール修道院 北回廊柱頭
サンピエール修道院 東回廊柱頭
トゥールーズ、オーギュスタン美術館 ドラド修道院の最初の工房

参考文献
『moissac ABBAYE SAINT-PIERRE Guide de visite』 PIERRE SIRGANT 1986年 l’association Montmurat-Montauriol
「Muée des Augustins Guide des collections Sculptures Romanes」 1998年
「Muée des Augustins Guide des collections Sculptures Romanes」 1998年