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忘れへんうちに 旅編では、中央アジア各地、イランの旅に続いて、フランス南西部のオクシタニー地方の旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/08/10

トゥールーズ、オーギュスタン美術館 ドラド修道院の最初の工房


オーギュスタン美術館のロマネスク美術展示室には、サンセルナン聖堂の他にサンテティエンヌ司教座付聖堂、そしてドラド修道院からもたらされた彫像群が置かれている。
『Sculptures Romanes』は、ノートルダム・ド・ラ・ドラド修道院回廊の彫刻群は4つの工房に分類される。そのうちの3つの工房を特定するのは容易でるある。ロマネスク彫刻の様式と図像学の変遷を追うのにドラド修道院の作品群は適している。
当館では27の柱頭を収蔵している。オートガロンヌ県のベルベズ(Belbèze)から運ばれた石灰岩でつくられたという。

最初の工房の作品
同書は、その類似性から、最初の工房の作品は、モワサックの回廊完成のすぐ後に制作され、1100-1110年頃とされている8つの聖書の物語と6つの頂板で、モワサック集団の一工房が造ったものである。
全体の形や柱頭の大きさ、図柄の構成と、人物を特定できる姿がモワサックの柱頭と似ており、トゥールーズ風の柱頭彫刻が生まれるのはその後のことである
モワサックの回廊の柱頭のように、四角錐のピラミッドの形を俯せにした花籠飾りが特徴である。卵形の顔に小さくずんぐりした体の人物像は静的で、ほぼ正面向き、そして何もない背景から高く抜き出ている。場面は各面毎に区切られている
という。

モワサック回廊の柱頭彫刻については後日

ダビデ王と楽士たち 1100-10年 高33幅52奥行25㎝ 石灰岩 2連の柱のに置かれた 最初の工房 ドラド修道院回廊
同書は、イスラエルの輝かしい王と、旧約聖書に記された王キリストの予示。中世においてダビデは理想の王だった。彼は詩編を著したとされるという。
左面は右手に小さな楽器を持って立っている者と、角には弦楽器を左肩にのせた人物がいる。
正面に竪琴を弾くダビデ王、右角に大きなタールを打つ者、右面には小さなタンバリンを肘で鳴らす者。
両角の上にはコリント式柱頭の名残のように小さな渦巻がある。

ライオンの穴のダニエル 1100-10年 高35幅52奥行41㎝ 石灰岩 2連の円柱の柱頭 最初の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、バビロンに捕囚されている時、ダリウス王の宮廷に招かれた預言者ダニエルは、陰謀のの犠牲となり、ライオンの穴に餌食となるように投げ込まれた。オランスという両手をあげる伝統的な祈りの姿勢で中央にしゃがんで、ダニエルはライオンに囲まれているという。
ライオンの穴の中で、椅子に座して両手をあげるダニエルは、右半身は量感があるが、脚部は扁平。その衣端は重なる襞を丁寧に表現している。
頭部から腹部まで凹凸のない円筒形で、あげた腕やライオンと共に左右対称の構図で、祈りを捧げているというよりも、獰猛なライオンを従えた王者のよう。
頂板は羽根の手入れをする鳥が4羽、向きを変えて表されている。
側面ではしゃがんだライオンに馬乗りになったライオン。
説明パネルは、頂板には身支度をする王子という。中央の人物に両側から2人ずつ傅いている。

キリストのエルサレム入城 12世紀初頭 石灰岩 2本の円柱の上 最初の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、頂板は鹿狩り。
キリストのエルサレム入城は過越の祭の始まりを強調する。3名の弟子たちに伴われて、キリストはロバに乗ってエルサレムにやって来たという。
住民たちは枝を持って歓迎し、彼の通る道に尊敬の印しに服を敷いた。旧約聖書の預言を実現させるために、この入城はキリストの神性を表すという。
そして、最後の面は、弟子たちとの最後の晩餐の後、キリストは迷走するためにオリーブの園に引きこもった。キリストに抱きつき、キリストを逮捕するためにやって来た2名の兵士たちに彼だと示す弟子のユダの裏切りの場面と、エルサレムでの最後の晩餐などの主題を飛び越してキリストの逮捕が表されている。

洗者ヨハネの死 1100-10年 高35幅52奥行41㎝ 石灰岩 単円柱に置かれた 最初の工房 ドラド修道院回廊
『Sculptures Romanes』は、4つの場面から構成されている。サロメの踊り、祝宴、
頂板の2つの面には向かい合う動物が表され、祝宴の場面も左右対称。
洗者ヨハネの斬首、そし、ヨハネの首をヘロディアに見せる場面であるという。
角部は人物の身振りが違うが、半円アーチの中のすでに首のない洗者ヨハネと共にすでに左右対称、ヘロデ・アンティパスの妻でサロメの母ヘロディアも、踊るサロメも女性像とは思わなかった。
頂板の2つの面にはやはり向かい合う動物。洗者ヨハネの上には牛を仕留めた肉食獣、最後の面では絡む蔓草を噛む動物は左右で異なる。
頂板の上の面には半円を上に向けて、半分ずつ重ねながら連続させた文様。

キリストの変容と不信のトマ 1100-10年 単円柱に置かれた 最初の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、3つの場面からなる。山上での祈りに始まり、ペテロ・ヤコブ・ヨハネに伴われたイエズスがそこで神性を示した。恐怖にとらわれ、使徒たちは彼の前にひれ伏していた旧約聖書の預言者たちは、モーゼやエリヤと共に現れたキリストを称賛した。
ナツメヤシのような樹木の間で神となったキリストに3人の使徒がひれ伏し、次の面ではキリストが山を表す丸まった地面に立ち、やや左を向いている。
ペテロは、右に3つの塔で表されたキリスト、モーゼそしてエリヤを受け入れることを提案したという。
二階建ての塔は12世紀初頭の教会の鐘楼を表現しているのだろうか。
そして最後の面には「不信のトマ」。復活後イエズスが使徒たちの前に初めて姿を表した時に不在だったトマは、復活を疑った。1週間後イエズスは彼の前に現れた。イエズスはトマに右脇腹の傷を触らせて、復活したことを信じさせたという。
また頂板の四面について説明パネルは、勉学、くつろぐ人々の姿があるが、サイコロゲーム、踊りやアクロバットなど、当時教会で禁じられていたものも表されているという。
柱頭の主題とは関係のない、庶民の暮らしや楽しみが伺えて楽しい。

最後の審判 1100-10年 高35幅52奥行40㎝ 石灰岩 単円柱の上 最初の工房 ドラド修道院回廊
日陰になっていて写しにくかった。『Sculptures Romanes』の図版は着衣の浅い襞や丸いお腹を覆う斜め帯状の布などが細部まで表現された場面だと分かるのに。
マンドルラ(アーモンド形の身光)が太い輪として高浮彫される。
説明パネルは、世の終末にキリストは2人の天使に支えられたマンドルラの中に玉座に坐って現れ、生きる者と死者を裁くという。
2つの主要な面では、天使の鳴らすトランペットの音で死者たちが蘇り、墓から出てきたという。
どちらも天国に行ける人たちだけで、地獄に墜ちる者は表されていない。
キリストの反対側には、キリストに先立って貴石で飾られた十字架が現れる。その交差部はキリストが埋葬された時に着けていた白布が巻かれている。十字架は2天使によって紹介されているが、それはロマネスク彫刻の主題の最も古い表現であるという。
その上の頂板では、水鳥はのんびりと羽根繕いをしている。

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関連項目
トゥールーズ サンセルナン聖堂 外観
オーギュスタン美術館 ロマネスク美術展示室
オーギュスタン美術館 回廊はゴシック様式
雲崗石窟の忍冬唐草文

参考文献
「Muée des Augustins Guide des collections Sculptures Romanes」 1998年