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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2025/01/21

イスラームのステンドグラス4 エディルネカプ ミフリマースルタンジャーミイ


エディルネカプのミフリマースルタンジャーミイにもステンドグラスがあったのに、まとめるのを忘れていた。


ミマールスィナンが建てたこのモスクは、四方に窓が並び(カーテン壁)、上方の窓も
ステンドグラスで飾られている。
『トルコ・イスラム建築』は、碑文がないので建設年は明確でないが、1562-65年の間に建設されたらしいという。
エディルネカプ ミフリマースルタンジャーミイ礼拝室 トルコ・イスラム建築紀行より


そしてミフラーブ壁には細かな文様が鏤められたステンドグラス。

ミフラーブ壁の一番上

その中央
これまで見てきたステンドグラスは白い石膏の枠だったが、ここではグレー。ひょっとすると修復した時にこんな色になってしまったのかも。
というのも、『トルコ・イスラム建築』が、このミフリマー・スルタン・ジャーミシは、最初の試みであったので構造上の強度が不十分だったためか、地震による被害を繰り返し蒙っている。最近では1999年の地震による被害がイスタンブル市内のモスクでは最も甚大で、修理に10年近い期間を要しているといっているからだ。

気になる真ん中のカリグラフィーの背景は、小さな丸い穴が無数にある。トルコブルーの板ガラスに細かな穴をあけた漆喰板のよう、と思っていた。

ところが、古代ガラスの製法を使ったガラス作家の田上惠美子氏よりイスラームのステンドグラス2 イスタンブール編について物言いが!
当方はコアガラス制作時に耐火石膏を使うのですが、10分程度で硬化してしまうので、作業タイミングが難しいです。
たぶん今の普通の石膏も硬化は早いと思います。なんか特殊な石膏なのでしょうか? 漆喰だったら硬化に1、2日はかかると思うので、画像のような作業だとしやすいと思うのですがね。フレスコ画も漆喰みたいなもんやし、当方は漆喰に一票(笑)
私自身はこのようなイスラームのステンドグラスを見て、西洋のステンドグラスと違って鉛の線を使っていないので、漆喰だろうと思っていた。
ところが、日本語力も知識も豊富な現地ガイドのギュンドアン氏に「漆喰で」と言うと、「漆喰じゃない」という答え。何分ツアーの一員として見学したので、ギュンドアンさんを独り占めしてあれこれ質問しまくる訳にもいかず、漆喰でないなら石膏しかないかな、とええ加減な判断をしたのだった。これからは漆喰にしよう。


下段左のステンドグラス
主パネルのうねりのある蔓草文様は、ブルサのイェシルジャーミイ、ミフラーブ脇のステンドグラスをずっと細かいガラス片で描いたもののよう。

緑色の不思議な蔓草状のものが下から上へ、中央から外へ、外から中へとうねっている。
似ているものといえば、スレイマニエジャーミイのステンドグラスの一つだが、下辺にはカップはない。
そして何よりもブルサのイェシルジャーミイ(1424)のステンドグラスのデザインに似ているが、ガラスの粒がもっと細かい。

このステンドグラスがオリジナルかどうかわからないが、地震などに遭ったことを考えると、修復の可能性が高い。

そう考える根拠の一つが、ユシキュダルのミフリマースルタンジャーミイのステンドグラスで、こんな風に枠が白っぽいのだ。これは室内の明るさによるものではない。とは言っても、この白い枠のステンドグラスがオリジナルかどうか分からないのだが。


下段右のステンドグラス 
色や明るさは太陽の位置と天候で変化する。これは光がよく届いた瞬間に写したものかも。

主パネル細部
緑色の主文様の間に極小の水色のガラスがあった。それは漆喰の板に穴を開けたものだ。

下部
カリグラフィーはオレンジ色

その右側


その下の段
ちょっと雰囲気の違った蔓草。色ガラスで埋め尽くした上部のステンドグラスとは全く異なって、白いガラスが多い。こてこてのステンドグラスに食傷したのかも。
主パネルの白い部分には何もない。この形はチューリップではないだろうか。下方から真っ直ぐ伸びた細い茎に、当時の開かないチューリップの花を白く大きく表しているのでは。

他のステンドグラスとは異なったつくりになっている。白いガラス板を枠の向こうに貼り付け。小さな枠に色ガラスを嵌め込んだような。


入口側のステンドグラス

どちらかと言えば、模様としてかわゆく見える。


側壁のステンドグラスはもっとシンプル。

ドームの裾のステンドグラス
色は鮮やかだけれど・・・

何と言ってもこのモスクにはガラス窓が多すぎる。



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参考文献
トルコ・イスラム建築」 飯島英夫 2010年 富士房インターナショナル