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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2025/01/28

エディルネ ユチュシェレフェリジャーミイの装飾


ユチュシェレフェリジャーミイは、4本のミナレットの文様がそれぞれ異なること、ミナレットのバルコニーの数も異なることという特色がある。

平面図 『トルコ・イスラム建築紀行』より
①モスクの正門 ②中庭 ③シャドゥルヴァン ④回廊 ⑤ソン・ジェマアト・イェリ(礼拝の時刻に遅れてきた人が祈る場) ⑥礼拝室正面入口 ⑦礼拝室主ドーム ⑧ミフラーブ ⑨主ドームを支える巨大支柱 ⑩礼拝室両脇のドーム 10-a礼拝室脇の小ドーム 10-b小ドーム ⑪礼拝室脇入口 ⑫三つのバルコニーのあるミナレット ⑬中庭への脇入口 ⑭捻れたミナレット ⑮縦溝のあるミナレット ⑯石畳文のミナレット
エディルネ ユチュシェレフェリジャーミイ立面図・平面図 『トルコ・イスラム建築』より

まず最初にミナレット。
⑫三つのバルコニーのあるミナレット
白石の塔身に赤石で菱文繋ぎのような文様があって独特。ほとんど太さが変わらずに下部まで続くがアーチ列の上には浅いトルコ襞がある。

ジグザグの線のところで浅く面が変わっている。円形に見えて実は多角形だった。


⑭捻れたミナレットで、これも白石と赤石を使っている。

ねじれはやがて縦の線になって終わる。全体で円形の曲面になっていると思っていた白石の面が、一つ一つが捻れた曲面だったことが分かった。

見つめていると目が変になりそうな膨張感。



⑮縦溝のあるミナレット 
細かい点が見えるような写真はなかったが、縦に畝があるようだ。


⑯石畳文様のミナレット

斜格子というか、斜めの石畳状の文様も浅い角度で面が変えている。よく見るとバルコニーの上も多角形だった。


内部
平面図 『トルコ・イスラム建築紀行』より
①モスクの正門 ②中庭 ③シャドゥルヴァン ④回廊 ⑤ソン・ジェマアト・イェリ(礼拝の時刻に遅れてきた人が祈る場) ⑥礼拝室正面入口 ⑦礼拝室主ドーム ⑧ミフラーブ ⑨主ドームを支える巨大支柱 ⑩礼拝室両脇のドーム 10-a礼拝室脇の小ドーム 10-b小ドーム ⑪礼拝室脇入口 ⑫三つのバルコニーのあるミナレット ⑬中庭への脇入口 ⑭捻れたミナレット ⑮縦溝のあるミナレット ⑯石畳文様のミナレット
エディルネ ユチュシェレフェリジャーミイ立面図・平面図 『トルコ・イスラム建築』より


⑧ミフラーブ壁の装飾

ミフラーブの上に幾何学文様を華やかに彩色したもの

その左右斜め下の小壁にも、やはりイェシルジャーミイのムアッズィン用マッフィルの絵付けタイルと同じ文様が描かれている。
このように、イェシルジャーミイでは多用されていた絵付けタイルは、ここでは使われていない。

タイルではなさそう。



ステンドグラスだけが極彩色。


⑦大ドーム

中心部
ブルサにあるイェシルジャーミイ入口のリュネットには石彫の植物文様が施されているが、ひょっとするとその植物文様に着色するとこんな風に見えるかも。

外枠のカリグラフィーは細長い縦の線が多いのが特徴


10-a礼拝室脇の小ドーム
傘を広げたようなリブ多いドーム。数えてみたら24本あった。

文様は4種類あり、それが繰り返されて一周する。今まで見たことのない花の文様が現れた。

四隅のムカルナスは文様の下絵のみ。花の断面に描かれるのはイズニクタイルの先駆け?


10-aと⑦大ドームの間に石というよりも折り紙でつくったような壁面、そしてその中に六角形の極小ドームがあるが、目視では気がつかなかった。平面図の緑色の部分に当たる。

画工の遊び心としか思えない。ここにも下絵のままの面がある。そんな中で三つのアーチのある柱廊、ドームの脇に2本のミナレットなど、モスクが描かれているが、このモスクではない。



10-b小ドーム
リブのないドームだが、四隅は傘型のスキンチ

中心は三色に描き分けられた十六弁のロゼット。そこから展開していく植物文様は、後のリュステムパシャジャーミイのタイルを思わせるモティーフが現れている。


四隅は傘型のスキンチの間と下の壁面の窓にステンドグラス。

傘型のスキンチは10-aの小ドームと同じ文様。
正方形の上にスキンチを掛けて八角形とし、スキンチの間の角にも壁画を描いている。


10-bの小ドームと⑦大ドームとの間にできた凹みに極小のドーム(平面図の緑色部分)があった。

六角形のドームの頂部は六弁花、ドーム内の植物文様は色が可愛い過ぎる。その下の傘を切り開いたような曲面にまで文様が描かれていた。

逆向きで撮影


もう二つ小さな六角形のドームがあったので見てみたかったが、ここで見学時間終了。
それにしても緑色で示した小さな六角形ドームは何故造ったのだろうか。構造的に問題があったのか、それとも装飾のためだけなのだろうか。


外に出る時に気付いた扉のキュンデカリ技法

凹凸のある木片は色を変えているだけだろうか。


そして中庭に出ると、格子窓の上のリュネットがタイルだった。
外枠はカルトゥーシュの中に植物文様、内側にはカリグラフィーが細く渦巻いた蔓草と共に描かれている。

15世紀半ばに建てられたこのモスクと、その時代のタイルの色目が合っているのでオリジナルだろう。屋外にこんな古いものが残っているとは。


                       →エディルネ エスキジャーミイの装飾

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参考文献
トルコ・イスラム建築」 飯島英夫 2010年 富士房インターナショナル
「トルコ・イスラム建築紀行」 飯島英夫 2013年 彩流社