お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、南イタリアの旅を再開しました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/08/17

トゥールーズ、オーギュスタン美術館 3番目の工房など


ドラド修道院の3番目の工房について『Sculptures Romanes』は、トゥールーズ地方の審美眼は、「人のいる葉飾り」という主題で蔓草や葉飾りの中に怪物、動物そして人物を表した浮彫が、頂板や柱頭のフリーズに表した。それは12世紀後半を通して、2番目の工房とサンテティエンヌの彫刻師ジラベルトゥスの繊細さ、更にサンセルナン聖堂回廊優美な怪物の柱頭によって、トゥールーズに2世代も早く出現した。音楽を奏でる動物、曲芸、ライオンと闘う戦士とリラを持つロバという4つの寓意的な場面を表す彫像柱の柱頭は、人物が姿を消す傾向にある。後に植物が動物と争うようになる。しかし、その具象表現は、頂板の図柄とは反対に、ゴシック美術と結びついたという。
ジラベルトゥスという彫刻師の作品はサンテティエンヌ司教座付聖堂の彫像柱が展示されていた。それについてはこちら
ドラド修道院だけでなく、サンテティエンヌ司教座付聖堂、サンセルナン聖堂その他の柱頭も一緒にまとめた。

猛禽に啄まれるミミズク 12世紀 石灰岩 2本の円柱の土台 ドラド修道院
説明パネルは、動物寓話では、日中は目が見えない鳥として表される。中世では、イエズス・キリストが預言者たちが告げた救世主であるということを拒否するユダヤ人の象徴とされたという。
残念ながらミミズクの顔がよく写っていないが、背景の葉飾りは透彫のような細かい浮彫になっている。
反対側は向かい合う牡羊で、両側面には一匹の犬と複数の魚が登場するという。
牡羊が闘っている背景もまた透彫に近い。

人物の登場する蔓草文様 12世紀中葉 透彫 石灰岩 2組の柱頭、2本の円柱の上 ドラド修道院
説明パネルは、密生した蔓草に鳥や獣と、闘う人物たちが登場しているという。
2本の円柱の上に三方が蔓草文様が浮彫され、それが2組ほぼ合わせて展示されている。本来は別々の隅に立っていたと思われる。双方ともにはっきりと透彫だが、それぞれに蔓草や柱頭フリーズに工夫を凝らしている。
左の方は人物が多く、右は上方に鳥、下方に獣が多数登場する。
左側の正面
柱頭フリーズの角には人頭が一つずつ。
浮彫から浮彫の技を獲得したことによって、アカンサスの葉は薄くなり、茎も細くなった。さて、その中に紛れた人物や動物がどれだけ見分けられるやら・・・
右側の正面
彫刻師の違いだろう、こちらの茎は太く、人物や動物も多く表される。

狩猟の場面と神話の人物のいる蔓草 12世紀後半 高29幅52奥行31㎝ 透彫 石灰岩 2本の円柱の上 ドラド修道院
説明パネルは、広い面は2つの狩猟の場面。一つは熊狩りだという。
別の面ではセイレンとケンタウロスという古い神話の怪物たちに裸の猟師が槍を向けているという。
柱頭フリーズはなく、小さなアカンサスの葉が巡る2つの柱頭に一つの透彫がのってるよう。
こちらは裸の男たち。どちらも蔓に手を伸ばし足を踏ん張って、転がるまいとしているよう。
そして、海馬に乗る人物と、子供に授乳するセイレンという。

船の漕ぎ手たち、または舟遊び 12世紀後半 高36幅46奥行31㎝ 石灰岩 2本の円柱の上 ドラド修道院
右端で舵手が手を挙げて長いオールを持った3人の漕ぎ手を鼓舞しているが、後方では反対側を向いた人物がいて、その左は子供のよう。聖母子ではないだろうが、まるで舟遊びを楽しんでいるよう。
波文の下には大きな魚が1匹ずつ。


ある聖人の殉教 時代不明 石灰岩 2本の円柱の上 ロンベズ(Lombez、トゥールーズから西南西に約45㎞
説明パネルは、1125年にサントーギュスタンの規律の下にベネディクト会修道院となった。故に、その柱頭はトゥールーズのサンテティエンヌ司教座付聖堂の影響を受けてる。
聖人は特定できないが、アジャンのサンカプレではないかとされる。二人目の人物と祭壇の上に組んだ手をのせ、祭儀に参加しているというその場面は写していなかった。残念!
下の場面は、2人の兵士に連行され王の前に出頭し、
次に首を切られた。子供の姿となった彼の魂は、神の手によって天国へと運ばれたという。
口から子供の姿となった魂が出て行くという表現が興味深い。そして柱頭フリーズは蓮華が表されたような環つなぎ唐草の一つが雲となって、そこから出てきた神の右手がその魂を救済している。
野にいる騎士たちの表現は、サンテティエンヌの「マギの礼拝」から創意を得たものであるというが、その面は写していなかった。

マギの礼拝 12世紀中葉 高33幅54奥行31.5㎝ 石灰岩 2本の円柱の上 サンテティエンヌ司教座付聖堂回廊?
流れ星でキリストの誕生を知った東方の三博士たちがエルサレムにかけつける場面。この渦巻に乗ったマギ像に似た騎士たちが表されていたという。 

洗者ヨハネとサロメ 12世紀後半? 石灰岩 2本の円柱の上 サンテティエンヌ司教座聖堂回廊?
説明パネルは、玉座に坐ったヘロデ王の前で踊るサロメという。
右から左へ。死刑執行者がサロメに盆に載せた洗者ヨハネの首を見せ、サロメは母のヘロディア見せたという。
どうやら洗者ヨハネの首を持つサロメは2回表され、異時同図になっているようだ。
洗者ヨハネの死、彼の魂は裸の子供の姿で天に昇り、キリストに受け止められているという。
その右端の建物群はエルサレムの街を表しているのだろう。

十二使徒 時代不明 大理石 2本の円柱の上 オート・ガロンヌ県のサンゴダン、サンピエール聖堂回廊
説明パネルは、それぞれが持つ書物に彫られた名でわかる使徒がいる。鍵で知られるペテロは中央に、左にパウロ、名の不明の使徒が右にいるという。
背景がほとんどなく、使徒たちだけが柱頭いっぱいに、密接して表される。
誰か特定できない2名の使徒の右の面にいて、シモン、バルテルミーの背後に大ヤコブとヨハネ、最後の左面に小ヤコブ、トマとフィリポがいるという。
使徒たちの体に張り付くような着衣と、太腿などの膨らみが強調される表現は、サンテティエンヌ司教座付聖堂の「洗者ヨハネの死」にも見られるが、地方作であることは否めない。

聖母子像 時代不明 大理石 2本の円柱の上 
説明パネルは、玉座に坐る聖母の膝に正面向きで幼子イエズスが表される。ヨハネの黙示録とエゼキエルの幻視による四福音書記者の4つの象徴、ヨハネの鷲、マルコのライオン、マタイの天使、ルカの牡牛に囲まれているという。
聖母の両手の外側にある人の顔などに穴が複数あいているのは振り香炉だろう。
天使とは神の使いなので、可愛いものだとは限らない。天使よりも大きな翼のある牡牛など、全てが塊量感あふれる造形で、これまで見てきた柱頭とは別の系統のよう。
別の面では、十字架に架けられたキリストが、香炉を携えた2天使に囲まれているという。

キリストの磔刑 12世紀第1四半期 高39幅50奥行39㎝ 大理石 2本の円柱の上の柱頭 エロー県サンポンドトミエール聖堂回廊
『Sculptures Romanes』は、宗教戦争の時代、ベネディクト会修道院の重要な回廊の解体によって、膨大な柱頭がほぼ散逸した。オーギュスタン美術館は2本の円柱上の柱頭を一つ所蔵していて、片方はキリストの磔刑をもう一方は聖母子を表している。この柱頭の最初の工房は、ルシヨン地方、特にピレネー・オリアンタル県のサンミシェル・ド・キュクサやセラボンヌの影響を受けていて、それが12世紀第1四半期の作品の証であるという。
これが上の聖母子の面の表側だった。背後では有翼の天使たちが香炉を振っている。
キリストは十字架に手足を釘で打ち付けられているが、苦しみの表現は控えめだ。時代が下がると、教会では血を流したキリストが十字架に架けられた像が出現するが、そんな生々しさやおどろおどろしさはロマネスク美術にはない。





 ドラド修道院の2番目の工房←   →オーギュスタン美術館 サンセルナン聖堂の柱頭

関連項目
ドラド修道院の最初の工房

参考文献
「Muée des Augustins Guide des collections Sculptures Romanes」 1998年