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忘れへんうちに 旅編では、中央アジア各地、イランの旅に続いて、フランス南西部のオクシタニー地方の旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/08/14

トゥールーズ、オーギュスタン美術館 ドラド修道院の2番目の工房


『Sculptures Romanes』は、ノートルダム・ド・ラ・ドラド修道院回廊の彫刻群は4つの工房に分類される。そのうちの3つの工房を特定するのは容易でるある。ロマネスク彫刻の様式と図像学の変遷を追うのにドラド修道院の作品群は適している。
当館では27の柱頭を収蔵している。オートガロンヌ県のベルベズ(Belbèze)から運ばれた石灰岩でつくられたという。

前回は最初の工房の柱頭彫刻をまとめたので、今回は2番目の工房の柱頭彫刻。
『Sculptures Romanes』は、政治的な要因で10年の空白の歳月があり、2番目の工房が回廊の仕事を再開した。1120-30年のものは19個の柱頭が収蔵されている。その内の12個は聖書の物語が描写され、13番目は寓話で、一連のものは、足を洗うキリストから過越祭までのキリストの受難を表す。
このような連続する物語の柱頭は、ロマネスク彫刻では異例である。
動物、装飾文様、6つの植物文様は例外である。
最初の工房は、硬直し、枠の中に押し込められていたが、感情的で劇的な強烈さ、あふれる活力、装飾的な衣褶の扱い、細部表現の繊細さという2番目の工房の特徴は、12世紀の転換期に起こった精神的な変動の兆しや、新たな人間性の出現を示しているという。

洗足 1120-30年 高35幅52奥行41㎝ 石灰岩 単円柱の上に置かれた 2番目の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、捕縛の前の最後の晩餐の時、キリストは使徒たちの足を洗いながら、謙遜という最後の教訓を与えた。キリストは手を挙げて拒むペテロの前に跪いている。続く2面に4使徒が儀式に従って、履物を脱いだり、裾をたくし上げたりして準備をしているという。
キリストが跪いている面には、半円アーチから両開きの幕が左右の円柱に巻きつけられている。
キリストの背後から聖マティアはタオルを差し出している。アキテーヌ地方の伝導者マティアはトゥールーズにも伝導に来たという。
頂板の文様はジグザグに折り曲げたリボンが2段で矩形をつくっている。
ねじった畝の円柱の上には、この柱頭の上部とおなじ葉文様になっている。

最後の晩餐 1120-30年 石灰岩 単円柱の上 2番目の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、頂板は果実のある葉飾り。
キリストが受難の前に弟子たちと最後の食事をしている時、彼らの中の一人が自分を裏切るだろうと告げた。キリストの方に身をかがめて、ヨハネは誰が裏切るのかと尋ねた。イエズスは、テーブルの前に坐っていた小さなユダにひとかけらのパンを与えながら指した。反対側の小さな面で、マティアは料理皿を持って弟子たちに加わっているという。
左面がユダにパンを与えるキリストと背中側に寄りかかるのがヨハネとすると、その角に一人テーブルの前で子供のような小さく表されているのがユダ?それとも、半円アーチの下に一人坐っているのがユダ?
こちらの方がキリストとヨハネかな?右面がマティア(ユダの後で十二使徒に加わる)というのは分かり易いが。

キリストの捕縛 1120-30年 高35幅52奥行52㎝ 石灰岩 3本の円柱の上 2番目の工房 ドラド修道院回廊
同書は、4面の登場人物の多さは、この場面が柱頭の中で最も複雑だが、最も革新的な表現である。
左半分はキリストがこの人物であると捕らえに来た兵士たちに教えるユダ(ユダの裏切り)、右半分から次の面に続くキリストの捕縛の場面。
左はキリストの鞭打ち、右はカルヴァリの丘への十字架背負いの場面。

十字架降下と埋葬 1120-30年 高36幅52奥行40㎝ 石灰岩 単円柱 2番目の工房 ドラド修道院回廊
頂板の文様は環つなぎ唐草
説明パネルは、アリマタヤのヨゼフがポンティオ・ピラトからイエズスを埋葬する許可を得て、ニコデモが十字架に残った左腕をやっとこで外している間、遺体を支えていた。その左にはひどく傷んだ聖母が息子の右腕を支え、その顔に優しく近づいている。次の面では、ヨハネが悲嘆にくれたて右手を顔に当てているという。
この柱頭は面によって、背景が異なる。無文のところと、ワッフル地文様の箇所があって、その違いがわからない。
次の面では、十字架降下のすぐ後に埋葬となる。アリマタヤのヨゼフがキリストの頭部側、ニコデモが足側にいて、亜麻布でくるんだイエズスの遺体を柩の中に納めた。聖母と聖ヨハネは泣きながら背後に控えているという。
それぞれの着衣は薄手で柔らかなもので、その襞が細かく表されている。

キリストの冥府下り 1120-30年 高35幅52奥行40㎝ 石灰岩 2番目の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、十字架に架けられし死んだ後、復活の前に、キリストは地獄へ下りて行った。そこで、古い法律(旧約聖書のユダヤの法律)で正義とされた魂を見つけ、悪魔を投げ飛ばした。復活の十字架を突き立て、アダムとエヴァを解放した。地獄は人物の背後に描かれている。一人の悪魔が地獄に墜ちた者たちを業火(炎の上に鍋!)に西洋鍬で投げ込んでいるという。
この画像では判別しにくいが、キリストの着衣の襞の細かさや文様の表現などは最初の工房では見られなかった。
また、アカンサスの翻った葉先は、狭い面では両角に、広い面では両角だけでなく中央にもある。
別の広い面では、3人の選ばれた者たちが天使に天上のエルサレムに導かれている。その入口の門があるという。
広い面には3名が中央に、右半身には頭部が失われた天使がその3名の方を向き、最初の者の手を取っている。天使の翼は一方は広い面に、もう一つの翼次の狭い面に表されて、右手は天上のエルサレムの門を指すという、2つの面で一つのテーマを描写する。
頂板の羽状唐草は四面を一巡している。

墓へと走るペテロとヨハネ 1120-30年 高34幅51奥行39㎝ 石灰岩 2本の円柱の上 2番目の工房 ドラド修道院回廊
マグダラのマリアが墓が空になってキリストが復活したと知らせると、それを確認するためにペテロとヨハネが墓へと走る姿が右面左半分から左面へと続く。
円柱の影から墓を伺っているペテロかヨハネ。
墓は空で、キリストが復活したことが明らかとなった。この柱頭では、この面の右側だけが背景がワッフル文様になっている。
左側はメソポタミアでは古くから生命の樹とされているナツメヤシが立つ。
最後の面、右の半円アーチいっぱいに表された人物は聖書を持っているので、おそらく復活したキリストだろう。

不信のトマ 1120-30年 高38幅52奥行39㎝ 石灰岩 2本の円柱の上 2番目の工房 ドラド修道院回廊
最初の工房(1100-10年)では復活を疑うトマが立ったままキリストの右脇腹に右手を近づけているだけだったが、2番目の工房の時代となると、トマはしゃがみ込んで、左手の人差し指でキリストの右腕をあげ、右手でキリストの傷口に触れるという、踏み込んだ表現をしている。
左面と正面左側にかけては、聖ペテロと聖パウロへの教えの伝達の場面
『Sculptures Romanes』は、クリュニーの規律では、この主題は特別な位置を占めるもので、クリュニー修道院はローマ教皇の直接支配下にあるので、新しい教えを託された使徒ペテロとパウロを護るという。
別の主題が表されるが、場面の区切りに、右上に正面向きで立つキリストが表されているのだろうか。

キリストの昇天 1120-30年 高17幅52奥行39㎝ 3本の円柱の上 石灰岩 2番目の工房 ドラド修道院回廊
説明パネルは、頂板は蔓草の中で向かい合う鳥と重なり合う輪。
エルサレムで起こった昇天は、復活したキリストの最後の登場である。最初の面は、正面を向いたキリストが腕を十字にひろげ、天を見上げる。両側の天使は使徒たちと聖母にキリストを指し示している。この昇天の図像はサンセルナン聖堂のミエジュヴィル門にかかげられたタンパンのように、キリストが天使たちに抱き上げられ、横顔を見せるという、この地方に一般的な昇天とは区別できるという。
ミエジュヴィル門のタンパンは1110年に造られ、この柱頭に先行する図柄である。
背景は全面ワッフル文様で、その上に巡る波のような表現はアカンサスの葉ではなくなっている。
顔面が失われているが、使徒はひょっとすると天に昇っていくキリストを見上げているのかも。。

天国の4つの大河 1120-30年 高36幅52奥行38㎝ 石灰岩 2本の円柱に置かれた 2番目の工房 ドラド修道院回廊
『Sculptures Romanes』は、中世では四福音書記者の象徴と見なされた。天国の4つの大河は修道士にとって使徒たちの四散と地上の人々を改宗させて洗礼を施すという使命を想起させたという。
頂板は平行唐草文で、柱頭上部にもジグザグ文と葉状の文様が文様帯として表され、その下に銘文、そして主題とその背景に網目状に彫られている。
広い面2つにそれぞれ人物が担ぐ大きなリュトンから流れ出す大河が表される。

蔓草の中のアカンサス 1120-30年? 石灰岩 2番目の工房 ドラド修道院回廊?
アカンサスにしては小さな葉が籠のような蔓草のくきの間にある。ドングリのようなものはどうも実らしい。
別の柱頭
大きな実を付けたアカンサス

蔓草の中のライオン 1120-30年 石灰岩  単円柱の上 ドラド修道院回廊
ライオンが茎を囓っているところが面白い。
頂板は細かな籠目文様。

   ドラド修道院の最初の工房←   →オーギュスタン美術館 3番目の工房など

関連項目
オーギュスタン美術館 サンセルナン聖堂の柱頭
トゥールーズ サンセルナン聖堂 外観
オーギュスタン美術館 ロマネスク美術展示室
オーギュスタン美術館 回廊はゴシック様式
雲崗石窟の忍冬唐草文

参考文献
「Muée des Augustins Guide des collections Sculptures Romanes」 1998年