お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2024/11/26

ブルサ、イェシルジャーミイとトゥルベの装飾 石彫とタイルの不思議な文様


イェシルジャーミイでは、不思議な植物文様の石彫があった。

外壁の窓には上の尖頭アーチにも細かな浮彫が施され、トルコ・ブルーの細いタイルが囲んでいる。

礼拝室外壁
渦巻く蔓と葉や花というのはイスラームの植物文様だが、中央アジアのタイルで表されたものとはちがう。

側室外壁
花は中央のものくらいで、主に蔓で構成されている。蔓草は縦横に伸びているが、渦巻いてはいない。

ファサード側の窓
古代エジプトのカルトゥーシュのようなものに囲まれて、カリグラフィーが刻まれている。

カルトゥーシュの内外に浮彫された植物文様はどこから将来されたものだろうか。


イシェルジャーミイ ファサード入口上部
蔓草は下から一重、二重と巻いていき、一番上では三重になっている。三重のものは見なかったが、大きな花のようなもの以外は、中央アジアのモスクや墓廟にもある。


イシェルジャーミイ平面図
①ミフラーブ ②ミフラーブ前のドーム ③トルコ襞 ④中央ホールのドーム ⑤採光塔 ⑥スルタン用マフフィル ⑦ミナーレ ⑧入口 ⑨未建設のソン・ジェマアト・イェリ ⑩ブルサ・アーチ ⑪ザーヴィエ ⑫ムアッジン用マフフィル ⑬二階への階段
イェシルジャーミイ平面図 『トルコ・イスラム建築紀行』より

ミフラーブのタイル
イェシルジャーミイでは、ブルサ・アーチ、トルコ襞、緑色六角形タイルが見たかったのだが、絵付けタイルの文様にも驚愕した。イスタンブールで見てきたスレイマニエジャーミイやヒュッレム廟以降の盛期イズニク製のタイルとは色彩も文様も全く違うし、アナドル・セルジューク朝期の絵付けタイルとも違っているのだ。どこで焼造されたのだろうか。
『トルコ・イスラム建築』は、室内のタイルの装飾などは1424年に完成したというので、イズニクではまだこのようなタイルはつくられてはいなかっただろう。

黒羊朝のジャハンシャー時代、1465年の紀年銘のあるタブリーズのマスジェデ・キャブード(通称ブルー・モスク)のタイル装飾も白・黄・トルコブルー・濃紺という釉薬を使っているが、彼の地ではモザイクタイルだった。ところが、このミフラーブではタイルの継ぎ目がはっきりと見えるので、絵付けタイルであるのは確か。このタイルがオリジナルならばどこでつくられたのだろう。

ムカルナスの周囲の蔓草文様は一重蔓だが、中央アジアの蔓草文様は、カリグラフィーの背景になっていたが、ここでは蔓草文様だけ。
また、外側のタイルには凹凸があみられる。浅浮彫の絵付けタイルだろうか。    

ミフラーブの凹みは赤い照明が当てられているので、本来の色はわからないが、外側とはまた違った文様のタイルが使われている。

そして礼拝室の壁面下部には六角形タイルが貼り付けられている。

六角形タイルと白い棒状の六角形タイルが規則的に並んでいるが、これをモザイクタイルと呼んでいいのだろうか。
これが創建タイルなのかは不明だが、どれも表面に皺のようなものがあって、あまり出来が良くない。


⑥スルタン専用のマッフィル
スルタン専用のマッフィルは、後にミフラーブ壁の左端に造られるようになった。
前面下側は透かしになっている。

平天井には凝った文様で浮彫になった絵付けタイル、壁との境目には絵付けタイルのムカルナスが巡る。



⑫ムアッズィン用マッフィルのタイル装飾
スルタンのマッフィルよりも天井が高くて立派

上部のカリグラフィーの枠には一重に渦巻く蔓草文様
内部の天井のタイル装飾

奥壁上部は六角形の絵付けタイルで、逆三角形を元にした不思議な文様で埋め尽くされている。やや薄い色のタイルもあって、どれがオリジナルか、補修タイルか分からなかった。

側壁下側の緑色六角形タイル、中央の円形の絵付けタイルの文様も何とも不思議。


側室の壁面

金箔が鮮やかなものとくすんだものがある。

鮮やかなものは修復の時に貼られたのだろう。


オリジナルと思われる金箔と、補修金箔では文様が異なっている。

それにしてもタイル面か釉薬によるものか不明だが、表面が平坦ではない。絵付けタイルは平たかったのに。


イシェルトゥルベ ファサードのムカルナスも絵付けタイル。

タイルには黒い色が使われている。
傘の骨のように出ているものが独特だが、これはタイルではないのかも。

傘の骨の下は徐々に広がっているが、ムカルナスでもないような。

その下のトルコ三角形を二段重ねたような箇所は、下部の矩形から半ドームを架構するための仕掛け。

カリグラフィーと一重蔓の組み合わせも。しかし、その下がよくわからない。これもムカルナスと言えるのだろうか。


トゥルベのミフラーブも絵付けタイル

ムカルナスには金箔が貼られているのか、金泥が塗られているのか。
ムカルナスの外側のスパンドレルは、後にイスタンブールのシェフザーデジャーミィ廟(1548)のステンドグラスにも使われたデザインに似ている。

ムカルナスは金箔ではなく金泥だろう。

ミフラーブ下部

ここでは浮彫タイルが使われていた。浮彫タイルで木材のクンデカリ技法のようになっている。クンデカリ技法については後日。
浮彫タイルは、かつてサマルカンドのシャーヒズィンダ廟群の14世紀後半に造られた墓廟にあった。それについてはこちら

八角形の壁面下部には六角形タイルにメダイヨン状の絵付けタイルが嵌め込まれている。


この装飾文様は、イェシルジャーミイ外壁の石彫とも異なり、ミフラーブの絵付けタイルのもとも異なる。




関連記事

参考文献
トルコ・イスラム建築」 飯島英夫 2010年 富士房インターナショナル
「トルコ・イスラム建築紀行」 飯島英夫 2013年 彩流社