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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/09/07

モワサック、サンピエール修道院 北回廊柱頭

最後に北回廊
モワサックのサンピエール聖堂回廊の柱頭彫刻はについて『Sculptures Romanes』は、その類似性から、最初の工房の作品は、モワサックの回廊完成のすぐ後に制作され、1100-1110年頃とされている8つの聖書の物語と6つの頂板で、モワサック集団の一工房が造ったものである。
全体の形や柱頭の大きさ、図柄の構成と、人物を特定できる姿がモワサックの柱頭と似ており、トゥールーズ風の柱頭彫刻が生まれるのはその後のことである
モワサックの回廊の柱頭のように、四角錐のピラミッドの形を俯せにした花籠飾りが特徴である。卵形の顔に小さくずんぐりした体の人物像は静的で、ほぼ正面向き、そして何もない背景から高く抜き出ている。場面は各面毎に区切られている
という。

サンピエール修道院回廊は、北西から入って北側から時計回りに回ったが、『moissac』の平面図では西回廊から番号が打ってあるので、それに従うことにする。
また、中庭には入らなかったので4面ある柱頭彫刻のうち3面しか見えなかったし、限られた時間の中で1面しか写せなかったものもある。
尚、その注釈は同書のものである。
四隅の支柱は2箇所に2本の付け柱があり、そこから単柱と2本の円柱が交互に並んでいる

68 支柱北面 ヨハネ
ヤコブの兄弟で4番目の福音書の著者

69 大天使ミカエルの戦い ヨハネの黙示録 双柱の付け柱の上
大天使ミカエルがドラゴンを投げ飛ばした


70 鳥 装飾的な文様 単柱の上
東面 一つの面に2羽の鳥が背を向け合わせ、角でそれぞれ別の面の鳥と顔をつきあわせた柱頭が多いが、ここでは柱頭の形が円錐に近いため、四隅に1羽の鳥が羽ばたこうとしている。
頂板 水中で魚が2匹茎?でつながっているが、一方は腹を上にしている。

71 蔓草文様 装飾的な文様 双柱の上
細かい唐草文様が2段に表されている。
西面 頂板の植物を挟んで向かい合うライオンは顔をこちらに向けている。
北面 頂板は向かい合う鳥グリフィンが首を腹側に入れて自分の後肢を加えている。


72 聖ベルナルドゥス 聖人の殉教 単円柱の上
ノルチャのサンブノワ(イタリア、480-557年)、ベネディクト会の設立者で、ローマカトリック教会の修道士の祖
頂板の銘文:ベルナルドゥス、神の男は修道士を殴り、主が回復させた
北面 聖ベルナルドゥスが死者を蘇らせる
東面 モンテカッシーノの修道院
南面(写真なし) 聖ベルナルドゥスは棒を持ち、(西面の)悪魔が祈りを背かせようとする修道士に体罰を与えている
西面 ほほ中央に悪魔、左に聖ベルナルドゥス 

73 鳥 装飾的な文様 双円柱の上
2羽の鳥は体は向かい合うが頭は背後に反らせ、尾を別の面の鳥と交差させている。
頂板は蔓草状の装飾の裏側に鳥を配し、透彫のよう。

74 美しい扉口の奇蹟 キリスト伝 単円柱の上
西面 神殿の美しい扉口の前で足を引きずって物乞いする者は、腕を掴まれ、「イエズスの名において」良くなった
北面 イエズスに伴うペテロとヨハネ
東面 サンヘドリン(ユダヤ人の最高評議会)の裁判で二人の使徒が比べられた
南面(写真なし) 二人の人物の一方は石を、もう一人は聖別の角笛を持っている。それはキリストの印である

75 植物文様 装飾的な文様 双円柱の上
3段のアカンサス
頂板は鞍を着けた馬と角のある鹿が向かい合ってうずくまっている。

76 天使たち 新約聖書 単円柱の上
西面 セラフィム(熾天使)
北面(写真なし) ケルビム(智天使) 
東面 大天使ガブリエル
南面(写真なし) 大天使ミカエル

77 奇蹟を起こす漁師 キリスト伝 双円柱の上
南面(写真なし) イエズスは神の言葉を伝える
西面 不漁の小舟 
東面 奇跡を起こした猟師が小舟を魚で満杯にする
4北面 「人の猟師たれ」と言って使徒たちに呼びかけた

78 中央の支柱
灰色の大理石の3面に、うねりとうろこ状配列の装飾がある

79 ライオンの穴のダニエル 旧約聖書の物語 双円柱の上
この主題は好まれたようで、トゥールーズのドラド修道院回廊の柱頭にあったし、モワサックの回廊でもあった。
東面 餌食として食べてしまおうとする6頭の立派なライオンの間に坐って静かに祈るダニエル
頂板は鳥グリフィンが人間を啄んだり、猛禽がライオンの頭を突いている
ドラド修道院回廊の柱頭の図柄はこちら
サンピエール修道院西回廊6番の柱頭の図柄はこちら
西面 預言者ハバククは刈り入れ人たちに食事を運んでいた時、一人の天使が髪を掴んで、バビロンに連れて行きダニエルにその食事を与えた
ハバククは沢山の食事を天秤棒で担いでいる。
南面(写真なし) ダリウス王(またはキュロス王)と王杖

80 行列 単円柱の上
おそらく1099年十字軍のエルサレムからの戦利品。戦士たちが武器で持ち去った。十字架を持った天使が行列を連れて行く
東面 エルサレムの町?
北面 頭部が金槌で壊されなかった頭部
西面 説明なし

81 蔓草文様 装飾的な文様 植物文様 双円柱の上

82 四福音書記者
南回廊36番も四福音書記者が表されているが、その象徴の動物が大きく表されていて、図柄としてはかなりの違いがある
頂板はアカンサス
西面 天使、マタイの象徴
南回廊36番の天使像はこちら
北面 ルカ
南回廊36番のルカの象徴牡牛像はこちら
東面 マルコ
南回廊36番のマルコの象徴ライオン像はこちら
南面(写真なし) ヨハネ
南回廊36番のヨハネの象徴鷲像はこちら

83 向かい合う鷲 装飾的な文様 双円柱の上
頂板には向かい合う鳥が首を交差させている。

84 ヘブライ人のバビロン捕囚 旧約聖書の物語 単円柱の上
勢いの異なる炎が各面中央に表される
西面 「爽やかなバラの香りの風のように」燃えさかる業火の中に降りていく主の天使
東面 西面と同じ
頂板は二人の天使が持つ輪っかの中に神の手
北面 
業火は弱まっている

85 聖マルティヌス 双円柱の上
頂板の銘文 ここにマルティヌス 神の司教 まだ洗礼志願者 我にこの衣を掛ける
その下段では鳥グリフィンが首の長い獣の首元をつつき、その獣は自分の後肢を噛んでいる。
南面(写真なし) おそらくリグジェ修道院で聖マルティヌスは聖ヒラリウスの弟子となった
西面 マルティヌスはローマ軍の兵士だったが、キリスト教に改宗したがまだ洗礼は受けていなかった。彼は貧者に服を半分与えた
北面 二人の天使に伴われた主はマルティヌスに半分になった外套を返した
「あなたが私に着せたものは私の兄弟には小さすぎる。私があなたに着せよう」
頂板は鳥グリフィンと鴨が仲良くしている
東面 聖マルティヌスはリグジェで死人を蘇らせた 
頂板では鳥グリフィンがつつく動物が、輪っかに腰を引っかけて、首を腹側に回して自分の後肢を噛んでいる。

86 装飾的な文様 蔓草文様 単円柱の上
頂板の上側はうろこ文様(この地方の屋根瓦)のことが多いのに、ここでは細かい線の入った逆三角形が並んでいる。

87 イエズスとサマリア人
3名の人物が2グループ表される
左:町からやって来た使徒たちが食べ物を運んできた
右:天使、イエズスとサマリア人の会話の証人
ヤコブの井戸の縁石の上で紐が封印されていた

88 支柱
アンデレ
イエズスが最初に呼んだ使徒、ペテロの兄弟

 モワサック、サンピエール修道院 東回廊柱頭← 
               →カオール、サンテティエンヌ司教座聖堂 フレスコ画

関連項目
サンピエール修道院 南回廊柱頭
サンピエール修道院 西回廊柱頭
トゥールーズ、オーギュスタン美術館 ドラド修道院の最初の工房

参考文献
「moissac ABBAYE SAINT-PIERRE Guide de visite」 Pierre Sirgant 1986年 l’association Montmurat-Montauriol