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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2018/09/04

モワサック、サンピエール修道院 東回廊柱頭


東回廊
モワサックのサンピエール聖堂回廊の柱頭彫刻はについて『Sculptures Romanes』は、その類似性から、最初の工房の作品は、モワサックの回廊完成のすぐ後に制作され、1100-1110年頃とされている8つの聖書の物語と6つの頂板で、モワサック集団の一工房が造ったものである。
全体の形や柱頭の大きさ、図柄の構成と、人物を特定できる姿がモワサックの柱頭と似ており、トゥールーズ風の柱頭彫刻が生まれるのはその後のことである
モワサックの回廊の柱頭のように、四角錐のピラミッドの形を俯せにした花籠飾りが特徴である。卵形の顔に小さくずんぐりした体の人物像は静的で、ほぼ正面向き、そして何もない背景から高く抜き出ている。場面は各面毎に区切られている
という。

サンピエール修道院回廊は、北西から入って北側から時計回りに回ったが、『moissac』の平面図では西回廊から番号が打ってあるので、それに従うことにする。
また、中庭には入らなかったので4面ある柱頭彫刻のうち3面しか見えなかったし、限られた時間の中で1面しか写せなかったものもある。
尚、その注釈は同書のものである。
四隅の支柱は2箇所に2本の付け柱があり、そこから単柱と2本の円柱が交互に並んでいる

45 支柱東面 ペテロ
鍵はイエズスの言葉を思いおこす、「汝は石である。私はその上に教会堂を建てるであう・・・私は汝に天国の鍵を与えよう、汝が地上でつなぐことは、天でもつながれであろう」

46 サムソン 旧約聖書の物語 双円柱の付け柱の上
北面 約束の地を征服した英雄は長い髪に精神力があり、ライオンを投げ飛ばした
サムソンの頭の上にAとMを重ねてサムソンの名が刻まれている。

47 ペテロとパウロの殉教 新約聖書 単円柱の上
頂板の銘文、ペテロの殉教、パウロの殉教、サウロ、サウロ、何故私を迫害する
東面 ネロ皇帝、迫害者
北面 ペテロは頭部を下にして十字架に架けられた
南面 パウロは首を切られた。冒涜されて奪われた聖遺物を洞窟に戻した
西面(写真なし) 二人の魂は裸の子供の姿で天使に天国へ運ばれる

48 蔓草文様 装飾的な柱頭 双円柱の上
頂板はアルファベットの文字で、詩編53の祈り、主よその名に掛けて我を助け給え

49 アダムとエヴァ 旧約聖書の物語 単円柱の上
北面 蛇が巻き付く善悪の知識の木を前に下アダムとエヴァ
東面 神はアダムの不服従をとがめる
南面 燃える剣を持った天使が天国から追放された者が戻ってくるのを禁じている。
西面(写真なし) アダムは鋤で地を耕し、エヴァは禁断の実ではない果実を収穫する

50 アカンサスの葉文様 装飾的な柱頭 双円柱の上
二段に表され、上中央に蕾が伸びている
頂板にもアカンサスの葉文様

51 聖ラウレンティヌスの殉教 聖人の殉教 単円柱の上
頂板は植物を挿んで向かい合う動物
北面 聖ラウレンティヌスはローマ帝国の執政官に火あぶりの刑を言い渡された
西面(写真なし) 彼は1枚の金貨を持っていた。教会の金を隠した場所を白状するように拷問した。ラウレンティヌスは、救うことを使命としてきた貧しい者たちを集め、「彼らこそ教会の金貨と宝石である」と言って死刑執行人に指し示した
南面 殉教者は焼き網の上で生きたまま火あぶりの刑に処された。二人の天使が天国から降りてきて、その犠牲に栄誉を与えているが、下では二人の死刑執行人がふいごで火を強めている
分かりにくい写真になってしまったが、最下部の両側にふいごがある
東面 ピンボケだがふいごを持つ死刑執行人が中央に描かれている。

52 洗足 新約聖書の物語 双円柱の上
トゥールーズ、ドラド修道院回廊の2番目の工房が彫った洗足の場面
頂板は二人の天使が持つ輪っかの中に人の顔
南面 跪いたイエズスが逆らって腕を挙げたペテロの足を洗っている。柱頭の各面には他の使徒たちがいる。右側にはアンデレとパウロ
東面 バルトロマイとマタイ
北面 ヤコブ、ヨハネ、フィリポとトマ
西面(写真なし) 他の3人の使徒がmandatum(命令)という言葉と共に表されている。この場面の後イエズスは使徒たちに告げた:私はあなたたちに新しい命令を与える。私があなたたちを愛したように、あなたたちも互いに愛し合いなさい

53 アカンサス? 装飾的な柱頭 単円柱の上 

54 ラザロと金持ち キリスト伝 双円柱の上
頂板には翼を広げた天使たちが並ぶ。その上に詩編53が記されている
北面 宴会の場面。右の扉の前にに横たわったラザロ。2匹の犬がその傷口をなめ、ほかの2匹は主人の食卓に興味を示す
西面(写真なし) 二人の天使がラザロの魂を天国へ運ぶ
南面 アブラハムの胸の中
東面 地獄で悪魔たちに囲まれた金持ちの頭

55 人頭を掴む鳥 装飾的な柱頭 単円柱の上

56 支柱 聖ドゥラン
オーベルニュのブルドン作のオリジナル
トゥールーズ司教でモワサックの大修道院長(1047-72年)

57 装飾的な文様 単円柱の上
頂板はアカンサス
4名の人物が鷲の喉を掴んでいる 

58 カナの婚宴 キリスト伝 双円柱の上
東面 ガリラヤのカナの邸
南面 中央にイエズスが水を満たさせた3つの壺、右の母マリアの頼みでイエズスは水をワインに変える。壺の上で一人の使徒が本を開いている
西面(写真なし) 召使いが水を汲む
北面 饗宴のテーブル:3名ずつ2組が「水が本当にワインに変わった」と奇蹟に驚いている

59 蔓草文様 装飾的な文様 単円柱の上 

60 マギの礼拝と幼児虐殺
北面 三人のマギが赤ちゃんのイエズスとその母マリアに贈り物を見せる
何故か聖母子が角に小さく表されている。
南面 ヘロデ王は兵士たちに母親たちの腕から子供を引き離し殺すよう命じる。「幼児虐殺」は東面へと続く
右端の兵士が東面の幼児たちを殺している。
東面と西面(写真なし) 両面の中央の2つの塔は、2つの町を象徴し、画面を光りの光景と血の光景に分けている。エルサレムからベツレヘムを見て、一方は崇拝の、他方は虐殺の場面

61 葉文様とネコ 装飾的な文様 単円柱の上
可愛いネコたちがいて、ことのほかよく保存されている
葉文様もすっきりとまとまり、四面という角ばった形ではなく、逆円錐形のよう
頂板はライオンと鳥グリフィンが2頭ずつ向かい合う。

62 2段のアカンサス 装飾的な柱頭 双円柱の上

63 聖サテュルナンの殉教 聖人の殉教 単円柱の上
東面 トゥールーズ市庁の異教徒の神殿で、サテュルナン(セルナンに比定される)は3世紀中葉に最初の司教となった。
南面 ローマ帝国の執政官がサンセルナンに刑を宣告する
北面 階段の下でサンセルナンは「人に慣れていない」牛の首に足を繋がれて殉教を成し遂げた
西面(写真なし) サンセルナンの魂はマンドルラの中で天国の輝きを知った

64 高く伸びたアカンサスの葉文様 装飾的な柱頭 双円柱の上

65 タラゴナの殉教 聖人の殉教 単円柱の上
北面 聖フルクトゥオスス司教、聖アウグリウスと聖エウロギウスの助祭は典礼用の服装である
東面 エミリオン総督は彼らに死刑を宣告する。その後ろに、宮廷楽士がロッタ(中世の弦楽器)を持つ。左は二人の死刑執行人がフォークで炭火を熾している
南面 炎の中の殉教者たちは立って祈りながら死んでいく
西面(写真なし) 三人の魂は二人の天使が支えるマンドルラの中で天国へと昇っていく。雲間から下がった神の手で救われ、神は言った「私はアルファでありオメガである。万物の最初であり終わりである」

66 受胎告知とマリアのエリザベート訪問 新約聖書の物語 双円柱の付け柱の上
 南面 左は大天使ガブリエルが、マリアに神が救世主の母として選んだことを告げている。手振りで驚きを示している
右は洗者ヨハネの母となる従姉妹のエリザベートを訪問した。二人の女性は抱き合っている
中央は壁掛けを束ねた建物はおそらく神の出現の代わりに、聖体拝領の中断を表している

67 支柱東面 ヤコブ
彼への崇拝がコンポステラへの巡礼の期である

   サンピエール修道院 南回廊柱頭←  →サンピエール修道院 北回廊柱頭

関連項目
サンピエール修道院 西回廊柱頭
トゥールーズ、オーギュスタン美術館 ドラド修道院の最初の工房

参考文献
『moissac ABBAYE SAINT-PIERRE Guide de visite』 PIERRE SIRGANT 1986年 l’association Montmurat-Montauriol