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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2019/02/05

コンク、サントフォワ修道院聖堂 トリビューンの柱頭


『LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、円柱上にのり、アーケードやヴォールトを支える柱頭は、彫刻師が自由に創造性を発揮できる自由な空間であった。
ジャンクロード・フォー(Jean-Claude Fau)は、大きく4つの時代に分けている。
1041-65年 オドリック修道院長期 最初の柱頭群
後陣の修道院に作られた。コンブレ(Combret)産の赤い砂岩が好みで、主に交差部の小後陣付近に配されたという。
教会は祈りやミサにとって重要な内陣付近から建てられ始めるので、この辺りが最も古いことになる。
1065-87年 エティエンヌ2世期 
近くのリュネル(Lunel)産の「ルセ(rousset)」と呼ばれる金色石灰岩となったという。
エティエンヌ2世はブロワ伯で、第1回十字軍に参加した。
1097-1107年 ベゴン(Bégon)3世修道院長の工房 
第2次建設期にトリビューンと回廊の柱頭を完成した。
この工房は植物や動物の柱頭は非常に巧みであったが、人物の表現には問題があるが確固とした様式があるという。
回廊の柱頭についてはこちら
1107-25年 ボニフファス期 完成
コンクのタンパンの工房とともに完成させたという。

トリビューン(階上廊)の通路側から見た各柱間の柱頭を番号順に、とは言え、夜の光と音楽で楽しむ階上廊巡り(Visite des tribunes en lumière et en musique)では主に二連アーチを写し、翌日の午前にアンヌさんが見せてくれたとき、そして午後のトリビューンのガイドツアー(Visite guidée)では、できるだけ柱頭を撮影したつもりだが、ある程度説明を聞きながらになるので、撮影していると置いてきぼりとなり、それに気付いて走って追いかけるということもあって、とても総てを写すことはできなかった。

北通路側
中央の双円柱の柱頭は四面にそっぽを向く肉食獣
左付け柱の柱頭には天使とキリストが表されているらしい。

両角と長面中央に有翼の天使、その間に2人の人物が表されるが、どのような物語かは不明。おそらく天使の間の人物は殉教者だろう。

通路側
中央は大きな葉を角に配した蔓草文様
頂板には変形パルメット文
『Conques』は、280ある柱頭の中で、植物、絡み文様、肉厚の葉文様、平板な葉、段状の葉文様は創意による装飾ではあっても、コリント式柱頭が元になっている。
コルベイユ(柱頭の籠部分)の下部は円形で、上部は角形になっている。二、三段のアカンサスの葉や平板な葉が主なものである。渦巻はコルベイユ上部の角にある。コルベイユには松笠の垂飾の付くものもあるという。
右隅にはトリビューンの横断アーチを支えるアトラス。
右の柱頭は一段のアカンサス角には渦巻ではなく髭のある人物、頂板はパルメット唐草
左はアカンサスの葉文様の腰?の辺りにメアンダー文のような帯が巡る。

③通路側
右は刻みの少ない一段のアカンサス、頂板には泳ぐ魚
中央は細かく刻まれた葉文様 
右 頂板 3匹の魚
『LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、マルシヤック(Marcillac)の火山性の土のために赤茶けた水となったドルドゥー川に注ぎ込むコンクの谷の小さな流れのウシュ川マス?という。
ドは大雨で水が濁っているのではなく、上流のマルシヤックの土のせいだった。
柱頭は一段のアカンサスで、主面中央に十字が彫られている。
左 肉厚の葉叢
アカンサスの刻みがある葉が並び、その表面を先端に芽をつけた茎が網状に絡み合う。

通路側
右 両角に象牙の角笛を吹く人物。その間には若いアカンサス。 ベゴン工房(1087-1107年)
『Conques』は、左右対称の構成で、軸線はパルメット形の葉文様で隠されている。2人は髪型が少し違っている。細い帯を締めたチュニックを着て角笛を吹いている。その体は2つの面の境目に置かれる。
この人物たちが示すものは、狩りよりもいくさである。ラッパは戦いを通して連絡に使われた。ロンスヴォーの戦いのローランの歌はその良い例であるという。
中央 主面の頂板 そっぽを向く鳥グリフィン、身廊側の角に人頭
柱頭 『LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、誠実さの象徴2羽のカラスが、巨大な葉文様の中に表されているという。
通路側からは、向かい合った鳥が聖杯から水を飲んでいるように見える。
左は刻みのない二段のアカンサス、角には大きな渦巻。

⑤通路側
右 頂板 5段の市松文様
柱頭 『LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、純粋さの象徴アイリスの花の装飾、様式化されて王家のユリの花となるという。
中央 ベゴン工房(1087-1107年)
右側面
『Conques』は、4天使というタイトルで、タンパンのキリストのように下ろした手は地獄を、上げた手は天国を指しているという。
中央に坐す人物は両手を挙げている。頂板を支えているのか、手を挙げて祈っているのか。
頂板 中央に口からアカンサスの葉を出す動物。左右には十字架を持つ牛が、通常は羊なのだが。
通路側の頂板には神の手が表されている
左側面では、天使の間に坐る人物は両手を膝に置いている。
LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、坐っているようで、黙想しているか、誓いを繰り返している。或いは、人生の2つの年代かも知れないという。

交差部の手前通路側
それぞれ異なる二段の葉文様
中央

⑦通路側
右 単弁の蓮弁みたいだが、一段のアカンサスと小さな渦巻
中央 一段のアカンサス。刻みのない葉は中央に葉脈が通り、小さな葉が両側につく
左 一段のアカンサス。葉脈が幅広に表される

⑧通路側
右は二段のアカンサス
中央 二段のアカンサスに大きな渦巻 
左 一段のアカンサスは葉脈が切れ込み、⑦の左と似るが、渦巻と一体化している

⑨通路側
右 吝嗇
『Conques』は、タンパンの彫刻工房がつくったもの。角には2人の悪魔が登場し、その頭部は頂板を支えている。短面では武器をもって吝嗇の者を脅迫している。主面中央の人物は吝嗇の者或いは高利貸しが跪いており、遠くを見つめているという。
左側面

中央 二段のアカンサス、角の渦巻と一体化は葉の先と一体化する
左 葉脈が密に通ったアカンサスは中央で分かれ、ところどころリボンで束ねられている。これは二段になるのかな

通路の円窓の下
二段のアカンサスの渦巻に松かさのようなものがついている。

⑩通路側
右より二段のアカンサス、一段のアカンサス、二段のアカンサスで、どれも刻みがない。

⑪通路側
右 二段のアカンサス、頂板には花文か円文が並ぶ
中央と左 どちらも二段のアカンサスで上側の角の葉が渦巻く
中央 双円柱の内側に双方の渦巻きがせっしている。頂板は環つなぎ唐草
左 頂板とそれを支える中央の突起は浮彫が仕上がっていないようにも思える

⑫通路側
右は一段の平板なアカンサスで、渦巻はその上に彫られている。
中央 ⑪の双円柱の柱頭と酷似するが、頂板には半球のと尖った装飾が交互に並ぶ 
左 二段のアカンサスでそれぞれ葉の先に松笠の垂飾がつく。しかも珍しく葉が丁寧に彫られている。渦巻の茎?でさえ文様が刻まれている

⑬通路側
3つ共二段のアカンサス。左は葉の先ではなく別の茎から渦巻が出ている
右も別の茎から渦巻が出る
中央 上部の葉の先端が大きな渦巻となる。頂板は市松文様だが、段ごとに横線が入る

⑭通路側
右 二段のアカンサスで上部の葉先が渦巻に。頂板には水平な線が数本刻まれる
中央 三段のアカンサス?影で分かりにくい。頂板の角には球状のものがつく
左 一段のアカンサスで葉の先が渦巻になる

南内陣側
⑮と配置が左右逆になっていると思うくらい似ている。頂板が違うくらい
中央 二段のアカンサス、上部の葉先が渦巻になる
左 一段のアカンサスで葉先が渦巻に。頂板は細い溝と太い溝の組み合わせだが、それが中央で断層のようにギャップをつくっていて、結構凝っている

⑰通路側
右 一段のアカンサスで葉先が渦巻
中 二段のアカンサスで上部の葉先が渦巻。頂板の角に球状のものがつく  
左 二段のアカンサスで上部の葉先が渦巻。頂板は幅を変化させて平行線が刻まれる

⑱通路側
左 二段のアカンサスで上部の葉先が渦巻
中央 一段のアカンサスで葉先が渦巻。頂板の四隅に球状のものがつく
左 二段のアカンサスで葉が丁寧に浮彫されている。渦巻はない

⑲通路側
日中
中央 二段のアカンサスで、別の茎から渦巻が出る。頂板には斜め格子文様?
左 二段のアカンサスで、上部の葉先が渦巻。頂板は平行線が数本
右 捻れ文様とアカンサスの葉の柱頭の角には人物が入り込んでいる
反対の側面

⑳通路側
右 二段のアカンサスだが葉に高さが感じられる。上部の葉先が渦巻となり、それが角度によって鳥の頭に見える
中央 二段のアカンサスで上部の葉先が渦巻。双円柱の間にはパルメット文が入り込む。頂板はユリのような環つなぎ唐草
左 『LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、クサノオウ(feuilles de coélidoineまたはchélidoine)の葉。盲人が見えるようになったり、サントフォワへの祈願の御利益を暗示するという。
クサノオウはカオールで見かけた植物だが、東トルコで生えていた植物の方が、この柱頭の葉に似ている。このような葉は、この聖堂の柱頭にも幾つかあり、アカンサスの葉としてきた。

㉑通路側
中央 三段のアカンサス?
右 二段のアカンサス、その上部に小さな渦巻
右 二段のアカンサスで、上部の先端が変形した渦巻に。頂板には前向きで留まる鳥
左 二段のアカンサスの上に蔓から伸びた渦巻、主面中央には髭のある人物の頭部と両手
この部分は突起だけの柱頭が多いが、本来はこのような人頭

㉒通路側
右 二段のアカンサスの上に渦巻。頂板は六弁花の環つなぎ唐草
日中
中央 装飾的なパルメット文様。頂板はモワサックの回廊でも見かけた五弁花の環つなぎ唐草
左 一段のアカンサスで葉が装飾的に彫られている。その上に大きな渦巻。中央にはワラビのようよな小さな渦巻が一対。頂板は変形市松文様とでも呼べば良いのだろうか
別面 渦巻と葉先が鳥の頭に見える

㉓通路側
右 一段のアカンサス、葉が㉒の左のように彫られている。頂板はユリのような六弁花
中央 二段のアカンサスの上に渦巻

左 二段のアカンサス、上部の角は特別大きな葉で先に渦巻がある。頂板の角に何か表されているのだが・・・葉っぱかな?主面中央は小鳥のたたんだ羽根のよう。
アカンサスの葉の間でハトが小さな水盤の水を飲んでいる。
『LES CHAPITEAUX DE CONQUES』は、聖体の秘蹟は日輪によって生命の源のように描かれ、生命の樹は東方由来で、トリビューンでは聖杯の下に見られる。選ばれた生き物、鳥が飲んでいるという。
㉔通路側
右 二段のアカンサスで上段がパルメットのように表される。頂板角に鳥
中央 二段のアカンサス、やはり上段がパルメットのよう。
左 一段のアカンサスは㉒のような浮彫がある。頂板に並んでいるのは小鳥か花か

㉕通路側
中央の柱頭は天使で頂板は蔓草文様
右 角に大きな鳥が正面をむき、その間にはアカンサスの若葉?。頂板にはカラスのような鳥が羽根をすぼめる
中央 受胎告知の場面 ベゴン工房(1087-1107年)
右がマリアで左が翼を折りたたんだ大天使ガブリエル。頂板はパルメット唐草が巡っている。
左 ベゴン工房
頂板左から、組紐文(捻れ文様)、角に手足を開いた人魚、主面中央に魚
柱頭は二段のアカンサスの変化文様から人物が見えている

㉖通路側
日中
右 楯と剣で闘う戦士 ベゴン工房(1087-1107年)
同書は、2人の男は柱頭のコルベイユの角に置かれ、上部の頂板を支えているようだ。玉縁(アストラガル)の上に、綱渡り師芸人のように慎重に足を置いている。兜と縦長の盾、長いチュニック、そしておそらく鎖帷子も着けている。その目はうつろで、互いに目を合わせず、監視者の目を探している。
柄の端が急になった短剣は11世紀になっても尚使われることのあったローマ時代のタイプであるという。
側面 兵士の半身と葉叢
中央 柱頭は装飾的なアカンサスの葉の間に人面、頂板は市松文様
左 鳥グリフィンは主面ではそっぽを向き、側面では葉叢を啄んでいる
頂板は、花、角には有翼の天使、主面中央にはライオン

㉗通路側
右 一段のアカンサスだがかなりアレンジされている。頂板は市松文様
日中
中央 四隅に中央を向いた鳥、水盤に嘴を入れている。頂板はパルメット唐草
左 柱頭は捻れ文様にアカンサスの葉が入り込む
頂板にはロゼッタ文、角に天使の胸像、主面にライオン

通路側
右 一段のアカンサスの葉は力強い、頂板は4-5弁のロゼッタ文の入った環つなぎ唐草
中央 柱頭はアカンサスの葉、頂板には蔓草文様がかなり深く刻まれている。
左 騎士たちの戦い
頂板の石畳文(市松文様)は割合多い文様だが、決して正方形に彫っているのではないのだった。
側面では石鎚を持つ角の人物の腕を端の人物が掴んでいる。
そして横断アーチを支えるアトラス

パイプオルガンの左右の小部屋にあった柱頭。本来どこにあったのか不明。

ダビデと楽士たち、中央には股から頭を出した軽業師。頂板の環つなぎ唐草には側面向きの鳥、その上にダビデの文字。
コンクでは旧約聖書の物語は柱頭に表されていないのだと思っていた。
角に人物、その間に火に掛けられた釜?頂板には蔓草に組み込まれた鳥
一段のアカンサスの角から頭部をだす人物。頂板には左右対称のパルメット文が環つなぎ唐草に

説明パネルは、聖杯の水を飲む鳩とする。鳩の頭部は聖杯に向いていたようだが、どれも失われている。各角に玉縁に留まるの鳥が表されるが、その頭部は逆を向いて無理がある。
頂板には角笛を吹く天使たち

鳥足のケンタウロスは翼を持つ
一段のアカンサスは先が渦巻きになっている。頂板にはグリフィンや戦う人物など。

残念ながら側面だけ
パルメットで飾られた十字架の基台は動物の頭部。聖人の殉教でも表されていたのかも。
頂板の環つなぎ唐草の中は丸まった魚?

書物を持つ天使
長衣の裾は規則的な箱襞で表される。

    サントフォワ修道院聖堂 中庭に残る彫刻← 
                 →サントフォワ修道院聖堂 身廊と内陣の柱頭

関連項目
サントフォワ修道院聖堂の柱頭を時代順に
サントフォワ聖堂日中のトリビューン
夜はサントフォワ聖堂のトリビューンへ
雲崗石窟の忍冬唐草文

参考文献
「LES CHAPITEAUX DE CONQUES」 Frère Jean-Régis Harmel et Julien Philippoteau 2012年 JF Impression

「Conques」 Emmanuelle Jeannin・Henri Gaud 2004年 Edition Gaud