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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2019/01/22

コンク、サントフォワ修道院聖堂 中庭に残る彫刻


『Conques』は、どの修道院にも設置された中庭は、すべての面で修道院生活の中心となる。修道士は1日に10回は通る。中庭の周りには教会、修道士の大寝室、食堂そして巡礼者用の宿舎がある。
コンクでは、4つのロマネスク期の回廊のうち、時代の波と襲撃に持ちこたえたのは一つだけである。
現在見られるものは、西回廊と、東回廊の一部である。中庭は26X28mという。
修道院の復元図は買った本にはなく、午後のトリビューンガイド付きツアーで上がった階上廊に掛かっていた図だけだった。

同書は、ベゴン修道院長(Bégon、1087-1107年)の墓用壁龕について、19世紀に中庭が補修され、回廊にあったベゴンの墓用壁龕は解体され、現在は教会南壁の2つの扶壁の間に設置されている。回廊の柱頭が再利用されているという。
身廊南壁の扶壁の間には3つの墓用壁龕が見えている。そのうちの一番西にあるのがベゴンのものだろうか。
あいにく遺体を安置した下部は写していないが、4本の円柱や、壁龕中央に人物像の高浮彫(これでもフランスでは浅浮彫らしいが)が気になって撮影していた。
それは、玉座に坐すキリストは裸足、向かって右がおそらく聖母で足が欠失している。右は不明だが靴を履いている。後方には2天使。
右側の双円柱はそれぞれ異なった葉文様。頂板には天使の顔と翼が並ぶ。中央の角柱は荷重を支えるためのものだろう。
こちらも頂板には天使の顔と翼が並んでいる。
手前は有翼の天使を4つの角に配置している。
奥は葉文様と動物の組み合わせ。4頭のライオンが各隅で口を上にして茎を銜えているが、当時はライオンも植物を食べると思われていたのだろうか。足ははっきりと肉食獣になっているのに。

中庭の水盤について同書は、蛇紋岩の大きな水盤がある。これは最近の修復時に置かれたもので、後補の部分もある。
コンクから20㎞ほど離れたフィルミ(Firmy)から採取されたという。

水盤の縁は、小さな柱頭と男性像が支えている。内陣のモディヨンやベゴン工房の顔立ちを思い出さずにはいられないという。
水盤の周囲には、柱礎のある付け柱がほぼ等間隔に並ぶ。何本あるのだろう、16本?
付け柱の上にはアカンサスの葉文様の柱頭が口縁部を支えていて、柱頭の間には、両手で口縁部を持ち上げている人物の顔面が見える。
少しズーム。
左手で口縁部を支えて、右手は唇に近づけている。何か意味のある仕草なのかな。
上の修道士は年配のようだが、こちらは若い。
キツネのような動物も。さすがに口縁部を押し上げてはいない。
柱頭も葉文様が一つ一つ違うし、人頭だけで腕を挙げていないものも。
うつむき加減の顔だけで腕はない。
左は動物、右はフクロウ?
目玉の象嵌が残っているのかな。髪型がトンスラの修道士ではない。
長い髪の人物はも腕を挙げていない。
修道士のトンスラ部分がはっきりと表されている。右の柱頭は葉文様というよりも大きく口を開いた動物のよう。
手先が人間と思えないが、ちゃんと口縁部を支えている。
左は両腕で口縁部を支える修道士、右は恨めしそうな動物。
細い腕で支えているのはサルかな?
左は動物、柱頭は鶏冠のよう、右は最初に写したもの。
ということで、反時計回りに一周して写したが、人物や動物の頭部は15。一つ写し忘れたのかも😅

『LES CHAPITEAUX DECONQUES』は、1041年からボニファスの修道院長の任期(1107-1125)のほぼ80年間続いた新しい修道院聖堂の工事と共に、10世紀の教会堂は次第に失われていった。新しい修道院聖堂は22.1mの長さがあり、250の柱頭で荘厳されている。それに加えて、古い回廊と宝物館には30の柱頭があるという。

東回廊で残っているのは2つのアーチだけ。
左より
力強い葉文様
天使の翼と植物
南面も翼だけが残る。下部全体に蓮台のようなギザギザが巡っている。
おなじアカンサスの葉文様でもこれだけ造形が違う。こちらは浅浮彫とみなせる彫り方。
奥にもう一つ同じ葉文様の柱頭があった。

西回廊は大きなアーチの中に二連アーチが配置され、アーチを繋ぐのは双円柱。大アーチは角柱の付け柱の柱頭が支える。
人物が登場して楽しい。
大アーチの柱頭の一つ。葉文様の間から大きな人面が出現。お菊開いた口を葉が隠そうとしているみたい。
大アーチには中央に餌入れまたは水入れがあり、両側の鳥が向かい合っている柱頭も。

双円柱の柱頭
市壁から敵の来襲を眺める人びと。
時計回りに
角笛で襲来を知らせる者や、両手に何かを掴んでいる者も。
裏側にも曲がった道具を握っている人が。
『Conques』は、聖堂の建設に携わった大工が、それぞれの道具を持っているという。
4面目の真ん中は大きな顔だけ。両角の人物はやっぱり何かを持っている。

戦士の柱頭各角に楯と槍で構える戦士を配置する。
奥は渦巻の大きな葉文様。この戦士は口髭をたくわえている。
裏面の方が欠けている。
これで一周。

回廊の中へ。
片流れの傾斜の緩い天井は木製。
内側には大アーチはなく、付け柱にのる葉文様の柱頭は、木の梁を支えている。
同じく梁を支えている柱頭
複数の人物が登場する聖書か殉教者の物語かと思うが、どんな場面かは不明。
十字の花から左右に伸びる葉文様の柱頭と、それと繋がるようでもある頂板の葉文様

双円柱の兵士の登場する柱頭の内側の柱頭は渦巻が力強い葉文様。

西回廊の外には、いつの時代にか塞がれたアーチがあった。
サントフォワ修道院聖堂の交差部にも銘文の彫られた巻物を両手で広げる天使がいたが、こちらの方が可愛い。
若いというべきか。

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関連項目
サントフォワ修道院聖堂の柱頭を時代順に
サントフォワ修道院聖堂 身廊と内陣の柱頭

参考文献
「LES CHAPITEAUX DE CONQUES」 Frère Jean-Régis Harmel et Julien Philippoteau 2012年 JF Impression

「Conques」 Emmanuelle Jeannin・Henri Gaud 2004年 Edition Gaud