ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2018/09/28
カオール、サンテティエンヌ司教座聖堂 北扉口タンパン
サンテティエンヌ司教座聖堂は北扉口にタンパンのある珍しい聖堂である。
フランスの歴史的建造物 司教座聖堂のSt Etienne de Cahorsは、
1135年、西扉口に造られたタンパンは13世紀に西正面から移されたという。
タンパンはキリストの昇天を表し、使徒たちの動作を見ると、ロマネスクとゴシックの過渡期の様式である。サンセルナン聖堂と共に、12世紀の彫刻が残っているという。
サンセルナン聖堂ミエジュヴィル門のタンパンはこちら
栄光のキリストはマンドルラに包まれ、手と書物は二人の天使に支えられている。
キリストの着衣の襞の繊細さは特筆に値するという。
マンドルラの上部は四人の小天使がキリストの昇天に付き添っているという。
昇天の場面は聖ステファヌスの生涯の小さな場面に挟まれているという。
石打の刑は右下にあるという。
下段の三葉形のアーケードは12名のうち11名の使徒と聖母がいる。中央の聖母と右端の使徒以外は2名ずつ。
左端の使徒は一人のようだが、別の人物の頭部がある。おそらくユダだろうという。
右端2人目は脚をX状に交差させていて、モワサックのエレミア像のようだ。故にカオールの彫刻師たちはおそらくモワサックの彫刻師と同じだっただろうという。
モワサックのエレミア像はかなりの長身、というよりも極端に引き伸ばされているので、この彫像の方が人の体としては自然な作風。
モワサックのエレミア像はこちら
隅切りの柱頭も見逃せない。
外側から
頂板上部は二重アーチが9つ並び、下部はリボンによるメアンダー文。蛇足だがアナトリア西部を蛇行するメアンドロス川からその名が付いたこの文様だが、このカオールの町の外縁を流れるロット川もかなりの蛇行する川だ。
柱頭は左右対称に伸びるパルメット(ナツメヤシ)の畳まれた葉をもつ茎が力強く表され、角部には人頭が付けられている。
この植物文様はこれまで見ないものだった。角には人頭に見えるがたてがみのある頭部だけが登場する。
モワサック東回廊61番目の柱頭には、洗煉されたパルメットの葉文様の両端と中央上にネコの頭部が見えていて、この系統にあたるのかも。
頂板上部は格子文様、下部は環つなぎ唐草状のもの
柱頭は蔓草にがんじがらめになった鳥とライオンで、サンセルナン聖堂回廊の蔓草の中の鳥やライオンの系統のようだが、サンセルナンでは鳥かライオンで、鳥とライオンの両方が表されるものはなかった。
頂板上部はジグザグ文、下部は環つなぎ唐草
柱頭はパルメットの葉のある蔓草を2頭のライオンがくわえている。サンセルナンのライオンは肢が細長いが、こちらのライオンは肢が短く愛嬌がある。
そして扉口に近いものは撓わに実る3房の葡萄の実と浅浮彫の蔓、頂板は大きな花の蕾?
相対する柱頭は全く異なる葉文様・・・いやあまりにも突き出た葡萄の実は落ちてしまったのだ。
左隅切りへ、
頂板上部リボンが表裏を見せながら浅いジグザグ文をつくり、下部はパルメットの葉を4つ組み合わせた新たな文様が浅浮彫されている。
柱頭は、ライオンと犬?が生命力あふれたパルメットの茎と葉でがんじがらめにされている。
状態が悪く、分かりにくいが、人物と蔓草の組み合わせのよう。
頂板は、リボンで卍文と枠を構成したものが3つ並ぶ。
柱頭は蔓草に巻かれたライオンの間に人物が出現している。
その外側
頂板上部は植物文様、下部は手裏剣のようなものが並んでいる。
柱頭には、腕を組んだ二人の人物が前後ろになってライオンと闘っている。
同サイトによると、これはバラの装飾だという。
かなりの高浮彫のものが2種類交互に配されている。
アーキヴォルトには非常に痩せて長身の人物で飾られ、狩猟や善と悪の戦い。飾りアーチや軒下飾りも見逃せないという。
様々な職業人が表されているのかと思って見ていた。
確かにこの辺りからは引き伸ばされた人物像になっていて。悪と闘っているようにも思われる。
頂部
軒下飾りも面白いが、軒の石畳文から両手を広げた人物などが上半身だけ出ていたりして面白い。
闘いの場面が
ほぼ下端まで続いている。
サンテティエンヌ司教座聖堂 フレスコ画← →サンテティエンヌ司教座聖堂 モディヨン
関連項目
カオール サンテティエンヌ司教座聖堂
トゥールーズ、サンセルナン聖堂 ミエジュヴィル門の浮彫装飾
モワサック、サンピエール聖堂 南扉口
参考サイト
フランスの歴史的建造物 司教座聖堂のSt Etienne de Cahors