ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2019/06/11
文殊菩薩と善財童子
釈迦三尊像 飛鳥時代・推古31年(623) 法隆寺西院金堂蔵
華厳海会善知識曼荼羅では善財童子に53人の善知識(よき友)に教えを授ける文殊菩薩は、釈迦三尊像では普賢菩薩とともに釈迦の脇侍とされている。しかしながら、日本で現存最古の釈迦三尊像である法隆寺の脇侍は薬王菩薩・薬上菩薩だった。文殊と普賢になったのはいつ頃かな?
文殊菩薩について『仏像図典』は、文殊は釈迦入滅の後インドに生まれ、菩薩道を修し、釈迦十大弟子たちと往復問答をしたのをはじめ、仏典結集に深い関係をもったと考えられる。従って十大弟子と共に文殊・普賢を上首とする釈迦如来の代表的眷属として釈迦三尊には不可欠の尊である。
又文殊はごく現世的な歴史上の人物として説かれたもので、維摩居士の如く確に現実の人物であったかと考えられるという。
文殊は釈迦に依頼されて維摩の見舞いに行ったと何かで読んだことがあるような・・・
維摩が病気と聞いて見舞いにいき維摩の家で問答をする場面が、法隆寺五重塔東面に塑造で表されている。法隆寺では、釈迦と文殊は別々に登場する。
同書は、次に旧訳華厳経の入法界品によれば、文殊は自ら南方に遊止し、善財童子に更に南方への遊行を勧奨するなどのことがあった。この情景は善財童子華厳五十五ヵ所巡礼として絵巻類に取上げられる。しかし文殊の浄土はもともと東方にありと云われ、菩薩瓔珞経、央堀魔羅経等には未来の仏土名(仏住世界)とその後身の仏名(宝相如来など)を説く。また旧訳華厳経には文殊菩薩の住所としての清凉山を、文殊師利法宝蔵陀羅尼経には大振那国中に五頂の山ありと説く。これより中国山西省清凉山(五台山)は文殊の霊地としてきわめて人口に膾炙し、五台山を中心とする文殊の信仰とその造像は我国へも伝えられるに至ったという。
五台山図 五代時代(907-960) 敦煌莫高窟第61窟西壁
『敦煌莫高窟5』は、五台山は文殊菩薩の住む地として、北魏以来仏教徒の信仰を集めてきた。唐龍朔年間(661-663)に沙門会が小さな五台山図を作った。長慶4年(824)、吐蕃の遣使が唐王朝に五台山図を求めた、これが五台山図が河西回廊に伝わった最初で、敦煌一帯に五台山図が出現した。莫高窟で現存最古の五台山図は開成年間(836-840)の第159・361窟の屏風絵で、五代に至るまで屏風絵が壁に描かれた。本図は文殊堂のような窟内で、西壁の横断して描かれた巨幅で、仏画であり、山水人物画であり、歴史地図である。各寺院が並び、川が蛇行し、その中で人物が旅をし、商売をし、高僧が説法をしているのが描かれているという。
同書は、平安時代以降天台諸家の中には五台山巡礼を志すものその数少なからず。また五台山文殊と呼ばれる文殊菩薩の造像はとくに円仁が比叡山西塔文殊楼に築いたものを第一として、当時きわめて盛行を見たもののようである。この影響下に生まれたと見られる文殊菩薩像に文殊五尊像、或は渡海文殊像がある。
文殊菩薩の眷属としては文殊五尊像(渡海文殊)の時の善財童子・優填王・仏陀波利三蔵・最勝老人の諸尊と八大童子の諸尊がよく作られるという。
安倍文殊院の一組だけではなかったのだ。
文殊菩薩及び侍者像 木造彩色 文殊菩薩:建仁3年(1203) 最勝老人:慶長12年(1607) 他の侍者:承久2年(1220)頃 最長老人以外は快慶作 安倍文殊院蔵
『日本国宝展図録』は、獅子に乗る文殊菩薩が、4人の侍者を従えて海を渡る「渡海文殊」を表す。獅子の手綱を引く優填王の前方で、一団を振り返りつつ合掌する善財童子、文殊を見上げるような仏陀波利など、群像表現として優れた出来映えを示している。大作ながら各像の間に密接な関係を持たせた構成という。
渡海文殊菩薩像 鎌倉時代、正安4年(1302)
『仏像図典』は、文殊菩薩が戒律の師範たることは文殊師利問経などに説く所であるが、鎌倉時代に西大寺中興の叡尊、弟子忍性らは盛んに文殊菩薩の信仰を鼓吹し、律学を再興すると共に、貧者の為に宿を設け、ここに文殊菩薩の画像や彫像を安置する等のことがあったという。
本が古いのでこんな画像しかなかった。これでは細かい点が皆目わからない。
みすたぁの奈良で沢山の仏像に会いに行こう♪の旅 2日目 西大寺にはっきり写った絵葉書の画像があります。
他にはe国宝の文殊菩薩騎獅像および侍者立像(興福寺伝来東京国立博物館蔵、鎌倉時代・文永10年、1273、重文)が残っている。
→安倍文殊院 渡海文殊群像
参考サイト
公益社団法人関西経済連合会のわびさび奈良の文殊菩薩騎獅像及四侍者像
みすたぁの奈良で沢山の仏像に会いに行こう♪の旅 2日目 西大寺
e国宝の文殊菩薩騎獅像および侍者立像
参考文献
「快慶 日本人を魅了した仏のかたち展図録」 2017年 奈良国立博物館
「仏像図典」 佐和隆研編 1962年 吉川弘文館
「国宝法隆寺金堂展図録」 2008年 奈良国立博物館
「国宝法隆寺展図録」 1994年 NHK
「日本国宝展」 2014年 読売新聞社・NHK