ドーバヤズィットのイサクパシャ宮殿には3つのタチカプがあり、その他にも 17:華麗な入口がある。
1:正門のタチカプ
蔓草文でもないような文様帯の尖頭アーチの内側に、6段ほどの平面的なムカルナスとなっている。
見上げると、1つ1つの小さな面の輪郭のように黒い線があるので、ムカルナスの構造がよくわかる。
この台形を1部品として、4つが扇のように集まって1つのムカルナスになっている。
そしてその中心には鍾乳石のような立体的な垂飾がある。ムカルナスがスタラクタイト stalactitesとも呼ばれることが頷ける。
3:第二の中庭入口のタチカプにはムカルナスはなかったが、なくなってしまったというわけでもなさそうだ。
4:第二の中庭には謁見室や9:モスクのある建物への17:入口にはムカルナスがあった。
この入口だけはイーワーンのような深い尖頭アーチがあり、タチカプとは呼ばれていない。
その中に浅い尖頭アーチがあって、一番内側が7段ほどのムカルナスとなっている。
その下の装飾帯といい、尖頭アーチを支える円柱の柱頭といい、イサク・パシャ宮殿は独特のモティーフで溢れている。
ここのムカルナスにも黒い輪郭線があるが、鍾乳石状の垂飾はなく、代わりに平たい六点星がある。
9:モスクのミフラーブは深い壁龕になっていた。
尖頭アーチの内側がムカルナスになっているかというと、垂飾はあるものの、ムカルナスとはだいぶ違ったものになっているようだ。
6:ハレム入口のタチカプは非常に装飾的だ。
左右に高浮彫の生命の樹、門構えには幅の広い蔓草文が巡っている。
そして、ムカルナスも装飾的だ。というよりも、この尖頭アーチ内の空間に、ムカルナスはあるのだろうか。
鍾乳石飾りという言葉からすると、最下部の浮彫が鍾乳石垂飾を表したもののようにもみえる。しかし、一般的なムカルナスとはかなり趣を異にする。立体的な部品を組み立てて構成するということをやめてしまったようだ。
一段ずつモティーフが違っているが、それぞれ何かを表しているのだろう。
※参考文献
「トルコ・イスラム建築」飯島英夫 2010年 冨士書房インターナショナル