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忘れへんうちに 旅編では、フランス南東部の旅を掲載中です。。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2023/10/24

サンネクテール聖堂 L'Église Saint-Nectaire1 内陣の柱頭彫刻


サンネクテール聖堂について『世界歴史の旅 フランス・ロマネスク』(以下『フランス・ロマネスク』)は、教会は聖オストルモワンヌの布教と行をともにした聖ネクテールを祀っている。3世紀のはじめごろにこの地にいて、コルナドールの山に教会を建てた。彼自らはそのかたわらに埋葬された。その徳を偲んで巡礼者が集まったが、この教会の管轄は少し離れた所にある「ラシェーズディユー」におかれていている。12世紀になってこの土地をオーヴェルニュ伯ギョーム7世から寄進され、現在の教会がつくられた。そのことは教皇勅書にもあるという。
サンネクテールという名前は、おそらく開発された温泉場よりは、むしろ有名なチーズの産地として世に知られている。直径50㎝くらいの大きさである。ルイ14世もこれを賞味したという。
この教会は長さ37m、幅11mの小形であるが、みごとな調和をもっているのである。「大革命」で被害を受けるが、19世紀の後半に修復された。ラテン十字形であり、したがって翼廊をもち、三つの祭室と周歩回廊がある。翼廊にも左右一つずつ祭室をもつ。洗礼者志願室を除けば四つの梁間がある。両側に二つの側廊をもっているという。


まずは内陣から、各柱頭彫刻の説明は『フランス・ロマネスク』または『ÉGLISE ROMANE DE SAINT-NECTAIRE  DE L'OMBRE À LA LUMIÈRE』(以下『SAINT-NECTAIRE』)より
平面図
サンネクテール聖堂平面図部分 『ÉGLISE ROMANE DE SAINT-NECTAIRE  DE L'OMBRE À LA LUMIÈRE』より


A-a キリストのオリヴィエの丘における逮捕の場面
『フランス・ロマネスク』は、騒然とした場面でありながら、キリストの高貴な面差しはそれと無縁のように存在する。ユダの場面があり、兵士たちが彼を取り押さえるという。
裏切り者のユダがキリストに抱きついて、兵士たちにこれがキリストだと知らせている。

A-b キリストを鞭打ちする場面
同書は、キリストは柱にくくられ、2人の兵士が彼を鞭でたたいているという。
他の場面でも言えることだが、兵士たちはキリストをみてはいない。

A-c キリストの十字架を背負う図
それは屈辱よりは勝利の最中であるようだという。

A-d 聖トマへのキリストの出現(不信のトマス)
キリストは磔刑に処され亡くなるが、三日後に復活した。十二使徒のうちのトマ(トマス)が、キリストが蘇ったことを信用しなかったので、キリストは脇腹の傷を触らせる。それでトマはやっとキリストの復活を信じることができたという。


B-a キリストの変容
SAINT-NECTAIRE』は、変容の壮大な場面は、同じ柱頭の二面に彫刻された。三つの福音書(マタイ、マルコ、ルカ)に登場する6人の登場人物が描かれている。角にはキリストが栄光のうちに立っており、右手を小さな十字架の長い棒の上に置いている。モーセとエリヤがキリストを取り囲む。長いひげを生やした彼らの頭と手が見えるという。

B-b キリストの変容つづき
SAINT-NECTAIRE』は、左側には、ヤコブとヨハネが表情豊かに、目を閉じ、片手に頭を置いて眠っている姿が描かれているという。


B-c パンの増大の奇跡
SAINT-NECTAIRE』は、4人の使徒に囲まれたキリストは、脚のないテーブルの前に座っており、プリーツのあるテーブルクロスが掛けられており、2人の使徒がその端を持っている。
ガリラヤ湖のほとりで、キリストは人けのない場所で説教を聞きに来た五千人に、大麦のパン五つと魚二匹を与えたという逸話からきていて、キリストがパンを増やし、裂いて弟子たちに与えたので、弟子たちはそれを群衆に配った。
このイメージは、キリストの最後の食事である最後の晩餐を予感させるという意味も帯びているという。

B-d 教会の創立者の一人とされているラニュルフォ
SAINT-NECTAIRE』は、短い衣服を着た男性が、柱を抱きかかえている様子が描かれている。叫び声で口が歪んだようなその名前は「ラニュルフォ」(柱に名前が刻まれている)。翼を広げ、剣を手にした天使が彼の手首を掴んだ。右側では、頭と手だけが見えるヘルメットをかぶった兵士が彼を指差し、柱から引きはがそうとしているかのように髪を掴んでいるという。
異教徒の兵士たちから柱を死守したラニュルフォがこの教会を建てたということかな?


C 聖ネクテールの生涯 
SAINT-NECTAIRE』は、柱頭は教会の守護聖人に捧げられている。このようにして、聖ネクテールの伝説のエピソードが巡礼者に語られた。オーヴェルニュのロマネスク様式の彫刻では、聖人を表現したものはほとんどない。聖人は頭光のある裸足の使徒として描かれているという。

C-a 死者を蘇らせる聖ネクテール
同書は、聖ネクテールは、横たわっている男性の上に寄りかかり、彼を生き返らせる。場面は矢狭間のある囲いに囲まれた教会のふもとで行われるという。

C-b テヴェレ川の徒渉
『SAINT-NECTAIRE』は、神は聖ネクテールの徳を考慮して、悪魔に命令する権限を与えた。
実際、ある夜、テヴェレ川のすぐ近くにあるサン・ソヴゥール礼拝堂に祈りを捧げに行ったとき、船乗りの服を着た悪霊が船尾に座り、聖ネクテールを渡すために来たふりをしているのを見た。そこで川を渡ろうとしたとき、神の啓示によって悪魔だとわかった聖ネクテールは言った。十字架につけられたナザレのキリストの神徳により、あなたが危険を冒したりせずに私に渡らせなさいと命じたので、悪魔はすぐに従ったという。

C-c 聖ネクテールの説教 
『SAINT-NECTAIRE』は、聖ネクテールは右手でマントの一部を持ち、左手の人差し指で身振りをしている。 聖ネクテールが説教の業を成し遂げていると考えることができる。信徒の短い衣服を着た人物は、聖ネクテールの腕の後ろに現れ、手をベールで覆っているという。

C-d ブラドゥリュスの復活
『SAINT-NECTAIRE』は、伝承によると、ある日、ネクテールはクレルモン近郊で説教していた際、葬列がの通り過ぎるのを目撃したという。それはブラドゥリュスという名の大領主のものであり、その恩寵を讃えられていた。故人の兄弟であるアグレシウスは、ネクテールの存在を知り、やって来て聖司祭の足元に身を投げ、兄弟の遺体を祝福してくれるように懇願した。ネクテールは近づき、死んだ男の手を取って立ち上がるように命じた。すぐに故人は活力と健康に満ちて立ち上がったという。


D 黙示録の裁き
『SAINT-NECTAIRE』は、この柱頭は、聖書の最後の書である聖ヨハネの黙示録に影響を受けている。それは悪の勢力に対する神の裁きと永遠のキリストの王国の設立を告げるもの。ヨハネの預言的なビジョンは、新しい時代についての象徴的な啓示であるという。
内陣の柱頭彫刻は四面あるのだが、面に一つの場面を表しているものもあれば、右面の半分と左面の半分で一つの場面を表しているものもある。この柱頭彫刻Dは、後者なので、a・b・c・dという枠にははまらない。

D-a 魂の計量
同書は、正義の天使、おそらく大天使聖ミカエルは胸に「命の書」を抱えている。上げた右手で魂の重さを量る天秤を持っているという。

D-b半ばより 騎士
同書は、ヨハネの幻想悲劇的である。「七つの封印」という本の冒頭は裁きの合図であり、地球上に引き起こされる一連の大惨事となって現れる怒りの日の到来を告げる。
最初の四つの封印を開くと、4人の騎士が現れる。この柱頭は間違いなく第四の封印が開かれたことを示している。彼の名前は「死神」で、彼は青白く死んだような色の青白い馬に乗っている。「そして彼らには、地球の4分の1を支配する力が与えられ、剣、飢餓、疫病、そして野獣を使って殺すことができたという。

D-c半ばまで死の騎士


D-c半ばより 天使の打撃を受けて
同書は、見捨てられた者は死の騎士の一撃を受けて倒れる。
一人の男はまだ立っているが、もう一人は目を閉じて身をかがめている。死体が地面に転がっている。彼は、寂しそうなしぐさをするひげを生やした男にまたがられている。「神の怒りの大いなる日が来たのに、誰が耐えられるだろうか?という。

D-d 選ばれし者の復活
『SAINT-NECTAIRE』は、ヤシの枝を持った4人のひげを生やした男は義人の象徴。天使は長い杖を持って彼らを地上の死の眠りから目覚めさせる。
天使の杖が彼らに触れ、彼らの目は大きく見開かれている。彼らは永遠の至福の中に入るという。


E 最後の審判
『SAINT-NECTAIRE』は、そのとき、地のすべての部族は、人の子が大いなる力と大いなる栄光をもって天の雲に乗って来るのを見るだろう。神はラッパの音を響かせて御使いたちを遣わし、彼らは地の四隅から選ばれた者たちを集めるであろうという。

E-a 十字架の勝利 
同書は、内陣に面して、大きな十字架が、横木の上に頭を出した二人の天使によって支えられている。それは輝かしい勝利の十字架であり、命の源であり、「人の子のしるし」(マタイ 24:30)であるという。

E-b 地獄に墜ちる者
同書は、彼らの苦しみは、頬に当てられた片方の手で頭を支え、もう片方の手で肘を支えるという従来の姿勢によって表現される。角にいる天使は左手に札を持っており、そこには恐ろしい文言が記されている《DISCEDITY立ち去れという。

E-c 選ばれた者と呪われた者
同書は、向かい合った二人の天使がオリファントを吹く。彼らは死者に目覚めの音を響かせ、二つの文の最初の言葉が刻まれた経典を広げているという。

E-d 選ばれし者たち
同書は、キリストの右側に3人いる。2人はひげを生やしており、威厳の象徴である。一人は選ばれた印のナツメヤシの葉を持ち、もう一人は胸に「恐れるな」と読める小さな開いた本を掲げるという。
三人目は二人の下に顔だけ出している。


F 復活
『SAINT-NECTAIRE』は、サン=ネクテールの彫刻家は、古代の伝統に忠実であり、キリストの復活を直接表現しているわけではない。復活の日の朝に、聖なる女性たちの訪問を通してキリストの復活を思い起こさせる。ラテン系キリスト教におけるこの古典的な表現は、伝統的にビザンチン世界の復活、つまり冥府降下を想起させるイメージと共に表されるのは珍しいという。

F-a 冥府降下
同書は、聖書と伝承は、キリストが十字架での死と復活の間に「父たちの辺獄」、つまり聖書では冥府と呼ばれるこの死者の住まいに降りたという。この場所には、古い契約の義人の魂、つまり「牢獄にある魂」が収容されていた。
リストが暗闇の深みに降りたのは、「死んだ人が神の子の声を聞き、それを聞いた人が生きるため」(ヨハネ5:25)、王国の扉が彼らに開かれるのを見るためである。救いはあらゆる時代と場所の人々に提供されます。 ギリシャのキリスト教は、冥府降下を復活(アナスタシス)の象徴としたという。

F-b 
眠れる兵士
同書は、キリストの墓は、祭司長とパリサイ人たちからのピラトへの要請に従って、4人の兵士によって守られている。彼らはぐっすり眠っている。そのうち2人は上半身しか見えず、頭を盾の上、または墓にもたせかけて横たわっている。他の2人の兵士は立ったままだったが、1人は墓にもたれかかる。呼吸を楽にするために、顔の下部を保護する鎖帷子のフックを外すことを忘れていなかった。軍用具 (鎖帷子、円錐形の鼻ヘルメット、盾、槍、剣、斧) は非常に忠実に表現されているという。
ピラトは当時ローマ低コスト属州ユダヤ総督

F-c キリストの墓
同書は、もう1人は頭を後ろにもたれている。
墓は慣例に従って、複雑な記念碑として表現されている。基部には埋葬室を示す小さな開口部がある。
その上の2つの大きなアーケードには、飾りの付いたカーテンや、金庫室から吊り下げランプが見える。アーチのスパンドレルには、キリストの顔を覆った聖骸布を思わせる丸めた布地がある。
鐘楼には一対のアーチがある。この表現は、信心深さと西洋の想像力の両方において、当時聖墳墓が偉大な役割を果たしていたことを証明しているという。

F-d 聖なる女性たち
同書は、安息日が終わると、マグダラのマリア、ヤコブの母マリア、そしてサロメは、キリストの遺体に防腐処理をしに行くために香水を買った。そして週初めの早朝、日の出とともに墓に行った。
主の天使が天から降りてきて、石を転がしてその上に座った。彼は稲妻のように見え、彼の服は雪のように白かった。警備員たちは恐怖に打ちのめされ、まるで死んだような状態になった。
天使は女性たちにこう言った「恐れることはない。あなた方が十字架にかけられたキリストを探していることは知っています。彼がここにいるのは、彼が言ったように、復活したからではありません。キリストが休んだ場所を見に来てください。それから急いで行って、弟子たちにこう言いなさい。キリストはあなたより先にガリラヤに行きます。そこであなたはキリストに会うでしょう」と。
女性たちは喜びながらすぐに墓を出て、弟子たちに知らせを伝えに走ったという。


ということが内陣の六つの柱頭彫刻のそれぞれ四面に浮彫されていた。
この聖堂には他の柱頭にもロマネスクらしい柱頭彫刻が残されているので、それは次回。


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参考文献
「世界歴史の旅 フランス・ロマネスク」 饗庭孝男 1999年 山川出版社
「ÉGLISE ROMANE DE SAINT-NECTAIRE  DE L'OMBRE À LA LUMIÈRE」2009