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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2023/10/17

オルシヴァル ノートルダムバジリカ聖堂 Basilique de la Notre-Dame d'Orcival モディヨンと柱頭彫刻


オルシヴァルのノートルダム聖堂 Basilique Notre-Dame d'Orcival
4つの放射状祭室と、翼廊に一つずつ小祭室という組み合わせで、幅は狭いが重厚感がある。

翼廊の上にある鐘楼の大きな土台のようなのがマッシフ・バーロン Massif barlong。
窓ガラスのある半円アーチが南北に二つずつ、その間は半円アーチが五つ並んでいて、それぞれに柱頭が二つずつある。

鐘楼は二階建ての八角形で、各面、各階に開口部がある。

八角形の二層の鐘楼は、外側のアーチがロマネスク建築では少ない尖頭アーチ、それに反して内側のアーチは浅い半円という中途半端な形。
柱頭は簡素だが力強い素弁のアカンサスの葉。素弁とは、軒丸瓦の蓮弁に文様などのないものをいうが、このような葉の切り込みも、レース編みのような装飾もないアカンサスの葉を見ていて、その言葉が思い浮かんだ。
素弁蓮華文の軒丸瓦についてはこちら


後陣はブリウドのサンジュリアン聖堂と比べると高さはがないが、面積的には小さいながら、ここでも簡素な色石のモザイクの装飾がある。

軒は簡素な歯形装飾、下階の軒はそれを小さくし、交互に並べて石畳文様にしている。
モディヨン(軒下飾り)は同じ形のものが並んでいるように見えるが、右下の横向きの二つを比べるとそれぞれ異なっていることが分かった。

柱頭は少しずつ異なってはいるが、あまり開かないアカンサスの葉。



モディヨンは見ようによっては鼻の高い人の顔のようだし、横から見ると巻物がカールしていて髪のよう。

柱頭はアカンサス由来の葉文様

アカンサスの葉にはヴァリエーションがある。



南翼廊

南翼廊小祭室の柱頭彫刻も開かない素弁のアカンサス

三角破風(ペディメント フランス語ではフロントン fronton)には内部を色石のモザイクによる十字架がある。
文様は他の聖堂でも見られる六弁花文または六点星。これをつくった工人は花をイメージしたのか、それともモサラベ(イスラーム支配下のスペインで、イスラーム美術も採り入れた独自のキリスト教美術 Mozarabé)の幾何学文様か。

大きな半円アーチの柱頭は後陣のものよりずっと凝っていてレース編みのよう。

堂内の柱頭彫刻
『フランス・ロマネスク』は、柱頭彫刻は天上のエルサレムがあり、教会がそのシンボルのように立っている。
内陣のアーケードの所のものは天使がトランペットを鳴らしており、最後の審判の様相であり、槍をもった人の姿もある。それ以外のものとしては葉文様もあり、その間に鳥たちが身をひそめている。
周歩回廊にはケンタウロスや人魚、鳥、半鷲半獅子、魚などがおなじみの姿で並んでいる。1人の悪魔が罪人に馬乗りになっているという。
柱頭彫刻を一番見たかったはずなのに、何故かいろいろと見逃してしまった。

内陣及び周歩廊

左から四つの柱頭彫刻は、ほぼアカンサス由来の葉文様

中には組紐文を取り入れたものもある


右から四つの柱頭彫刻もアカンサス由来の葉文様



周歩廊の複合柱の柱頭彫刻
アカンサス由来の葉文様もあるが、人の登場するものもある。

その右側面
両角にアカンサスの葉で顔を隠したような人物がいて、二人の間に髭の人物がいるが、これが最後の審判だろうか。

素弁のアカンサスは葉先に反りがある。上の花の蕾のようなものは、笑顔に見えなくもない。


素弁のアカンサス。上の祖型のような素朴さがいい。


素弁のアカンサスから両手にアカンサスの葉を掲げた人が顔を出している。


かと思えば、アカンサスの葉らしい表現で透彫かと思うほど丁寧な浮彫なのに、何故かアカンサスの茎から出た茎が斜めに伸びて、葉をまとめているようなものも。


これもアカンサスの葉なのだろうか。その先のまるいものはそれぞれ蕾のもりかな。古代ギリシアのコリント式柱頭も蕾または花が丸く表現されているので、その伝統といえばそれまでだが、実際は巨大な花穂である。


かなり装飾的なアカンサスの葉の上に出ているのは蕾なのか実なのか。検索してみると、アカンサスにも実(または種)ができるが、伸びた花穂の一つ一つが実になるので、こんにブドウのような実ではない。
おっとその隣にケンタウロスが!

右の柱頭はケンタウロスではなく、何かに乗っている人。


ここには羊に乗る人がいたり、セイレン(人魚)がいたり。


グリフォンが坏から水を飲んでいたり、

レース編みのようなアカンサスの隣には猛禽が待ち構えている。


でもやっぱりこの聖堂はアカンサスの葉だらけ。素弁のアカンサスとこんなレース編みのようなアカンサスでは、同一工房でも、工人は別々だっただろう。


最後に、見つけられなかった柱頭彫刻を『異形のロマネスク』のイラストで。
左:罪人を槍で攻撃する悪魔 右:ライオンを殺すサムソン
オルシヴァル、ノートルダム聖堂の柱頭彫刻 『異形のロマネスク』より




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参考文献 
「世界歴史の旅 フランス・ロマネス」 饗庭孝男 1999年 山川出版社
「The Treasures of Romanesque Auvergne」 Text :Noël Graveline Photographs: Francis Debaisieux Design Mireille Debaisieux  2010年 Édition DEBAISIEUX 
「異形のロマネスク」 ユルギス・バルトルシャイティス 馬杉宗夫訳 2009年 講談社