翼廊の上にある鐘楼の大きな土台のようなのがマッシフ・バーロン Massif barlong。
窓ガラスのある半円アーチが南北に二つずつ、その間は半円アーチが五つ並んでいて、それぞれに柱頭が二つずつある。
八角形の二層の鐘楼は、外側のアーチがロマネスク建築では少ない尖頭アーチ、それに反して内側のアーチは浅い半円という中途半端な形。
柱頭は簡素だが力強い素弁のアカンサスの葉。素弁とは、軒丸瓦の蓮弁に文様などのないものをいうが、このような葉の切り込みも、レース編みのような装飾もないアカンサスの葉を見ていて、その言葉が思い浮かんだ。
素弁蓮華文の軒丸瓦についてはこちら
後陣はブリウドのサンジュリアン聖堂と比べると高さはがないが、面積的には小さいながら、ここでも簡素な色石のモザイクの装飾がある。
軒は簡素な歯形装飾、下階の軒はそれを小さくし、交互に並べて石畳文様にしている。
モディヨンは見ようによっては鼻の高い人の顔のようだし、横から見ると巻物がカールしていて髪のよう。
南翼廊
文様は他の聖堂でも見られる六弁花文または六点星。これをつくった工人は花をイメージしたのか、それともモサラベ(イスラーム支配下のスペインで、イスラーム美術も採り入れた独自のキリスト教美術 Mozarabé)の幾何学文様か。
『フランス・ロマネスク』は、柱頭彫刻は天上のエルサレムがあり、教会がそのシンボルのように立っている。
内陣のアーケードの所のものは天使がトランペットを鳴らしており、最後の審判の様相であり、槍をもった人の姿もある。それ以外のものとしては葉文様もあり、その間に鳥たちが身をひそめている。
周歩回廊にはケンタウロスや人魚、鳥、半鷲半獅子、魚などがおなじみの姿で並んでいる。1人の悪魔が罪人に馬乗りになっているという。
柱頭彫刻を一番見たかったはずなのに、何故かいろいろと見逃してしまった。
内陣及び周歩廊
アカンサス由来の葉文様もあるが、人の登場するものもある。
両角にアカンサスの葉で顔を隠したような人物がいて、二人の間に髭の人物がいるが、これが最後の審判だろうか。
素弁のアカンサスは葉先に反りがある。上の花の蕾のようなものは、笑顔に見えなくもない。
素弁のアカンサス。上の祖型のような素朴さがいい。
素弁のアカンサスから両手にアカンサスの葉を掲げた人が顔を出している。
かと思えば、アカンサスの葉らしい表現で透彫かと思うほど丁寧な浮彫なのに、何故かアカンサスの茎から出た茎が斜めに伸びて、葉をまとめているようなものも。
これもアカンサスの葉なのだろうか。その先のまるいものはそれぞれ蕾のもりかな。古代ギリシアのコリント式柱頭も蕾または花が丸く表現されているので、その伝統といえばそれまでだが、実際は巨大な花穂である。
かなり装飾的なアカンサスの葉の上に出ているのは蕾なのか実なのか。検索してみると、アカンサスにも実(または種)ができるが、伸びた花穂の一つ一つが実になるので、こんにブドウのような実ではない。
おっとその隣にケンタウロスが!
右の柱頭はケンタウロスではなく、何かに乗っている人。
ここには羊に乗る人がいたり、セイレン(人魚)がいたり。
グリフォンが坏から水を飲んでいたり、
レース編みのようなアカンサスの隣には猛禽が待ち構えている。
でもやっぱりこの聖堂はアカンサスの葉だらけ。素弁のアカンサスとこんなレース編みのようなアカンサスでは、同一工房でも、工人は別々だっただろう。
グリフォンが坏から水を飲んでいたり、
最後に、見つけられなかった柱頭彫刻を『異形のロマネスク』のイラストで。
左:罪人を槍で攻撃する悪魔 右:ライオンを殺すサムソン
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参考文献
「世界歴史の旅 フランス・ロマネス」 饗庭孝男 1999年 山川出版社