お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2022/02/04

'21日本のガラス展3


4室目へと通る通路の右側の壁にぽつんと一つの展示スペースが。
この細かなモザイクガラスの作品は八木洋子の作品に違いない。


どうしても回りのものが映り込んでしまうので、


図録より。

ここから 八木洋子氏 フュージング・宙吹き・研磨・鉄ベース 高さ41.5㎝ 幅30㎝ 奥行29㎝

コメント:私の製法だから生み出すことのできる文様の流れと空間を含有するこの作品が、

     この閉塞感に満ちた今日を生きる自分を、先へ連れて行ってくれることを念じて

八木洋子氏作ここから 『'21日本のガラス展』図録より 

八木氏の作品は奈良きのわ(閉店して横浜に新装開店された)で一度だけ個展に寄せていただいたことがある。どれもとても緻密な作品だった。
それについてはこちら

その時は大きな飾り皿や壺から小さな装身具まで出展されていた。で、今回の作品はオブジェ? ランプシェードでもないのかな?
八木氏ならではのとても細かなムリーニ(断面に同一の図柄が現れる金太郎飴状態のパーツのこと。薄切りにしたムリーニを板状に並べ、吹きガラスで成形したり、フュージング、スランピング技法で成形する場合もある 『'21日本のガラス展』図録より)、いったい何種類あるのだろう。

頂部には6弁の花、いや花弁3枚に萼3枚のニッコウキスゲのような花の類いだろうか。おしべやめしべまでもある。その回りに白いレースのようなものが何段にも配されて。


かがみ込んで、その内側を撮影(高いところからライトが当てられている)


幾何学文もあるなかに、顔のようなものな、花のようなものも




やっと4番目の展示室へ。

田上惠美子氏の作品はいずこ?


見逃したのかな?と心配になってきた😣



とりあえず左の低いケースからみていくことにした。

光の遊ぶ街から 室伸一氏 キルンキャスト・研磨 高さ17㎝ 幅42.5㎝ 奥行42.5㎝

コメント:ガラスは光を通す

     ガラスは光を映す

     ガラスは光を分ける

     ガラスは光を広げる

     ガラスと光は物語を創る


レイキャビクのハットルグリムス教会を思い起こしたこの建物。

壁面や屋根も面白い。その上この厚み


続くケースにやっと田上惠美子氏の作品を発見🤩

空が降った日 田上恵美子氏 バーナーワーク・キルンワーク 高さ10㎝ 幅45㎝ 奥行40㎝

コメント:固体と液体を自由に行き来するガラス

     有機的存在と無機的存在の重なり

     屈折、反射、透過によってあらわれる現(うつつ)の儚さ 


スマホで写すと光の帯が出てしまうので、今回はデジカメの写真から。

じっくり魅入っていると、どれが虚像でどれが実像なのか分からなくなってしまう😵



一番奥の散華は直方体ガラスの裏に貼り付いているし、またいでいるのも


スマートフォンの方がクリアに撮影できるが、柔らかな色目が出せない

ガラスキューブの間にも降った空から落下した散華は入り込んでいる。

もっと低い位置からと思ってしゃがんで写したけれど、やっぱり本来の色ではない。
高さがあって、四方から見ることが出来る展示ケースで見たかった🤨

 

May Green マーナー 美恵子氏 キルンキャスト 高さ12㎝ 幅9㎝ 奥行5.5㎝/高さ12.5㎝ 幅26.5㎝ 奥行4㎝

コメント:5月に入ると木々の緑はいっそう深みを増して行きます。

     その緑の中に吸い込まれるようにしばし身を置くと浄化されるような気がします。


青い地球と褶曲する地層に見えるのは、私だけかも。



うねりの連作より 「波濤」 柴崎信太郎氏 吹き・カット・研磨・エングレーヴィング 高さ18㎝ 幅50㎝ 奥行20㎝
コメント:海、穏やかな海、荒れ狂う海、海はいろんな表情を魅せる。
     海はそれを波として表現する。
     同じ波はない。その一瞬のうねりから「海立」「氾濫」「波濤」の3部作を制作。

エングレーヴィングについて同展図録は、小さな金属製の円盤(5-10㎜)に、油で練った金剛砂などの研磨剤をつけながら回転させてガラス面を削り加飾する方法。繊細な浮き彫り表現が可能な方法という。

彫り込まれたところよりも、線彫りのような細長いものに波濤の勢いを感じる。



白々明けの朝露植物 河野千種氏 ランプワーク 高さ16㎝ 幅18㎝ 奥行10㎝/高さ20㎝ 幅18㎝ 奥行11㎝

コメント:薄暗い早朝、朝露を纏った植物は繊細で瑞々しく、

     昼間感じる美しさとは違う美しさがある。

     又どこか奇怪で妖しい。夜と朝の境の妖しく美しい世界を作品にする。


砂漠に住む小さな生き物が、自分の体に付いた朝露で水分補給しているようにも見える。



抜け感 山下 千鶴子氏 フュージング・スランピング 高さ10㎝ 幅25㎝ 奥行25㎝

コメント:『抜け感』 ファッション業界で誕生した言葉です。

     硬い直線の不透明なフォーマルさの隙間に曲線を描くことで『抜け感』という

     イメージを表現しました。


曲線とはいえ、蔓草文様のように巻き蔓を出したりして、生命感がある。器壁にびっしりと並ぶ鋭角の割石のようなものに、蔓草が這い上っていきそう。


関係#45 馬上知加子氏 宙吹き 高さ92㎝ 幅18㎝ 奥行17.2㎝

コメント:以前から人の一生、人類のさまざまななりゆきをテーマにしている。

     今年もコロナにさまざまな自然及び人々との関係が続いています。

     それ等を良き方向に表現したい。


抹茶茶碗のよう。


この金箔は外側のもの。内側の轆轤目のように細く施されたガラスの線は、やがて太くなり、曲がって終わる。それが金箔と友に見込の景色となっている。



BOWL 「きらら」 山田輝雄氏 宙吹き・カット 高さ17㎝ 幅17㎝ 奥行17㎝

コメント:きらきら きらら きらきらら


浅いカット(切子)が器体全面に施されている。


球体の四分の一 袁方洲氏 キルンワーク 高さ22㎝ 幅60㎝ 奥行59㎝

コメント:無数の影が積み重なり、徐々に立体として空間に現れ、

     視覚的でしか認識されなかった影は触覚も用いて認識できるようになる。

     そのような影に対する独自の認識から生まれた作品である。



沸々と湧き出た溶岩が冷えて黒くなっていくのを見ているよう。


かけがえのないもの 上山俊一氏 平面研削研磨・カット・ダイクロ加工(蒸着)・キルンワ-ク 高さ20㎝ 幅20㎝ 奥行20㎝

コメント:多種多様・多彩〜魅力いっぱい、 奇跡の惑星


横から見ると丸い管の下半に色があるだけだが、

上から見るととても賑やか



ケトル 新倉晴比古氏 キャスト・スラッピング・研磨・吹き・接着 高さ48.5㎝ 幅58.5㎝ 奥行52㎝

コメント:日常的な物をスケールアップすることで視野が変わったり、

     不思議感覚を味わうことができる。


円錐形のケトルは底が玉縁のように出っ張っていて、とても安定感がある。

青いガラスの中に金箔や銀箔が閉じ込められて、さまざまな色彩を醸し出している。



紬-円窓の景 鍋田尚男氏 フュージング・サギング・ホットワーク・コールドワーク 高さ15㎝ 幅60㎝ 奥行50㎝

コメント:色とりどりの不透明と透明なガラスのパーツを組み上げていくモザイクガラスで

     「日本の伝統的な文様」や「間」のデザインで和を表現しています。


サギングはスランピングと同じで、電気炉の中で、加熱することにより型や或は自重で、ガラスを平面から立体に変形させる方法(同展図録より)。

鍋田氏の「パーツ」は、私の想像をはるかに超えた巨大なものなのかも。


[小文間の自然]植物の形 2021-1 藤原信幸氏 キルンワーク 高さ25㎝ 幅60㎝ 奥行30㎝

コメント:現在制作しているスタジオのある 「小文間」という場所から

     インスピレーションを受けて制作しているシリーズ。

     溶融したガラスの動きを生かし、主に植物がモチーフになっています。


大きな葉っぱが燃えたあとのような印象を受けた。



孔雀 古池由輝雄氏 宙吹き・キャスティング 高さ50㎝ 幅45㎝ 奥行20㎝

コメント:孔雀の持つ華麗な羽は戦う武器、

     一枚の奇抜な羽で闘争心と優雅さ見せたい。


扇のような尾羽。扇子でいえば中骨の部分が金の斜格子になっている。


たてしまなGYO 谷祥一氏 溶着・ 研磨・金属加工 高さ39㎝ 幅34㎝ 奥行7㎝

コメント:制作するとき、人と接するとき何かとよこしまな思いがでてくる。

     たてしまな題名をつけてもよこしまな考えは生じている。


私には頂部の水色は波打つ海面で、浅い海で青いネコザメが泳いでいるように見えます。





Water Moon 池本美和氏 宙吹き 高さ38㎝ 幅40㎝ 奥行38㎝

コメント:生命の源となる水と光と影の濃淡がおりなす現象に、主眼を置く制作を続けています。


他の作品も映り込んでしまって、作品の濃淡が分かりにくい。

でも曲面の加減や、流れ落ちる無職透明なガラスの曲線に泡が入っていて、流動感がある。



波光 山田えい子氏 宙吹き・被せガラス・サンドブラスト 高さ75㎝ 幅28㎝ 奥行28㎝

コメント:静かなる波紋が気流となり天空に掛け昇る・・・永遠の輪廻流転を表現した。


被せガラスについて同展図録は、内側または外側の全体あるいは一部に一層、 多層の異なる色のガラスを被せる方法。内側に色を被ると内被せ、外側に色を被せると外被せと言うという。

表面に凹凸がありそうでない。この曲線の濃淡はどのようにできるのだろう。



追憶 西悦子氏 パート・ド・ヴェール 高さ23㎝ 幅40㎝ 奥行38㎝

コメント:50年記念展で、私の制作意図の3つの起点

     ローマンガラス・パリの繊細なガラス・透ける美しい布で

     誕生した「レースガラス」を35年後、今の私が製作してみたかった。


レースガラスについて同展図録は、細く引いた色ガラス棒(ケイン)を何本か並べ、透明なガラスに巻き取り熱で熔かし、ねじって引っ張りレース状のケインを作る。それを利用して装飾する方法という。
透彫のような作品をパート・ド・ヴェールでつくれるとは。


flower バスケット 安田泰三氏 ホットワーク・フュージング・スランピング 高さ17㎝ 幅49.5㎝ 奥行49.5㎝

コメント:モザイクガラスを積み重ね、花をイメージした器を制作しました。


口縁部から上半分の白く見えるガラス
円筒形のピースには何本かの白い線が通っている。熔着してもその形は変わっていない。

色のあるガラスピースの真ん中には白いガラスが入っている。



日常生活ではコップなどの食器で馴染みのガラス。そんなガラスが、創作作家の手に掛かると、こんなにもいろんなものを創ることができるのかという驚きと、非日常に浸れる「'21日本のガラス展」でした。

見落とした作品もあっただろうし、ピントの合わない作品もあったので、再び出掛けて楽しみたい。


関連項目

参考文献
「'21日本のガラス展」図録 '21日本のガラス展実行委員会編集 2021年 日本ガラス工芸協会

お勧めの1冊
「ガラス工芸家100人 現代日本の精鋭たち」 別冊炎芸術 2021年 阿部出版株式会社