お知らせ

忘れへんうちに 旅編では、南イタリアの旅を再開しました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2022/01/28

'21日本のガラス展2


2室目の続きは細長い空間。

ここでは幾つかの展示ケースが並んでいた。

右向こうは階段になっていて、その手前に森陶岳氏作備前大甕が展示されている。
ずっと以前、森陶岳氏が巨大な壺を制作している番組を見たことがあるが、その頃のものかな? もっと大きな甕だった気もするのだが・・・と近づいていった。やはり大甕だった。

備前大甕 森陶岳作 清水公照絵付け 高さ120㎝ 最大径90㎝ 重量200㎏

説明パネルより

長さ53mの登り窯に平成11年1月4日に窯入れし、63日間焚き続けられ3月8日に火止めし、その後冷却期間をおいて5月4日に窯出しされたものです。

平成11年8月25日に森陶岳氏のご好意により清水公照師の故郷である姫路市に寄贈を受けました。また、この作品は公照師最後の創作活動での作品です。


現岡山県瀬戸内市牛窓町長浜 平成8年5月に清水公照師が森陶岳氏の寒風の窯(岡山県邑久郡牛窓町長浜)を訪れ、創作された作品です。
奥が森陶岳氏

大甕には線描きされた山の文様と、制作されました日付平成8年5月吉日と刻まれています。




光あふれて 上島あい子氏 ソリッドワーク・切断・研磨・接着 高さ37㎝ 幅26㎝ 奥行27㎝

コメント:こんなコロナ禍が続いたりとか、 気分の暗い時にこそ光あふれる生命感を花束にして送る。


ソリッドワークについて同展図録は、溶けているガラスを竿にとり、 息を吹き込まずに塊の状態で成形する方法という。

鮮やかな色の花束を回り込んで見入っていた。ふと視線をずらせると、外の鯱瓦や鴟尾に並ぶように、この花束が展示されているような気がしてきた。

左:姫路城大天守の鯱瓦(復元) 
右:多田廃寺 神崎郡福崎町出土 鬼師・小林平一造
多田廃寺というのは知らなかったが、鴟尾の形から、かなり古い時期に建てられた寺院のよう。中田CG工房のCG 多田廃寺によると、薬師寺様式で白鳳時代(7世紀後半)に創建され、「貞観10年(868)の播磨地震(山崎断層を震源とする地震) により、国府や諸寺の堂塔みなことごとく崩れたという。


反対側には横長の作品が並ぶ。


月と船旅を 中川晃氏 コールドキャスト・着彩・接着 高さ25.5㎝ 幅44㎝ 奥行14.5㎝ 

コメント:作品を見る人がつい会話してしまう

     そこから物語が始まる

     そんな空間が生まれたらいいなぁ〜


コールドキャスティングについて同展図録は、耐火材で作られた型の中にガラスを詰め電気炉の中で溶解させて成形する方法という。

白い人物が三日月の前後にいる。偶然下階の清水公照氏の泥仏群が写ってにぎやかに。


揺らぎ あないまみ氏 接着・研磨 高さ2㎝ 幅53㎝ 奥行28.5㎝
コメント:鏡と板ガラスを組み合わせ、削ることによって形を変化させていく。 
     作品に映り込む周りの風景は歪み、いつもとは異なった世界へと鑑賞者を誘う。

照明の光がガラスに入ってしまうのがいやだったが、映り込むことを意図した作品だった。 

接着について同展図録は、シリコンやエポキシ系、または紫外線によって硬化する接着剤などを用いて、ガラスどうしを接着する技法という。 
どの辺りが接着された箇所なのだろう。   



雲水-1 鄭然暻氏 キャスト・スランピング 高さ23㎝ 幅37㎝ 奥行30㎝

コメント:色ガラスの変色組み合わせを利用して水蒸気と夕陽が空で混じったイメージを表

     現した。


ラフレシアのような大きな花に見える。



個。個。 下嶋理依子氏 キルンワーク 高さ33㎝ 幅55㎝ 奥行20㎝

コメント:色が違っても、形が違っても、大きさが違っても、 皆同じ人型ボトルなんです。


キルンワークについて同展図録は、(主に電気炉)でガラスを加熱して成形する技法の総称。 キャスティング、 フュージング、 スランピング、 パート・ド・ヴェールなどの技法があるという。

人型ボトル? 金属が使ってあるので、鳥形のスタンドだと思っていた。

透明なガラスの中にいろんなムリーニ
が込められている。


やすらぎを感じる 吉田利一氏 スランピング 高さ18㎝ 幅50㎝ 径50㎝  
コメント:癒やしやすらぎ安心ゆるやかな流れ・・・。

スランピングについて同展図録は、加熱することにより型や或は自重で、ガラスを平面から立体に変形させる方法という。
型吹きガラスだと思っていたが、スランピングだった。スランピングは古代 ガラス碗の製作に用いられた技法でもあるが、こんなに大きなものも作ることができるのだ。薄い器面のゆらぎに和む。


キューブ・キューブ・キューブ 佐藤万里子氏 キルンキャスト・サンドブラスト 高さ5㎝ 幅5㎝ 奥行5㎝ 100個
コメント:机上のインスタレーション。 観る人が(5×5×5)㎝のキューブを使って自由に
     構成する。 
     ガラスの重量・質感・透明・不透明感などを体感する。

図録には高く積まれた写真が記載されている。
佐藤万里子 キューブ・キューブ・キューブ 『'21日本のガラス展』図録より

一つ一つにいろんな模様が施されている。面取りされているので扱い易そう。


R-XⅣ 大木春菜氏 ホットワーク・サンドブラスト 高さ21㎝ 幅32㎝ 奥行19㎝

コメント:吹きガラスの技法で素材を扱っていると、時にその動きから意思や命のようなも

     のを感じる。

     熱を受け、揺らぎ、形を変えゆくガラスの様子に注目して制作を行なった。


なんとも軟らかくとらえどころのない形。これがガラスでできているとは。白い作品だが、暗い照明のために、こんな風に写ってしまった。


記憶の陰 多田えり佳氏 キルンキャスト 高さ55㎝ 幅60㎝ 奥行60㎝ 

コメント:生命が誕生し新しい記憶が巡り始め、時の流れや感情の持ち用によって変化し、

     いずれ記憶は消え去ってしまう。

     事物をガラスで形に興し半永久の記憶として留めることが制作の目的である。


記憶の陰に私の陰を重ねてみました😅


ケアン 上野ツカサ氏 キルンワーク・研磨・接着 高さ85㎝ 幅25㎝ 奥行25㎝

コメント:イリデセントストーンのシリーズの モニュメント「ケアン」は山などで見られる

     積み石をイメージして制作しました。


ケアンは英語でケルンがドイツ語やね。一つ一つの中に羽根のようなものが見えるのは・・・?


3室目




なんと、目の前に藤田喬平氏の作品が。
同展図録に西悅子氏の文があった。
藤田喬平氏(1921-2004)は中学生の頃にガラスを美しいと思い、東京美術学校工芸科彫金部で学び、彫金から転向し、ガラスを素材とする作品を制作するに至ったと聞いている。またガラスは制作過程で金工より結果が早く出て、ご自身の性格と合っていたのも理由だと話されている。日本のガラス作家が横の繋がりを求めて、1972年に「日本ガラス工芸協会」が立ち上がりました。氏は創立メンバーのひとりであり、協会や日本のガラス作家の為にご尽力され、 日本ガラス工芸協会唯一の名誉会長であった。氏の言葉として「人の上には天使が沢山飛んでいる。誰にでも天使は止まってくれる。 しかし常にアンテナを 磨かなければ、止まっても気が付かない人が多い」 と。 文化功労者として顕彰を受け、文化勲章受章後もたゆまない努力を続けられた作家である。

金箔・銀箔で覆われている蓋物の「飾筥」2点
コメント:学生時代より琳派芸術に憧れていた
     私はガラスで筥(はこ) を作ってみたいと常々思っていた。
     今、宗達、光琳が生きていたら、当時ガラス素材があったならと思いつつ制作を
     始めた・・

飾筥「琳派」 型吹き・酸腐蝕・銀覆輪 高さ25㎝ 幅24㎝ 奥行21㎝

酸腐蝕について同展図録は、ワックスやラッカーなど防酸保護膜でマスキング後、フッ化水素酸と硫酸の混合液(クリーム状もある)に浸し、酸に浸された部分が艶消しになることを応用して文様などを描きだす方法という。

蓋物の場合、模様は蓋と身で続いているものだが・・・

蓋は大胆に対角で金銀を分けているが、一隅に反対の色を置いている。


飾筥「醍醐」 型吹き・酸腐蝕・銀覆輪 高さ16㎝ 幅24㎝ 奥行24㎝ 

写し方のせいか、蓋の方が身よりも高さがある。こちらは模様が合っているかな?

印籠造りで甲盛りの蓋、合わせ口には銀の覆輪。


頂部には金箔を厚く重ね、側面は薄くして箔のちぢれを楽しんでいる。



湧紫泉 玉田恭子氏 宙吹き・キルンワーク・ラスター彩 高さ26㎝ 幅30㎝ 奥行23㎝

コメント:流れる時間、切り取られた空間、まつわる心情 浮遊し、渦巻き、立ち昇り


筆で書かれた紙を束ねたように見えたので、文字の見える側に近づくと文字が消えてしまう。そんな捉えどころのない作品だった。でも、写真にはちゃんとかな書きの文章が写っている。どう見誤ったのだろう。

ちょっと見る位置を変えると現れる文字、消えていく文字。


料紙の淡い模様まで表現されているし、紙の両端が青の襲(かさね)になっているのもすごい。

色がくっきりしているので細い短冊に見えるが、正面から見る文字は細い隅書き。

内側のガラスの曲面は文字だと分かる。

こうして上から見ると、ガラスの中に文字が書いてあるように見える。

しかし、左上部は上から見ても文字には見えない。


文字の消失のヒントは幅の狭い短冊状の色の襲ではないかな。
短冊状のガラス板に文字を書き、それが表面ではなく、側面に並べてあるのでは。
それを曲面に仕上げてあるので、見る方向で、色の短冊も幅のあるものや、線に近いものに変化していく。それで文字の各行も、現れたり線状になったりと変化していくのではないだろうか。
散らした銀砂子も目眩ましかも。


アンナチュラル 鈴木剛史氏 ガラスカット・積層接着 高さ36㎝ 幅34㎝ 奥行26㎝

コメント:ガラスだからこそできるカタチを表現してみました。


薄いガラス板を重ねているのかなと見ていたところ、

広いガラス板を途中に挟んで、内側のものを置いているんですよと、教えてくれる人があった。その板が少しだけわかる写真となった つもり。



森の主 栗田保久氏 鋳込み・研磨・接着 高さ95㎝ 幅29㎝ 奥行6.6㎝ 

コメント:深い森に息づく鳥たち。 これはそのひとコマ。 澄んだ空気のなかで何を語る。


細長いガラス板を縦に繋いでいるのだろうか。そう見えるようにつくっているだけかも。

やっぱり薄い板を少しずつずらして接着していた。表面の切断跡?が揺らぎを醸し出している。



光輝 松田博氏 カット・手研磨 高さ15㎝ 幅15㎝ 奥行20㎝

コメント:古き縄文土器のフォルムにクリスタルガラスの輝き


カットの種類もたくさんありそう。



炎と水の城 白幡明氏 平面加工・切子・接着 高さ27.1㎝ 幅12.4㎝ 奥行12㎝

コメント:水と炎は私の永遠のテーマになり・・・刻る、磨く、それだけの生業。


直線と平らな面でできているようでいて、途中にゆらめきが見られる。これが炎の揺らぎか。


カットと泡が炎のゆらぎを醸し出している。



風の記憶 後藤かよ子氏 溶着・研磨 高さ25.5㎝ 幅53㎝ 奥行4.5㎝

コメント:時として風が心を強く揺さぶり通り抜ける。

     そのような時「自分」という存在に思いを馳せる。


小さめの石畳がほどよい間隔で並んでいる。


サンドブラストかと思って見ていたが、研磨とは。



孵化 山本佳子氏 パート・ド・ヴェール 高さ12.5㎝ 幅20㎝ 奥行15.5㎝

コメント:自然のかたちや繰り返されるパターンは命の循環や再生を想起させます。

     密やかな森のアレゴリーに思いをはせ、変化を予兆させる作品を生み出したいと

     願っています。


図録にはないが、木の枝が一緒に展示されている。その前に熟れた果物のような作品が。でも、タイトルは孵化。

これは大きな卵で、何かがここから出たあとなのだ。



クラインボトルによる絡合 村上達夫氏 ランプワーク 高さ24㎝ 幅32㎝ 奥行24㎝
コメント:メビウスの輪の立体版であるクラインボトルをデホルメしたクラインキューブ。
     表と裏がつながっている個、それらが多く絡合する現世。
     しかしながら光の下では、みな透けてみえる

一つ一つは独立しているので、あちこち位置を変えて楽しめそう。


森の中へ ホンムラモトゾウ氏 キルンキャスト・研磨 高さ30㎝ 幅50㎝ 奥行18㎝

コメント:森に行った時の記憶をもとに風になびく緑、木々の間から見えた空

     そんな情景をガラスに閉じ込めて・・・


高い針葉樹の森は暗い。上を見上げると、濃い緑の遠い向こうに青空が見えてほっとすることがある。


でも斜めから見ると驚く形だった。


歪みのカタチ 小牟禮尊人氏 キルンキャスティング 高さ30㎝ 幅45㎝ 奥行13㎝

コメント:作品の内部で生じる歪みを景色とした作品。


不透明な石のブロックに見えるが、図録では半透明で裏面のよう。展示の難しさや限界を示しているようだ。



生き返る 川井英世氏 キルンワーク・吹きガラス・ステンドグラス 高さ45㎝ 幅37㎝ 奥行7㎝

コメント:自身の再生、新生世界の実現を込め、更にガラスの念や有用性が拡大、発

     展することを願い、

     私はコントラクショングラスというコンセプトを根底に、作品を創造して

     行きたい。


本来教会の窓を飾ってきたステンドグラスは、外から見ると黒っぽくて色彩もわからないが、暗い教会の中に入ると、その鮮やかな色が外光に照らされて、神々しさを感じた。

ステンドグラスはかつて貧者の聖書と呼ばれた。文字を読めない信者たちは、小さな区画のキリスト伝の内容よりも、その溢れる色彩に天国を見たのではないかと思ったものだった。

そんなステンドグラスが置物になった。窓際に置いておくと、薄暗い部屋に色彩が映えるだろう。



蜘蛛 高橋時代氏 サンドブラスト 高さ40㎝ 幅20㎝ 奥行10㎝

コメント:くもの根気の良さ強さ 私にないそんな所に引かれて作製してみました


濃い緑に見えたが下は紫っぽい。

でも図録では緑。照明の加減で色まで変わってしまう。


金銀彩盛皿・銀彩アンティーク文盛皿 河上恭一郎氏 金銀彩焼付け・スランピング 各高さ2㎝ 幅82㎝ 奥行37㎝

コメント:昨今、家庭に於いてもパーティーが開かれる。そのニーズに応える為に制作しま
     した。

金銀彩盛皿
全体に霰文のような不定形な文様が鏤められ、縁に金・銀の幾何学模様が施されている。

銀彩アンティーク文盛皿
こちらは濁りのあるガラス皿に植物文様が施されているのだが、そこには小さな点々に銀彩が抜けている。着物地の江戸小紋を思い出した。


刻が流れて 山科昌子氏 サンドブラスト・スランピング 高さ55㎝ 幅55㎝ 奥行25㎝

コメント:ガラス造形に出会ってから40年近く経ちました。魅力的な素材ですが手強い相

     手です。

     ガラスと共に歩みながら、水が流れるように私の人生は流れて行きます。


曲面に斜格子があって、更にそこに部分的に矩形の穴があいている。


孤高頚長器 竹内洪氏  サンドブラスト 高さ72㎝ 幅18㎝ 奥行18㎝

コメント:透明ガラスに紫系空色生地を巻きとり、その上に黒色を施して長く成形。
     その生地に「鶴」を、サンドブラスト彫刻で仕上げた。


なんとも長い頚に一直線に伸びた幹


その上には巣がある。番いが戻るのを待っているのかな。




田上惠美子氏の作品はいずこ?

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関連項目
中田CG工房のCG 多田廃寺

参考文献
「'21日本のガラス展」図録 '21日本のガラス展実行委員会編集 2021年 日本ガラス工芸協会
「古代ガラスの技と美 現代作家による挑戦」 古代オリエント博物館・岡山市立オリエント美術館編 2001年 山川出版社

お勧めの1冊
「ガラス工芸家100人 現代日本の精鋭たち」 別冊炎芸術 2021年 阿部出版株式会社