ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2014/07/04
きのわに八木洋子氏のガラス展を見に行った
ときどき田上惠美子氏のガラス展が開催されるギャラリーきのわで、八木洋子氏の個展が開催されるというのを知り、あの緻密なモザイクガラスを見られるまたとないチャンスなので、奈良の学園前へと出掛けていった。
案内の葉書にもあった、大きな平たい盒の写真があったので、思わず近づいて撮ったのがこの写真、結局正面から写すのを忘れてしまった。
中に入るとまず目に入るのが南のコーナー。
その昔、田上惠美子氏の個展に八木氏が来られた時、小さなモザイクガラスのペンダントを着けられていて、その文様の細かさに驚いたのだが、こうやると向こうが見えるんですよと、光にかざして見せてもらうと、極小の色ガラスの隙間から向こうが見えたのにはもっと驚いた。
ギャラリー内には、その細密に作られたモザイク・ビーズ(と呼ぶのかな?)を緻密に並べて作られた大きな作品が並んでいる。
パソコンや葉書と実際の色目はかなり違っていた。それを写真に撮ると実際の色とは違ってしまう。その上それをパソコンに取り込んで見るとまた違う、ということで、何をしているのやら・・・
これだけの作品が一堂に並んだのは初めてらしいですと、店主の山本さん。
中央の大きな飾り皿
落ち着いた色目に鮮やかな赤がアクセントを付けている。
東のコーナー
各作品の傍に置かれたカードの所々に「ムリーニ」とあった。
ムリーニって何ですか?
こういう技法をアメリカではムリーニっていうんですよ
イタリア語ですよね
単数形はムリーナで、複数形がムリーニですね。アメリカ人はヨーロッパにコンプレクスを持っているので、ガラスの世界ではイタリア語を使うんです
私はといえばモザイクガラスで通していたが、今思い出してみると、ミルフィオリという言葉もあったような。「千の花」という意味のイタリア語で、ミッレ・フィオーリの方が原語に近いかも。
ところが、帰宅後以前の記事を読み返していて、八木氏に「ムリーニ」という言葉をすでに教えてもらっていたことがわかった。一体何を聞いているのだろう。
盒は右奥に置かれていた。
花の色もそうだが、青というものは、実際のようには写らない。かなり鮮やかなものになってしまった。
器体と蓋の質感が違った。器体の方が光沢があり、蓋は艶のない、マットな感じになっている。八木氏はそれは磨きの違いで、意図的に異なる風合いを目指したとのこと。
光りにかざすと全然違って見えるんですよ
せっかく大きな蓋を持ち上げて下さったにも関わらず、なんとピンボケ!
もっとましなカメラを持って来るのだった。この日は中之島の東洋陶磁美術館に立ち寄って来たので、図録を買うこと、美術館に荷物を預けた時用の小さなショルダーも入れているので、バッグにはカメラが収まらないこともあって、小さなデジカメを持って来たのだった。
それでも鮮やかさの違い、そして透ける部分は分かる。八木氏の作品は、細密なだけでなく、光を通すと色が鮮やかになるだけでなく、透明なガラスが挟まっているので、向こうが透けるのだ。
光を通すことで、各所に入った透明ガラスがその存在感を主張し始める。無色透明なもの、透明な色ガラス、そして透明ではないが白色のもの。それらが、大きさ、形それぞれに異なりながら、生き生きとしてくる。
玄関側から写し損ねたが、ショーウインドウに飾られていたのがこの作品。
パーツを組み合わせて作り上げた板を作るのは大きさに限界があります。それを円筒の透明ガラスに巻きつけて、底を別の文様の板を使ったので、この大きさになりました
この壺が一番大きいのだそう。それは底が別のガラスを使っているからだといって、持ち上げて見せて下さった。確かに別のムリーニの板が使われている。
内側をのぞき込むと、光を通してこんな風になる。
他の壺はショーウインドウの壺より一回り、いやもう少し小さかったかな。
底から口縁まで1枚の板で仕上げるとこれくらいの大きさが限界です。それに、大きな壺は研磨するときに重いので
そう言いながら、幾つかの作品の裏を見せて戴いた。
そこには中心から放射状に広がるモザイクガラスの別の顔があった。胴部のムリーニの膨らんだものとも異なっていたし、口縁から頸部にかけての文様の広がりとも違うものだった。
こんなにもガラスは伸びるものか。
尤も、よく伸びるガラスと、伸びないガラスがあるらしい。同じように見えても、ぼんやりした文様の箇所とくっきりした箇所があるのもそのせいらしい。その組み合わせで器に味わい深さが加味されていく。
深い色目の作品に混じって、異彩を放っているのがこの定窯の白磁のような牙白色の作品。
無地かなと思い、近づいて見ると、文様が浮かび上がってくる。
田上惠美子氏の個展案内の葉書のように、下に映る器体を意識して撮ってみたが、文様は写しきれませんでした。
編集すると文様というか、大小様々のムリーニの文様がわかった(実際には黒くはありません)。
最近まとめたギリシアの卍文にも見える。いや正確には卍ではない。ギリシア雷文の組み合わせとでもいうか・・・しかもその小さなものもあれば、正方形の中に無数の細い線で表したジグザグのようなものもあれば、似て非なるものもある。
このモノトーンの作品に、何種類の文様のビーズが嵌め込まれているのだろう。
これも光を通すと全然違って見えるんですよ
そう言いながら、暖色系の色の光を当てて見せて戴いた。
まさに八木ワールドに浸って幸せなひとときだった。
※ ギャラリー内及び作品は八木氏の許可を得て撮影しました。
→きのわでの八木洋子氏の個展2 ムリーニ
関連項目
きのわでの八木洋子氏の個展3
八木洋子氏のモザイクガラスにびっくり