ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2016/12/06
竹中大工道具館7 海外の建築と大工道具
解説を聞きながら常設展示を見学した。
日本の大工道具の展示の後に海外コーナーへ。
その中で巨大な木製の模型の前で止まって説明が始まった。
これはドイツの木骨造の模型です。ドイツ人の大工に造ってもらいました。よく見ると隙間があるでしょう。それが日本の大工との違いです。日本人は細部まできっちりと造りますが、ドイツ人は構造的に問題ない細部にはこだわりません。そんな時間があったら別のことをするという合理的な考えです。外側がこんな風に隙間があっても、内部はきっちりと造るんです。
なるほど。
木骨造壁部構造基本部模型 縮尺2/3 ホワイト・オーク(小楢)
同館の常設展示図録は、後背部の部分模型をドイツ人大工の手で製作。斧で表面加工を施して木栓で固定した。工法から忠実に再現という。
確かに隙間はあるし、木栓も出たまま。
エスリンゲン市庁舎の背面 ドイツ南部シュヴァーベン地方 15世紀
同書は、木骨造であり、ドイツでも現存最古のひとつ。
ヨーロッパでは古くから柱梁と頭貫を組み合わせ、間に石や煉瓦、土壁を詰めて耐力壁とする木骨造建築がつくられてきた。ハーフチンバーと呼ばれるイギリスで発展した構造は、各地に似た形式があり、木の軸組と漆喰の鮮やかなコントラストは日本でも馴染み深い建築である。なかでもドイツ南部の柱梁と筋違を組んで、高層化した建築が有名である。
木軸は石積基礎上に土台から組み上げるのに対して、墨付けと刻みは床上で仮組みして行う。蟻継ぎやホゾ指しで木を組み、木栓で固定する。上下階では水平材を渡り顎掛けで重ねており、通柱は使っていない。地産素材の特性を生かした合理的なデザインとなっているという。
テレビでは、よく木組みの建物とい言い方をしていて、フランス語のコロンバージュ(colombage)も使われる。
昔々、フランスの地方都市で木組みの建物を見かけた時、ヨーロッパって建物は石造りなのに、なんで木を外側に出して造るのだろうと不思議だった。石の外壁が剥がれたのかと思ったほどだった。
ドイツのエスリンゲンや、フランスのコルマールのように木組みの建物ばかりが並んでいるのではなく、石造りの町の中で木組みの建物を見つけた時の若き日の思い出。
そして解説員は木骨造の模型から向きを変えて、木材に斧を切り立てた状態で展示されているものを見て言った。
ヨーロッパ人は肉食なので、腕力がある。だから大工道具の柄が短いのです。日本人は力が弱いから、長い柄の道具を振り回して、遠心力で木を切っていました。
確かに斧の柄は短かった。
それについてはこちら
その斧の図版がないので、このような図版で代用。一番上の図版にはちらっと斧が見えています。
確かに日本の大工道具の柄は長いが、今まで長いと思ったことはなかった。こんなもんだろうと。それがヨーロッパの道具と比べて、納得できた。
また、エスリンゲンの木骨造の解説では、「墨付け」という言葉が出て来た。ヨーロッパでも墨壺があったのかと思ったら、常設展示図録にちゃんと図版があった。
隅掛道具
同書は、ヨーロッパでは、曲がった木の使用や階段の墨付けなど、高度な規矩術が発達した。捻れ材の使用には、仮想直線を想定して点と点をつなぎ、ホゾ穴は直線に並ぶようにする。そのため、レベル(Niveaux)や下げ振り(Fils à plomb)が重要な墨掛道具と考えられている。墨付けにはチョークラインと鉛筆が使われる。紐を巻くリールと染料入れがあり、留め機能を兼ねた糸通しを箱に突っ込んで色を付けるという。
日本ではピンと張った糸を指ではじくが、ヨーロッパではどんな風にするのか見てみたい。
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関連項目
竹中大工道具館5 道具で知る建築史
竹中大工道具館4 大木を板にする
竹中大工道具館3 大鋸(おが)の登場
竹中大工道具館2 大工道具の発達
竹中大工道具館1 古代の材木と大工道具
※参考文献
「竹中大工道具館 常設展示図録」 2014年 公益財団法人 竹中大工道具館
「竹中大工道具館NEWS 未来へつなぐ、匠の技と心 Vol.35」 2016年夏-秋