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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/07/14

ペルセポリス 使節団の献上品


使節団が運んでいるのはその国の特産品や動物、あるいはペルシアの王が要請した品だっただろう。
その工芸品について、それに類似した作品を挙げてみた。

① メディア人
壺・深鉢・アキナケス型短剣を持ってる。
深鉢は類似した作品が見つからなかったが、④ヘラートのアーリア人も似たような深鉢を運んでいる。

銀製アンフォラ アケメネス朝 高24.3径13.7㎝ ハマダーン州出土? イラン考古博物館蔵
『ペルシャ文明展図録』は、外見は両把手の付いた貯蔵用の器「アンフォラ」だが、底部には2つの注口があり、ここから内部の液体を注ぎ出していたことがわかる。すなわち、この作品の使用法はリュトンのそれであり、「アンフォラ形リュトン」と呼ぶこともできる。このようなアンフォラ形リュトンはペルセポリスの浮彫に表現されているばかりでなく、土製のものも存在することから、アケメネス朝時代に比較的一般的な容器であったと推定されるという。
リュトンならば蓋はなかったかな。頸の付け根に連珠が巡り、肩部は浅く水平な凹みが続いた下には鱗状の刻文、胴部には花弁状のものが巡る。
両把手も凝っている。上端は蛇が口を開いたようだが、下端は蛇の尾ではなく、人の足先のようだ。

アキナケス型短剣は、腰に提げるための紐まで描かれている。
聖樹と有翼神・動物文の剣と鞘覆い スキタイ(前7世紀末期) ロシア、クラスノダル地区ケレルメス1号墳出土 金・鉄 鞘覆い:長47.0㎝幅14.1㎝ 剣の柄:長15.5㎝ サンクト・ペテルブルグ、エルミタージュ美術館蔵
『世界美術大全集東洋編15中央アジア』は、鉄剣は柄と刃が一体になっており、鐔は蝶あるいは逆ハート形に近い形をしている。このような鐔をもつ剣をギリシアではアキナケスと呼ぶ。アキナケス剣は、いわゆるスキタイの三要素(動物文様、馬具、武器)の一つである武器のなかで、三翼鏃とともに本来スキタイ固有の要素と考えられ、スキタイ時代にはユーラシア草原地帯とその周辺の中国やイラン、ギリシアにも広まったという。
浮彫よりも時代が古いためか、浮彫に表されたアキナケス型短剣よりも長い。
紐はベルトに通して腰に提げていたのだろう。
鞘には前進する鳥グリフィンと弓を引いて前進する鳥グリフィンが交互に4対表されている(下図の矢印は同じ鳥グリフィン)。

アルメニア人
大きな双耳壺を持つ。その把手の上なは外側を振り返る鷲グリフィンが表されている。

アンフォラ型リュトン 前6-4世紀 ブルガリア、ドゥヴァンリ、タコヴァ墓出土 銀鍍金 高27口径13.4㎝ ソフィア考古博物館蔵
『世界美術大全集東洋編16』は、現在のブルガリア(トラキア)はかつてアケメネス朝の支配下に入ったことがあった。そのためか、アケメネス朝で制作されたと考えられる銀鍍金のアンフォラ型リュトンが出土した。これはペルセポリスの朝貢者の持つアンフォラ型リュトンに形態が酷似している。両把手は別造されたライオン型グリフォンであるが、この聖獣は内部の液体を守護する役目を持っていたと推定されている。
本体の部分は3段に分かれ、ギリシア風のパルメット文とロータス文が打ち出し技法で施され、鍍金されている。このような文様によって、このリュトンはギリシア系の職人が制作したものとわかる。もっとも下の段には縦溝(畝)が打ち出されており、アケメネス朝のリュトンではこの部分に縦溝ないし横溝を施すのが一般的であったという。 
獅子形把手付リュトン アケメネス朝(前6-5世紀) 土製 イラン、アゼルバイジャン州出土 岡山市立オリエント美術館蔵
土製のものもあった。こちらは底に注口がありそう。背後を振り返った形もあれば、正面を向いているものもある。
パルメット文やロータス文はないので、ペルシアの工人が製作したものかも。

リュディア人
アルメニア人の持つ双耳壺に似ているが、だいぶ小型の壺は縦溝がある。幅広の鉢ち腕輪も一対ずつ運んでいる。
⑪尖り帽子のサカ(スキタイ人)の持つ腕輪は動物の装飾は控えめ。

グリフォン装飾腕輪 アケメネス朝(前5-4世紀初) 金 径12.3㎝ タジキスタン南部出土オクサス遺宝 大英博物館蔵
『世界美術大全集東洋編15』は、輪の下部がややくびれているのはアケメネス朝の腕輪の特徴である。これと同じような輪の一部がくびれて両端にグリフォンがついた腕輪は、ペルセポリスの浮彫りで、シリアあるいはリュディアの使節が王への献上品としてもってきたものの一つに見られる。グリフォンの体のくぼみには石が象嵌されていたはずであるが残っていない。要素はすべてアケメネス朝のグリフォン図像表現の基準を満たしているという。
リュディア人が持っている腕輪も鷲グリフィンのようだが、互いにそっぽを向いているのと角がないという違いがある。
鴨装飾ブレスレット アケメネス朝(前6世紀中期-4世紀) 金、ラピスラズリ、トルコ石、縞瑪瑙、水晶、ガラスの練物 高11.7幅10.5厚2.4重197.4g MIHO MUSEUM蔵
グリフィンではないが、後ろを向いているのと、象嵌がよく残っているので。
MIHO MUSEUM南館図録』は、羽の細部を色の付いた素材で象嵌する方法は、アケメネス朝の工芸に及ぼしたエジプトの影響を示している。大王たちがエジプトの工匠を用いたことが知られているが、この技法が用いられているからといって、それを作った宝石細工師が必ずしもエジプト人であったというわけではない。というのも、この技法は、アケメネス朝の王朝様式の作品に広く用いられているからである。
アケメネス朝のブレスレットやトルク(首飾)にみられる動物のなかでは鴨はまれであるから、このモティーフは興味深い選択である。さらに、通常アケメネスの宝飾品はもっと細身のものが好まれるのに対し、作品は比較的頑丈な様相を呈している。
鳥の頭が後ろを振り返っている点や、頭や前軀だけではなく動物の全身を洗わしている点などは、確かにアケメネス朝の慣例を反映している。しかし、羽にみられる比較的写実的な配色や明暗の変化は、決してアケメネス朝美術の装飾規範に一致するものではないという。
エジプト人の使節団は上半分が欠落しているが、ひょっとしてこんな太いブレスレットを持っていたかも。

黄金の杯 アケメネス朝(前5世紀) 金 伝ハマダーン出土 高11.6径20.5㎝重1407g イラン国立博物館蔵
『世界美術大全集東洋編16』は、ダリウス1世やクセルクセス1世の銘(諸王の王)を口縁に沿って楔形文字で刻んだ金製の碗が偶然に発見されたといわれている。容器の内部には、円形の突起があるが、これはギリシアのフィアラ杯に見られるいわゆるオンファロス(臍、地球の中心)で、この凹形にくぼんだ部分に指を入れて碗を支えるのである。そして、この円形部分を中心にして、アッシリア由来の菊花文を打ち出し、その上に木の実(ドングリ)のような文様、太い眉毛のような文様、小さな涙のような文様を連続的に与えて装飾効果を出そうとしている。おそらく、イラン南西部に栄えたエラム新王国の金属工芸の伝統を受け継いだものであろうという。 

鉢を持つ者は多い。その中から、

バビロニア人
二人とも同じ形の鉢を左右に一つずつ持っている。
浅鉢 アケメネス朝期 銀製 径20㎝重400g ペルセポリス出土 イラン国立博物館蔵
THE AUTHORITATIVE GUIDE TO Persepolis』は、似た鉢がイラン人とバビロニア人の使節団に見られるというが、イラン人がどれを指すのかよくわからない。
中央に16弁の花ロゼット文、外側に26弁の菊の花状の稜のある花を表す。

アッシリア人
二人とも同じ形のフィアラ杯を持っている。口縁と胴部の境目に筋を入れる。後者のものは口縁部に縦溝があらしい。


パルティア人
前者は横溝のある鉢、後者はフィアラ杯だが口縁に縦溝がある。

今のところは以上です。また見つかれば追加します。

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関連項目
百柱の間扉口側壁浮彫

参考文献
「ペルシャ文明展 煌めく7000年の至宝 展図録」 2006年 朝日新聞社・東映
「世界美術大全集東洋編16 西アジア」 2000年 小学館
「世界美術大全集東洋編15 中央アジア」 1999年 小学館

「THE AUTHORITATIVE GUIDE TO Persepolis」 ALIREZA SHAPUR SHAHBAZI 2004年 SAFIRAN-MIRDASHTI PUBLICATION
「MIHO MUSEUM南館図録」 監修杉村棟 1997年 MIHO MUSEUM