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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2012/08/10

四神11 青龍・白虎・朱雀・玄武の組み合わせは前漢時代



前漢の陽陵には礼制建築の門の階段に四神の空心磚があった。前漢以降の四神をみても、墓廟に関連のある場所に表されるものだと思っていた。
ところが、同じ前漢時代の青銅器にも四神が表されていて、必ずしもそうとも言えないことがわかった。

四神温酒器 前漢(前2-前1世紀) 西安市大白楊村出土 高さ11.2㎝柄も含めた長さ24.1㎝幅10.7㎝ 青銅 西安市文物保護考古所蔵
『始皇帝と彩色兵馬俑展図録』は、長方形の台の上に青竜・朱雀・白虎・玄武の四神を配し、取っ手がひとつ付いた楕円形の炉があり、その炉の上部にさらに耳杯が載った構造である。下の炉で炭を焚き、上に乗っている耳杯を暖め、酒の燗をするためのものであるという。
これが明器(墓に副葬するために作った器物)だったのか、日用品だったのか。
『中国国宝展図録』は、耳杯とは、戦国時代から漢時代にかけて、酒の杯やおかずを盛る小皿として用いられた食器。上から見ると顔の両側に耳がついているような形であることからこの名がある。実用の耳杯の多くは漆器であった。本作は耳杯としても大型の部類に属しと、楚王陵出土の玉耳杯(長14.3)について解説しているので、この青銅製の温酒器は、ミニチュアの明器ではなく、実用品として作られたものだろう。
この四神温酒器も、陽陵羅経石遺跡出土の四神空心磚も、前漢時代の青龍や白虎には翼がないことを示している。

二十八宿が描かれた衣装箱 戦国時代(前5世紀) 湖北省随州市擂鼓墩曾公乙墓出土 長71㎝高40.5㎝幅47㎝ 湖北省博物館蔵
『図説中国文明史3春秋戦国』は、箱の蓋の中央には北斗七星が描かれ、その周りには順序よく二十八宿すべての名称と四象(二十八宿を4分割し、方角を表したもの)の蒼龍(東方)・白虎(西方)が描かれている。二十八宿と北斗七星の組み合わせは、中国の交河流域の気象独特のものであるという。
蓋の面積の限界から、四神の残り玄武と朱雀が描ききれなかったのか、それともまだ四神というものが完成していなかったのか。
戦国時代の青龍と白虎にも翼はなかった。

調べた限りでは、朱雀も玄武も出現が前漢時代のため、青龍・白虎・朱雀・玄武の組み合わせの四神は前漢時代に出来上がったことになる。

※参考文献
「世界美術大全集東洋編1 先史・殷・周」 2000年 小学館
「図説中国文明史3 春秋戦国 争覇する文明」 劉煒編著 2007年 創元社