ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2018/11/09
フィジャック、サンソヴール聖堂の柱頭・モディヨン
サンソヴール聖堂(Église Saint-Sauveur、救世主教会)の西ファサードは現在の修復なので教会の正面としては妙である。
扉口の上はタンパンでもないし、
そこには雲の上に十字架が僅かに面より浮き出ているだけ。これで救世主つまりキリストを表しているのだろうか。
LADEPECHE.frのサンソヴール聖堂の洞窟と呼ばれた扉口によると、1130-50年建造のロマネスク様式の教会は、1826-27年に取り壊された。コンク、モワサック、カオールあるいはスイヤックの教会のようにたくさんの彫刻のあるロマネスク様式の柱廊を想像して下さいと、フィジャック遺産局のプリシラ・マラギュティは言う。鐘楼まで40mの高さがあり、3のつ半円アーチの上に立っており、複合柱や円柱で支えられていた。その下の通路は暗く、「洞窟」と呼ばれていた。中には高さ14m幅12mの柱廊があり、トラ、ライオン、クマ、ドラゴン、カメなどの動物の浮彫で埋め尽くされていた。タンパンは四福音書記者に囲まれたキリストが表されていたという。
ロット県の土木局の技術者の報告書で柱廊の取り壊し計画が始まった。鐘楼の重みが建物を弱くしている。「何の役にも立たない。重厚すぎて、全く不快である」とされ、「洞窟」は消滅することとなった。1830年代はロマネスク様式よりゴシック様式の方が人気があったので、価値のないものと判断された。
柱廊には現在8つの柱頭しか残っていない。1つはカルム(Carmes)教会に、4つはサンソヴール聖堂に、1個はニューヨークのクロイスターズ博物館で見ることができる。のこる2つは交差部で再利用されている。
「柱頭はファサードに幾つか残っている。女アトラス、様式化された葉飾りと組み合わされた幾何学模様、そしてロマネスク様式では重要な動物。動物の行列はカレナックの教会のようで、カンタル県のモーリアックのように、円柱はライオンかヒョウの形の台座に据えられている。想像でしかないが、神秘的なままで、それぞれが想像をふくらませる」という。
柱廊に置かれた柱頭は逆さまに置かれ聖水盤の台にされている。
戻してみると、2段のアカンサスの葉に蔓草が配置され、四隅に張り出した渦巻の間から人物が出ている。
身廊大アーケードに並ぶ柱頭は植物文様
その一つ。
前にあるのは組紐文に葉文様が組み合わせられている。右奥にはゼンマイが放射状に並んでホタテ貝の形になっている。
側廊の交差天井の要石
その内の一つは十字形
南側廊の小礼拝堂の半円アーチを支えているのは女性の頭部
その一つ
交差部に置かれていた付け柱の柱頭も聖水盤の台と化していた。下半身が魚で、左右に尾を開く。
1917年に交差部が再建された時に転用された柱廊の柱頭が2つあるということだが、ひょっとするとこのことかな。光線の加減でよく見えないが、人間が植物や怪獣の間に表されている。
北袖廊のモディヨン(軒下飾り)
動物や人の頭部ではなく全身像になっている。
南袖廊のモディヨンは面白い。
頭部は失われているが、膝を折って祈る人物、人を呑み込む怪獣、植物の意匠など
植物文様は凝っているがピンボケ。
半円アーチを支える人頭はアカンサスの冠を被り、付け柱の柱頭には首の長い鳥や人面鳥を従えて正面向きのフクロウ、最寄りのモディヨンでは祈る人が立像で表現されている。
南井の低い嘆きの聖母礼拝堂(ノートル・ダム・ド・ピティエ、La Chapelle Notre-Dame-de-Pitié)には尖頭交差天井の要石に動物の浮彫がある。
十字架を前肢で持つ羊はキリスト
聖書を持った鷲はヨハネ、
天使はマタイ、
翼のある牡牛はルカ
体は横向き、頭部は正面向きのライオンはマルコと四福音書記者の象徴が表され、
不明の動物だが翼がある。
細部を見る時間さえあれば楽しめる聖堂である。
ロカマドゥール 聖母礼拝堂の黒い聖母子像←
関連項目
コンク、サントフォワ聖堂 軒下飾り(モディヨン)
カオール、サンテティエンヌ司教座聖堂 モディヨン
フィジャック サンソヴール聖堂
参考サイト
LADEPECHE.frのサンソヴール聖堂の洞窟と名付けられた扉口