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2015/11/27

夾紵の初めはやっぱり中国


日本でいう乾漆は、中国では夾紵というらしい。
『世界美術大全集東洋編2秦・漢』は、夾紵胎という製作技法は、戦国時代に始まり前漢時代になってさらに高度に発達した。その製法は木や土で作った容器などの原体に苧麻布をかぶせ、漆で塗り固めたのち原体をはずして整形したものである。製作は頻雑だが、木胎漆器に比べてひび割れや伸び縮みがなく、しかも軽い製品を得ることができる。
同一規格の製品を多数生産できる。木胎よりも製法が頻雑なため、前漢初期でも、奩(れん)、盒など一部の製品にとどまるという。

彩漆雲気文長方奩(れん) 前漢初期(前2世紀) 高21.0長48.5㎝ 湖南省長沙市馬王3号漢墓出土 長沙市湖南省博物館蔵
『世界美術大全集東洋編2秦・漢』は、夾紵胎の身は2段に分かれ、蓋は寄棟造のように甲高に作る。器の表面には黒漆地に油彩で流雲文を施す。先に白色で盛り上がった輪郭を描いたのち、赤、緑、黄色の3色で流雲文を塗り分けているという。


彩漆奩 戦国中期、前4世紀 通高10.8径27.9㎝ 湖北省荊門市包山2号墓出土 武漢市湖北省博物館蔵
『世界美術大全集東洋編2秦・漢』は、荊門市包山2号墓は前300年ごろに葬られた大夫クラスの墓に想定される大型墓である。夾紵製品は化粧具を入れた奩であり、皮革を芯にしてその上から細かな麻布をかぶせて作る。内朱外黒の地漆の上から赤、褐、黄、青色で文様を描くのだが、蓋上面と身の外側には抽象化した鳳鳥が交雑する文様帯を描き、身にかぶさる蓋の側面には細密画で従者をしたがえたて馬車に乗る貴人の行列図を描くという。
この時代、抽象化した龍・鳳鳥の文様や、雲気文などが多い中、この蓋側面の車馬出行図は珍しい。樹木は風で揺れる柳のようで、その間で憩う人物群像の上には鳥が舞い、正倉院宝物にも描かれている鳥の原型はここにあるのかなとも思える。樹木の外側には、それぞれ前進する一人乗りの車馬が描かれている。

書は、この時期に挽物、夾紵などの新しい漆技法が定着し、顔料には丹砂、石黄、雄黄、雌黄、紅土、白土などの鉱物と藍草などの植物染料を用い、漆を桐油で溶いた油彩も出現し、漆工芸の技法がほぼ出そろった段階に達したという。

ということで、中国では夾紵、日本では脱活乾漆と呼ばれる漆工芸の技法は、中国の戦国時代に確立されたことはわかったが、それが棺に使われたかどうかは不明である。
また、日本には、どんなものが夾紵の作品として将来されたのだろう。そして、それがどのような成り行きで棺の製作に用いられることになったのだろう。漆は高価な物なので、新たな威信材になったのかな。


            脱活乾漆は古墳の夾紵棺に

関連項目
白鳳展8 當麻寺四天王像は脱活乾漆

※参考文献
「世界美術大全集東洋編1 先史・殷・周」 2000年 小学館
「世界美術大全集東洋編2 秦・漢」 1998年 小学館