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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/12/01

マゴキ・アッタリ・モスク1 ソグドの文様とイスラーム文様


マゴキ・アッタリ・モスクについて『中央アジアの傑作ブハラ』は、1930年に、考古学者は12世紀にさかのぼるモスクの南入り口を発掘した。入り口は、レンガ及びマジョリカでできたユニークな飾りで飾り付けがされているという。
マジョリカとは彩釉タイルのこと。
同書は、マゴキ・アッタルは、地元のモスクとして使われていた。その入り口は、リャビ・ハウズに向かっていた。上部が鍾乳石で飾られているアーチは、モスク前部入り口として残っているという。
このイーワーンは、どうやらウズベキスタンで最古のもののようだ。それについてはこちら

同書は、入り口端の4分の1の二重コラムがプレイスラム教のソグド建築の古風な跡であるという。
このような円柱の付け柱が、4分の1ずつ左右対称に置かれたものは、他に見たことがない。ソグド建築というのも、初めて見るものである。

扉口左側
同右側

現在残っている4分の1コラム(円柱)の文様は3種類。

一番上と一番下は、平レンガをジグザグに組み合わせた矢筈文様
『トルコ・イスラム建築紀行』では、レンガの編み方は「魚の骨」と呼ばれる手法という。
なるほど、そう言えば、英語ではヘリンボーン(herringbone)、ニシンの骨でやっぱり魚だが、織物の文様で知っていた。この織り方が昔から好きで、杉織と呼んでいたが、今回調べて杉綾織の略語だったことを知った。フランス語ではシェヴロン(chevron)で、山形から。

上から2番目
長方形と正方形、菱形の他に、やや奇妙な形のものがある。その4種類を規則的に並べている。
ガイドのマリカさんによると、その奇妙な形のものを、人の顔を上と下反対にして組み合わせた形で、ゾロアスター教の善悪を表したもので、後に魔除けの意味を持つようになったとか。
下段
その魔除けと平レンガ2枚を横に重ねたものが交互に積まれている。
中には、8の字のようなものや三角を2つ上下に組み合わせたものなどは後補かな。
この文様は、扉口脇にも用いられている。
その上の壁面には、長方形と菱形を組み合わせた独特の文様になっている。
正方形とやや小さな正方形を斜めにして菱形のように組み合わせた壁面はサーマーン廟(10世紀)にあり、勝手に変形石畳文と呼んでいるが、ここでは長方形と組み合わせることで、もっと大きな文様としている。となると、サーマーン廟よりも進んだイスラーム文様ということになる。

その上のイーワーンの中にも様々な壁面装飾がある。

イーワーンを見上げる。
そして気付いた。イーワーン内部は、サーマーン廟内部の四隅にあるスキンチと同じような構造になっていた。

焼成レンガの小片で組み合わせた段の上に、アラビア文字の銘文の段がある。
銘文は浮彫焼成レンガで、イーワーン外側の尖頭アーチ縁の文様帯は、青釉浮彫タイルによるアラビア文字の銘文が残っている。同じ時代につくられたものだろうか。

イーワーンの奥隅には浮彫レンガを漆喰で貼りつけて造ったと思われるムカルナス。
そして、それを囲むように配置された十角形と五角形を組紐文で構成した浮彫レンガの文様帯。
これらはイスラームの壁面装飾。
更に上には、焼成レンガというよりも、粘土の棒を焼成して、それで中心を六角形に組み上げた棒が上になったり下になったりしながら、組紐文のように扱われている。
中心の六角形には、以前には何か文様があったのか、テラコッタの六角形が嵌め込まれる。それを囲む六角形が亀甲繋文になっている(じっくり見ると、もっと複雑)。
そして中央の帯は、扉口上の壁面と同じ幾何学文だった。

                        →マゴキ・アッタリ・モスク2 漆喰装飾

関連項目
マゴキ・アッタリ・モスク3 浮彫青釉タイル
マゴキ・アッタリ・モスク
ウズベキスタンのイーワーンの変遷
イーワーンの変遷

※参考文献
「中央アジアの傑作 ブハラ」 SANAT 2006年
「トルコ・イスラム建築紀行」 飯島英夫 2013年 彩流社