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忘れへんうちに 旅編では、中央アジア各地、イランの旅に続いて、フランス南西部のオクシタニー地方の旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/12/01

オルジェイトゥ廟のタイル装飾を受け継いだ廟


イルハーン朝の1313年に完成したという、スルタニーエのオルジェイトゥ廟について『ペルシア建築』は、内部の壁面は、当初、明るい黄金色を帯びた煉瓦で仕上げられ、部分的に小さな淡青色のファイアンス・タイルを嵌め込む方法で、角ばったクーフィー書体の大インスクリプションが表されていた。しかし1313年、この内装は変更され、プラスターを用いて再装飾されたという。
その上地震もあって、タイル装飾はあまり残っていない。中には上塗りされたプラスターを剥がして、タイルの壁面を出しているところもあるが、タイルの釉薬が剥落している場合も多いのだった。

『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』は、ウィルバーによって、ペルシアでタイル貼り廟の現存最古のものとされているという。
残念ながらドームは修復タイルだった。
回廊上の軒飾りは部分的に残っていて、空色と紺色のタイルだけのシンプルな幾何学文様のモザイクタイルだが、下段の家形五角形内では、素焼きタイルの小片もも使われ、中央の空色10点星から同心円状に展開して、一番外側は立体的な空色組紐で作られた10点星となっている。

イーワーンのスパンドレル
紺色の小さな花を中心に、空色の組紐による八弁花文が二重、外側の大きな花弁を作る組紐が外に向かって伸び、紺色の五角形の鎖と立体交差する。この紺色の組紐も、空色の小さい方の花を囲んで8点星を作る。

墓室の腰壁の付け柱には、紺地に空色と白い釉薬のかかった組紐が、鎖状に絡み合う蔓草のような文様を作り出している。

モスクへの入口の壁面は、植物文様の浮彫タイルと素焼きタイルの組紐による幾何学パターンがやや浮き出ている。凹んだ地に空色タイルが嵌め込まれている。
空色の組紐が地として使われているものは他にもある。
ここでも、植物文様の10点星を中心に文様が展開するが、空色組紐は凹んだ線となって、文様を作っていく。浮き出た素焼きタイルの組紐は特異な幾何学文様になっている。

二層目④のイーワーンには組紐のカリグラフィーが、素焼きタイルの組紐を浮き出させて作られている。凹んだ地には、空色と紺色そして白のタイルで、六角形を積み込む八角形のパターンが無限に繰り返されている。

菱形の素焼きタイルで構成された6点星の凹んだ地に、菱形の空色タイルが嵌め込まれている。
⑥のイーワーンには、多彩な空色嵌め込みタイルのパターンを見ることができる。
中央の長方形の区画には、空色の組紐が直線的に使われている。ここでも素焼きタイルの方が空色タイルよりも出ているが、文様としては、花や巻きひげを伸ばす蔓草をデザイン化したもののように見える。

このようなタイル装飾が後の時代の建築に受け継がれていったことは、ヤズドのマスジェデ・ジャーメ(14世紀)を見れば明らか。
ヤズドのタイル装飾については、表門主礼拝室

それだけでなく、君主オルジェイトゥの命で建立された廟に、同じタイル職人が従事していたという。

シャイフ・バヤズィド廟表門 イルハーン朝、1313年 イラン、バスターム

『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』は、テヘランからホラサーン地方のマシャドに至る、巨大な塩砂漠の縁を通る道路の半ばにある、小さなバスタームの町は、14世紀にモンゴルの統治者が、地方の聖者で、神秘主義の歴史の重要人物のシャイフ・バヤズィドの墓廟を建てたことで知られている。
この9世紀の神秘主義の聖者は、ゾロアスター教からイスラームに改宗した人物の孫であるという。
シーア派聖廟都市マシャドは、日本ではマシュハドとされているが、現地の呼び方に準じる。
Google Earthより
バスタームは小さな町でGoogle Earthの解像度はよくないが、マスジェデ・ジャーメ(金曜モスク)の北にバヤズィド廟がある程度にはわかる。

同書は、モンゴルのイルハーン朝が1295年にイスラームに改宗したことによって、ペルシアの地にタイル装飾の発展をみた。
国力の低下にもかかわらず、イルハーン朝のオルジェイトゥは1307-1313年に自らの墓廟を、現在のスルタニーエの町の近くに建立した。それは高い水準によるペルシア現存最古の墓廟で、レンガの二階建ての八角形の建物で、今でもオリジナルのタイルが部分的に残っている。尖頭アーチの壁龕と青色タイルのドームは遠くからでも見ることができる。
13世紀のアナトリアにおける装飾的嗜好を追求して、オルジェイトゥ廟の職人たちは、空色と紺色の組紐を絡み合わせた。色タイルの間の素焼きタイルをずっと少なくしていった。このような狭い網、あるいは紐状装飾は、1313年に建立されたバスタームのバヤズィド廟にも採用された。バスタームに残るタイルは剥落し、非常に少なくなった素焼きタイルは小さく抽象的なモティーフが浮彫されていて、組紐の色タイルの間で陰影の効果を出しているという。
中に凹線のある菱形とくの字形の空色タイルで4点星だけを作っている。これも組紐ということらしい。
その中に嵌め込まれているのは、抽象文様ではなく、花文を型押しした素焼きタイルでは。

左は組紐が上下交差しながら8点星などの幾何学形を、ゆるく作っている。
右はそれらとは異なり、1枚の紺色浮彫タイルである。中央の卍は上下の線に繋がり、上下に2つの山のある枠と共に上下対称なので、型作りのようで、一つ一つ線の太さなどに違いがある。
地には五弁花文の他、様々な花の文様が型作りされている。
青釉タイルをそれぞれの形に刻んだものとは異なり、手作りであることがタイルの縁の丸みに現れている。
同じデザインの空色浮彫タイルを並べた壁面もある。
中央に卍、それぞれの先に枝分かれした鉤形のものがついている。点対称なのでどの面を上にしても同じ文様になる、型作りのタイルだ。
このような施釉浮彫タイルは、同じ13世紀、コーニスに貼られていたものがイラン考古学博物館に残っている。
オルジェイトゥ廟では地として凹んだ箇所に配置されていた空色タイルだが、バヤズィド廟では浮き出して、壁面装飾の主体となっている。





      オルジェィトゥ廟のタイル装飾

関連項目
スルタニーエのオルジェイトゥ廟(ゴンバデ・スルタニエ)
14世紀、トゥラベク・ハニム廟以前のモザイク・タイル
ヤズド、マスジェデ・ジャーメのタイル2 主礼拝室
マスジェデ・ジャーメのタイル1 表門

※参考文献
「COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE」 1996年 Thames and Hudson Ltd.London
「ペルシア建築」SD選書169 A.U.ポープ著 石井昭訳 1981年 鹿島出版会
「IRAN THE ANCIENT LAND」 ペルシア語のため出版社他は不明