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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2013/11/19

第65回正倉院展5 六曲花形坏の角に天人



小さな作品なのに気になるものの一つがこの六曲花形坏だ。

金銅六曲花形坏 こんどうのろっきょくはながたはい 口径8.3高4.1重67.9 南倉

『第65回正倉院展目録』は、銅板を鍛造して6弁の花形をかたどり、鍍金を施した小さな鋺。底には鑞付でやや低い高台を接合する。各花弁は外縁に稜を設け、外縁から底にかけて花弁の中央を通るように稜線を打ち出して6曲面を作る。各花弁の間には猪目を透かして花弁の形を明確にする。外面と底裏には草花や天人を毛彫りし、間地をややまばらな魚々子で埋めている。
また、中央を凹ませて2段とする高台は各段に連珠文帯をめぐらす。
工夫を凝らした形に加えて、全体に非常に精緻な装飾を施した作品である。なお、口縁近くに猪目を透かしていることを考慮すると飲用具とは別の容器とも思われるという。
確かにこの器で飲むということは難しそうだ。稜のところから飲んでも猪目からこぼれそう。
2段の高台に魚々子がそれぞれ一巡しているが、疎らなために連珠文とは思わなかった。
確かに、魚々子による連珠文というのはあった。しかも、北魏時代の仏像に。
底裏には八弁花文とそこから派生する8本の花枝を刻んでいるという。
これだけ大きくしても中央に刻まれているという八弁花文はよくわからない。

外面の線刻は、各花弁に花樹を表し、樹上の花座に坐して簫・琴・鼓・笙・琵琶・横笛を奏でる天人を稜線が中央に来るように配しているという。


排簫と呼ばれる竹の管を横に繋いだ楽器を両手で持っているのだろうが、その管が並んでいるようには表されていない。
単に楽人に見えたが、天衣をつけ、蓮台に乗っている。
左右対称だが、ひびとそこから出た緑青のために、やや斜めを向いているように見える。

どんな顔か全くわからない。琴の弦も見えない。

鼓の縁に魚々子がびっしり並んでいるが、腕はどうなっているのだろう。

笙を両手でもっている。
琵琶
顔は全くわからない。
敦煌莫高窟第285窟本尊の龕楣では四弦も五弦もこのように右手を琵琶の下に回して弾いている。
横笛
何となく目を細めて笛を吹いているように見える。

稜の部分に楽人がいるので、見にくいことこの上ない。何故こんな彫るのも難しい部分にわざわざ人を配置したのだろう。
そう思いながら、稜部の毛彫や魚々子を見ていくと、途切れがない。それに、こんなに疎らな魚々子地しかつくれない時期に、稜部に魚々子を打つことができたのだろうか。
そんな風に見ていると、毛彫や魚々子の作業を終了した後に、人物が稜の中央にくるように6弁に仕上げたのではないかと思うようになった。


第65回正倉院展4 華麗な暈繝←       →第65回正倉院展6 続疎らな魚々子

関連項目
第64回正倉院展7 疎らな魚々子
日本の魚々子の変遷 
X字状の天衣と瓔珞1 中国仏像篇
第65回正倉院展7 花角の鹿
第65回正倉院展3 今年は花喰鳥や含綬鳥が多く華やか
第65回正倉院展2 漆金薄絵盤(香印座)に迦陵頻伽
第65回正倉院展1 樹木の下に対獣文

※参考文献
「第65回正倉院展目録」 奈良国立博物館編 2013年 仏教美術協会