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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2015/11/06

白鳳展5 法隆寺金堂天蓋の飛天


法隆寺天蓋には飛天が幾つかのっている。
『白鳳展図録』は、釈迦三尊像(中の間安置)及び阿弥陀如来像(西の間安置)の上方に掲げられた天蓋に附属する彫像で、天蓋の荘厳のために取り付けられたものである。
飛天は上段吹き返しの南・北面に各3軀、東・西面に各3軀の合わせて24軀が配されていたと思われるが、現状では欠失があるという。
2008年の『国宝法隆寺金堂展』では、奈良国立博物館の展示室で、この天蓋を間近で見ることができた。


縦笛像
『白鳳展図録』は、クスノキ材を用い、概ね持物や蓮華を含めた本体部分を一材から彫出し、手先や持物の一部を別材で作り付けている。
双髻を結い、胸の開いた袖の長い上衣を纏い、下半身には裳を着け、縦笛を奏する姿で、蓮華座に坐する。
肩には天衣が懸かり、天衣は木製透彫の光背へと及び、最後は光背にあしらわれたパルメット唐草文様へと展開する。全体に白土地に彩色が施されるが剥落が多い。光背も剥落が著しいが、一部は当初のものを伝えている。本展出品の縦笛像、琵琶像、鈸子像は当初の光背を遺しているという。
飛天と光背は別々に造られたものと思っていたが、全体を一材が彫り出していたのだった。
どれが光背部で、どれが天衣か、彩色が失われてわかりにくいが、両端の上部には側面観の蓮葉が縦に表されているし、下方、飛天の両肩の外側にあるのは、蓮台のよう。蓮唐草と呼んでもよさそう。

同書は、飛天像の面貌表現は、面長でやや角張り、目の位置が高く飛鳥時代の雰囲気を遺す。近年行われた天蓋本体の年輪年代測定によれば、部材として最も年代の下がるものとして中の間では654年、西の間では663年という数値が示されており、これを天蓋及び飛天像の制作年代に敷衍させることも可能かと思われる。縦笛像は前者に当たるという。

横笛像
後補の光背を付けているので、彩色がはっきりとしていて、当初の様子がよくわかる。
蓮台や蓮葉の付いた両端の蔓は、中央の頂部に蓮華のある光背をくぐったり、越えたりしてはいるが、ほかの茎とは繋がっていない。
天衣も頭上に2つの輪っかをつくるが、その端はみつからない。
上の方には。半パルメット波状唐草が変形していったような葉が、ほぼ3枚ずつ出ている。
左右の蓮台や中央頂部の蓮華から火焔が出ている。

同書は、輪郭が丸みを帯び、目の位置が下がり、奈良・法隆寺六観音像のような童顔を表す。これを中の間、西の間の天蓋の制作年代の違いに結びつける説もあるという。
縦笛像と比べると、確かにこの像の方が童顔になっている。
金龍寺菩薩立像にも繋がる顔かも。

            白鳳展4 金龍寺蔵菩薩立像


関連項目
法隆寺金堂中の間天蓋の垂飾に截金
白鳳展1 薬師寺東塔水煙の飛天
白鳳展2 透彫灌頂幡の飛天
白鳳展3 法輪寺蔵伝虚空蔵菩薩立像

※参考文献
「国宝法隆寺金堂展図録」 奈良国立博物館編 2008年 朝日新聞社
「白鳳ー花ひらく仏教美術ー展図録」 2015年 奈良国立博物館