イサク・パシャ宮殿のモスクには半球のドームが架かっていたが、ドームは小さいながら他にもあった。
14:モスク向かい、控えの間の中央小ドーム。4本の円柱からペンデンティブ(穹隅、三角曲面)が出ているのではなく、平面的な三角形を出して八角形を造り、その上に八角形のドームを載せている。
八角形のドームというのは、ロマネスク教会の交差部に架けられた明かり取りのための四角い塔の頂部にも見られるものだ。
この部屋は窓から十分な光が入り込んでくるので、ドームに窓は要らない。
13:厨房脇の小間に架かるドームは八角形から各角に三角の凹みを作って、無理のない球面にしている。
平面が八角形なのだが、四隅が他の面よりも小さいので、正八角形ではない。それでも上を円にすることができている。
12:もう一つの小ドーム。正方形の壁に平面の三角形を8つ作って八面のドームに仕上げている。
『トルコ・イスラム建築』は、トルコ三角形、壁の一定の高さの所から天井に向けて三角形の面を斜めに繰り出して、天井に正多角形を作り、ドームを載せる方法という。
このトルコ三角形という架構法でドームを載せているのだろう。
同書は、イサク・パシャ宮殿をオスマン朝晩期の建築(18-19世紀)としているが、生命の樹や浮彫文様帯など壁面装飾、ムカルナス、そしてドームが、一つとして同じものがないと言っても過言でないほどの多様なデザインを採り入れて造られている。
しかも、このような辺境の地に。時代の下がった地方の金持ちの邸宅程度に思っていたが、とんでもなかった。
※参考文献
「トルコイスラム建築」飯島英夫 2010年 冨士書房インターナショナル