今年も桐の花が咲く頃となった。先日旅した中国でも満開で、あちこちで見かけたが、やや色が褪せていた。見慣れているせいだろうが、藤に似た色の日本の花の方が、桐の花らしく思えた。最初に桐の花だと気づいたのは、山西省太原の西南郊の晋祠だった。

かなりの見学者がいた。皆その玄関や高い煙突を見上げるが、すぐには建物に入らない。建物の左手奥に見える紫の木に目が行くのだ。「あれは何の木?」という人が結構いた。「キリの木」と答える人もいた。家紋に使われる「五七の桐」や「五三の桐」の花である。
そういう私もかなりの年になるまで桐の花は知らなかった。藤の花にやや遅れて咲くこの木の花は、色が紫なので、遠くから見ると藤かと思う。しかし、近くで見ると、藤は蔓性で花は垂れ下がっているが、桐は蔓ではなく花も垂れ下がらない。
山荘の中でも、1階のテラスからも、2階のテラスからも桐の花を見ることができた。みごとな桐の木だ。1階テラスからは桐の木の近くに白い塔が見える。白雲楼というらしい。2階のテラスからは更に白雲楼と桐の木がよく見える。白雲楼の前は牧場のような草地になっており、その隅の方になぜか羊の像が2体置いてあった。

そして白雲楼の裏を通っていると、紫の花が道のあちこちに落ちているのに気が付いた。桐の花だ。こんなに間近に桐の花を見るのは初めてだ。しかし、どれも落ちて時がたったものばかりで、記録として写真を撮ることにしている私としても、写すのがためらわれるような花だった。

しかし、こうして間近に見ると、遠くから見るほど紫がかってはいない。晋祠でも、下を向いて歩いていたら、落ちた花を見つけることができたかも知れない。そして、花の色を比べることができたかも。