藤田美術館で久しぶりに蓮池図を見たが、それは繍仏だった。
刺繍釈迦阿弥陀二尊像 鎌倉時代・12-13世紀
外側の仕覆は蓮華唐草文金襴以外は刺繍でつくられた仏画である。
同館図録は、全体に刺繍をほどこした繡仏。向かって右に釈迦如来、左に阿弥陀如来の二尊をあらわす遣迎図である。縁には蓮唐草文をめぐらし、四隅に四天王の種字をおく。上部には中国の僧・善導の文があり、その間を飛天や楽器が蓮華の花びらとともに舞うという。
奈良国立博物館の収蔵品データベースによく似た刺繍釈迦阿弥陀二尊像がある。
また、藤田美術館の繊細な刺繍による仏画に精密な画像とQ&A式の解説があり、それを参考にこの仏画をみると、上段左右に配された色紙には、浄土思想を確立した善導の書物からの引用文、中央には飛天が虚空で散華していて、柔らかな色彩の蓮弁や楽器が舞う。
中段はそれぞれ形の異なる天蓋を掲げた釈迦如来(右)と阿弥陀如来(左)が来迎雲に乗っている。大きな頭光は光線が幅広で、菊の花のように密に並んでいて、傘形光背とも思える。
釈迦如来と阿弥陀如来の立像の下で、観音菩薩は蓮台を持ち、勢至菩薩は合掌して往生者を迎えに来ている。ということは、これは来迎図?
繊細な刺繍による仏画によると、釈迦如来は亡くなった人を送り出し、阿弥陀如来は亡くなった人を極楽に迎え入れるというそれぞれに役割があって、この二如来を組み合わせたものを遣迎図というのだそう。「遺迎図」? この年になるまで知らんかった😣
中央の州浜状のところに多宝塔があり、扉が開いて中に二仏が並坐している。これは二仏並坐像といって、多宝如来と阿弥陀如来が並んですわっているとされているが、釈迦阿弥陀二尊図であれば、釈迦如来と阿弥陀如来ということになるのだろうか。
池には蓮華が咲き、蓮華や蓮の葉の間に水の流れが描かれ、2羽の鳥が飛んでいる。蓮池水禽図では水辺の鳥が描かれるが、ここでは尾の長い小鳥になっている。
蓮の葉にしては妙だと思っていたら、クジャクの尾羽だった。身をかがめて尾をあげ、餌を探している様子。
繊細な刺繍による仏画では、この飛ぶ鳥はオナガらしい。州浜にはもう1羽、羽を繕っているカモのような鳥も。カモだけが水禽だが、蓮池水禽図と呼んでも良いだろう。
この蓮池図を見ていて、若い頃に蓮池水禽図には必ず病葉(わくらば)が描かれていることに興味をもったのを思い出した。それについては次回。
参考サイト
参考文献
「水墨美術大系第3巻 牧谿・玉澗」 戸田禎佑 1978年 講談社
「水墨美術大系第10巻 光悦・宗達・光琳」 山根有二 1978年 講談社