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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2019/08/06

明治村 旧帝国ホテル玄関


明治村の北門から入ると、
すぐに転車台が見えてきて、
SL東京駅のホームがあったが、あいにく蒸気機関車の姿はなかった。線路の傍の傾斜を下り、
線路の下のトンネルを抜て更に下ると、
蒸気機関車12号が置かれていた。

そして左手に67:旧帝国ホテル中央玄関があった。一見レンガ造り風。
フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルの建物については、書物ではなく、様々なTV番組で知っていた。その玄関が明治村に移築されて残っているのを知って、半世紀ぶりに明治村に出掛けた。
曇りの日だったため、色が冴えなかったが、暑い思いをせずに済んだ。
3階平面図(館内パネルより)
この西面が見えている。

玄関の表側へ。入鹿池が少し見える。
石材も使われている。
徐々に石材が目立ってきた。あの半球を十字に留めたものは飾り壺?
軒下飾りは銅?
幾何学文様ばかりだが、何を表しているのだろう?透彫のある六角形のものは、ひょっとしてアカンサスの葉?
角部はレンガ、異形煉瓦、石材の組み合わせ。
レンガはスクラッチタイプ。石材も無表情では終わらず、直線の凹凸で素っ気なく飾られている。
こんな風に異形煉瓦(レンガの表面に凹凸のある浮彫のテラコッタ、『イスラーム絹本著色の世界史』より)を目にすることになろうとは。私にとって異形煉瓦といえばアイーシャ・ビビ廟(カザフスタン、タラス 12世紀)のもの。
石材は加工し易い大谷石。石に刻んだ幾何学文様の中にも別の意匠の異形煉瓦を入り込ませている。
その側面というか、玄関正面側。
それぞれに幾何学文様の浮彫のある軒の積み重なりの上には丸いものが。
擬宝珠?
車寄中央から外を見る。上にもあった半球、いや隙間と合わせて球形のものがここにも。
見学まもない2019年6月14日に、運良くNHKの美の壺・選「”空間の魔術師”フランク・ロイド・ライト」の放送があった。元の帝国ホテルの玄関の写真がタイトルバックになっていて、この球状のもには半球状の金属の透彫があったことを知った。
ここには小さな半球と大きな半球が並んでいて、その下には多角形の突起。
その背後がスクラッチ・レンガの壁面。レンガの縦縞がやっと写せた。このようにレンガの色が不ぞろいなのがオリジナル。
「美の壺」では、当時の常滑の製陶会社が、帝国ホテルの煉瓦用に新しい工場を造って製作したという。それって伊奈製陶では?後のINAX、現LIFIXの。
番組ではそのレンガ造りを再現していて、木箱に定形に一つずつ成形した粘土を木箱に3つ入れ、5㎜間隔で釘を打ち付けた板をその上で移動させ、この溝を彫っていた。大変な手間をかけて、4年間で250万個を焼いたのだという。
番組では隈研吾氏が、表面に影をつけることで、日本のしっとりと湿度のある景観に似合ったレンガにしたかったのではと解説されていた。
ライト氏は大谷石を多用したが、同じくライト氏が設計し、大谷石が使われた芦屋市の旧山邑家住宅(現ヨドコウ迎賓館)の館長は、大谷石はミソと呼ばれる茶色い穴があり、それをライト氏が好んだという。
軽石凝灰岩だから確かに穴だらけ。幾何学文様を浮彫しても冷たい風合いにならない柔らかさを好んだのでは。

では館内へ。
おっと、左のはめ殺しのガラス(フィクスと言うらしいが亭主はこう呼ぶ)に金色の輝きが。金色の小さな正方形がジグザグに並んでいる。
たくさん写したがピンボケばかり、何とか見られる1枚。金泥を塗っているのだろうか。
観音開きの扉は鉄枠にガラスが嵌め込まれている。大谷石とレンガにはない透明感と金箔ガラスのジグザグのリズムが軽快感を醸し出している。

1・2階平面図
ロビーは吹き抜け。大谷石の様々な浮彫を目にすることができるが、暗いので良くは写らない。
四隅の大谷石と異形レンガの塔が照明具を兼ねている。
外で見たものと同じデザインの異形煉瓦。
古代エジプトのジェド柱のようなものを中央に置いた異形煉瓦の上下には、小さな異形煉瓦が嵌め込まれている。
「美の壺」では、この形の異形煉瓦の再現もしていて、型で制作した素材に、人の手で縦溝が彫られていた。
暗い目立たない場所にさえこんな壁面が。

数段のぼって中2階の紳士用ラウンジへ。
ここにも金色ガラスの装飾が控えめに。ボランティア・ガイドの方が金箔をガラスとガラスで挟んでありますと。金泥ではなくゴールド・サンドイッチ・ガラス(長すぎるので、以下は「金箔ガラス」とする)だった。
部屋の隅の照明から伸びる矢印のようなものは・・・
2階からこの天井を眺めると、木材を使った不思議な装飾

そして2階南面のティーバルコニーの窓にも金箔ガラス(ゴールド・サンドイッチ・ガラスという名称は長すぎる)。
着いたばかりなのでここでお茶することもなかった。

ロビー北面。2階にはフランク・ロイド・ライトの写真パネル
西廊へ、時計回りで廻っていく。一つの階はあまり高くない。
こんな照明も
壁面の装飾にも異形煉瓦が(ピンボケ)

北通路へ
石材の幾何学文様も様々
南面を写す

帝国ホテル中央部大食堂の写真
フランク・ロイド・ライト氏だが、日本に滞在していた頃はもっと若かったはず。
何を表そうとしたのだろう、この大谷石の浮彫は。
そしてこの大きな逆三角形。樹木?
石彫の文様はいったい何種類あるのやら。
東通路より

数段階段を下りて中2階の男性用ラウンジへ。北側には今までとは異なった石彫が並ぶ。
その向こうの石と煉瓦の角柱。石彫のデザインは全部違うように見えた。

また数段下りて1階へ。
東側への出口のガラス扉に嵌め込まれた金箔ガラス
金箔ガラスは小さいが、光のあるところでは非常に効果的。

背面。旧帝国ホテルで残っているのはほんの一部。

東面

その東側には、復元時に使用されなかった部材が置かれていた。

食堂飾柱。外の方が細部がよく見える。
向きを変えると
隅には小さなものが並ぶ。
右端は歯のように並んだ石の隙間から、水色のものが見える。
それは、ラウンジの軒飾りだったもののよう。
青銅だろうが、プラスチックのような割れ方だ。
再利用されなかったものばまだあった。
渦巻のある軒下飾り(モディヨン)
アカンサスの柱頭

東面の北半分
南半分。中2階が男性用ラウンジだった。
その屋根。
一風変わった屋根の葺き方。そして軒飾り

南東より
ここにもオリジナルの飾り壺が置かれている。

やっと正面に回れた。
昔は噴水はなかったような・・・
噴水の向こうには別のデザインの石彫が並んでいる。

明治村 灯台と教会

参考にしたもの
博物館明治村のリーフレット
美の壺 「”空間の魔術師”フランク・ロイド・ライト」 NHK放送 初回2017年6月23日、再放送2019年6月14日

参考文献
「世界のタイル 日本のタイル」 世界のタイル博物館編 2000年 INAX出版
「イスラーム建築の世界史 岩波セミナーブックスS11」 深見奈緒子 2013年 岩波書店