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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2016/10/18

田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展5 小さな玉の大きな宇宙


田上惠美子氏の源氏物語のトンボ玉一つ一つを拡大して撮影していると、透明なものはその中の金箔やレースガラスが立体的(当たり前だが)に迫ってきて、その中へ中へと誘い込む。まるでそこには別の宇宙があるようだった。中に入ってどのようになっているのか確かめたくなってくる。
田上氏は好きなように写していいですよとは言って下さったものの、こんなことされるとは予想だにされていないだろうが、今回は源氏物語を離れて、小さなトンボ玉の中の大きな宇宙を覗いてみた。

四帖 夕顔
金箔が千々に切れて宙を漂う。それを引き寄せるように濃藍(こいあい)色の縄が幾重にも巻いているが、それをかいくぐったものは、どんどん向こうの天体に吸い寄せられていっているような。

六帖 末摘花
レースガラスというよりは、縞ガラスといった方が良いのかな。天の河と表現するよりも、同じものだがミルキーウェイの方が似合いそう。その隙間から光が見えているみたい。
なんと、サイコロ状のトンボ玉の8つの角に突き出た茜色のポチポチでさえレースガラスだった。

八帖 花宴
こんな風に外側が透明ではないのに部分的に透けていて、内側が透明だと、その隙間からなんとか中を見てみたくなる。色んな色彩が見えれば尚更。
白い色一つをとっても、その両側を半透明なもので挟んでいて、どこまでも細かいなあ。

九帖 
表面は曇りガラスが幾何学的にカットされた透明なところから内部を垣間見る。
金箔の皴や切れ方がすごく立体感があって、その隙間から濃い紫の闇が現れている。
方向を変えて見ると、金箔の間から見えるのは、紫だけでなく白も。ただの闇ではなかった。
白と紫でつくられた石畳文が、手前では小さいのに向こうの方は巨大。

十四帖 澪標
宇宙というよりも海の中かな。それも海底熱水噴出孔から出てきたガスや様々な鉱物成分が、海面近くまで上昇して波に揺られているとか。

二十一帖 少女
透明な緑の球体を通して見える向こうの光の粒。中に入ってその奥を確かめてみたくなる。
でも、入ると吸い込まれてしまいそう。白いロープに掴まらなくては。

二十二帖 玉鬘
理想的な宇宙船。進行方向だけでなく、左右上下見渡せた方がいいよね。

二十五帖 
天の河は地球から見ていると、ざっくりとした闇と光の筋で濁った感があるが、近づくとこんな風に透けてきて、意外と明るいのでは。
レースの帯のうねりが独特。

二十六帖 常夏
銀色っぽい星屑が宙を漂う。アメーバのような窓からそれを追っていくのは大変。
左上から白い網が星屑を捕まえようと広がっている?

三十一帖 真木柱
隕石?それとも宇宙塵が集まって小さな星が生まれ、光を放つ瞬間?
でもその中にはレースガラスが。やっぱり田上氏の作品だ。

四十九帖 宿木
光が見える向こうに行き着くには、この奇妙な赤い植物の森を抜け出さないと。
でも、こんな風にもつれた糸状のものを見ていると、1本1本くぐらせながらほどいて、糸の玉にしたくなってしまう。田上さん、ガラスの中に糸を入れたでしょうと言いたくなるような。

五十一帖 浮舟
ビッグバンを起こさんといてね。
色の名称は難しい。赤っぽいのや緑っぽいの、そして青っぽいの。それぞれの境目はどうなっているの?


五十二帖 蜻蛉
天の河に入るとこんな風だったらいいなあ。夢の中の天の河のよう。
こんな風に見ていると、段々「ミクロの決死圏」になってしまいそう。
蛇足ですが、同映画の美術をダリが担当したというのは誤りだということが、今回調べていてわかりました。


  田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展4 三十七~五十四帖
                  →田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展6 レースは揺らぐ

関連項目
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展8 截金の文様
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展7 金箔の表情
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展3 十九~三十六帖
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展2 一~十八帖
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展1
天善堂で田上惠美子ガラス展 蜻蛉玉源氏物語

※参考サイト
和色大辞典