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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2016/10/14

田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展4 三十七~五十四帖


三十七帖 鈴虫(すずむし)
十五夜の夕暮れ、六条院に集った公達は庭に鈴虫を放って宴を楽しむ。
このなんとも優雅なレースの揺らぎは、鈴虫が振るわせる羽根だったのか。

三十八帖 夕霧(ゆうぎり)
父源氏に似ず生真面目で堅物な夕霧が、騒動を起こす。
確かにレースの動きが穏やかではない。

三十九帖 御法(みのり)
出家を望むが許されず、命の終焉を直感した紫の上は、法華経供養を催した。
色紙状の截箔が、両側面では三角形に近い形になっているのを写したら、前の方だけピントがあってしまった。

四十帖 幻(まぼろし)
悲しみに沈む源氏、紫の上からの手紙を読み返しては泣き、全てを燃やす。
紫の上の手紙が焼けて灰になっていく様子を表しているのかな。

四十一帖 雲隠(くもがくれ)
本文はない。光源氏の死の暗示。
この玉は黒に見えていたが、ズームしていくと緑色で、しかも透明だと分かってきた。何とかピントを合わせようとはしたが、合っているような、いないような・・・

四十二帖 匂宮(におうのみや)
源氏の死から時は流れ、源氏ゆかりの匂宮と薫の若者の時代となる。
まるでカットグラス。違いは地が曇りガラスなのと、緑青色や金箔がずっと向こうに見えること。

四十三帖 紅梅(こうばい)
縁談をほのめかす歌を紅梅の枝に添えて、匂宮に届ける。
熨斗のような縞の帯が立体的に仕上げられているところがみごと。
どのように創るのか田上氏に聞いてみると、大きなテーブルに置いてあった材料を持って来て説明を受けた。
出来上がった玉に帯状のガラスを過熱して軟らかくなったところで巻き付け、双方の収縮率が違うので、割れ易いのをなんとかうまく冷ましていくのだそう。
写真の一番下の帯状ガラスの先が細くなっているのは過熱が進んで丸まってきたのだとか。
でも、二十三帖の初音にはこんな先の方が似合っている。

四十四帖 竹河(たけかわ)
几帳のほころびを分けて、宰相の君が薫に「少し色めけ梅の初花」と囁き掛ける。
薄絹のほころびが広がらないように帯でまとめようとしているような。

四十五帖 橋姫(はしひめ)
八の宮の姫君達は御簾を巻き上げて月を眺め、語りつつ合奏をしている。
格段小さく、そして高さのない玉で、その上床の間の奥の方に展示されていたので、ピントは合わないかと思っていたが、どういうわけか、ちゃんと写っていた。
小さいし、色も控えめだが、はんなり感がある。

四十六帖 椎本(しいがもと)
雪降り積もる冬の宇治川の流れ。「雪ふかき 山のかけ橋 君ならで またふみかよふ あとを見ぬかな」
川の流れが底の状態で変わっていく感じが截金でよく表されている。川の中の様子が見えそうで見えない。
でもこの写真が案内の葉書の下の真ん中の写真と同じものを写したものとは。色も中の様子もまるで違う。葉書を見直して、同じものとは思えなかった。
さすが写真計画さん。

四十七帖 総角(あげまき)

薫、匂宮、大君、中の君、それぞれの気持ちとは裏腹に、何もかもがすれ違う。
短い線が法則性もなく交わったり途切れたりして、何と形容して良いのやらわからない。その内側の黒っぽいものが不穏な雰囲気を醸し出している。

四十八帖 早蕨(さわらび)
一人残された宇治の中の君のもとに、蕨や土筆が籠に入れて送られてくる。
両端が不揃いで、こんな風につくるのは田上氏の作品では珍しい。氏には悪いが、近場で木の葉が見つからず、細い茎を代用した蓑虫を連想してしまった。
自由時間さんの庭【ユーカリに、ミノムシ】に縦並びの、そしてメコンの残翅さんの蓑虫のログハウスに横並びの茎の蓑虫の写真が掲載されています。
さて、この作品の名は早蕨というのだった。細長い色ガラスや透明ガラスの中に、小さな金箔が砂子状にガラスの中に浮遊している。それぞれの大きさが一様ではない。氏が金箔をこのように細かくしているのかな。

四十九帖 宿木(やどりぎ)
様々な思惑の中で、右に左に優柔不断に迷走する薫。
表面の珍しく幾何学的ではないカットから垣間見える薫の葛藤。

五十帖 東屋(あずまや)
畳の上に置かれた絵冊子を浮舟が眺め、詞書きの冊子を右近が開く。
源氏物語絵巻は、詞書を絵の前に置き、詞書と絵を交互に並べた巻物で、絵巻としても現存最古級のものとされている。そのような絵巻の形式が、蜻蛉玉源氏物語展の展示にも反映されているのだが、絵巻物ができあがるまでは、詞書と絵が別々だった。
金箔の色紙とガラス地を石畳状に配置したこの玉はそんな物語の楽しみ方を表しているよう。
散らされた砂子状の金粉と磨りガラスが、石畳文を柔らかくしている。

五十一帖 浮舟(うきふね)
雪の夜、宇治川を渡る小舟には匂宮と浮舟の姿。薫と匂宮とのはざまで揺れる、浮舟の心。
浮舟の心のように、この玉は転がる度に色を変えていくのでは。

五十二帖 蜻蛉(かげろう)
夏の暑い日、女一宮と女房たちが、貴重な氷を手に持ってはしゃいでいる。
なんとも涼しげなだが、意外とにぎやか。閉じ込められた泡は女性たちの黄色い声?

五十三帖 手習(てならい)
入水と思われた浮舟は僧たちに発見され、神を削ぎ出家する。
透明感や透け感の多い氏の作品にあって、これは異色の玉に入るだろうが、金箔とレースガラスの組み合わせという点では田上ワールドには違いない。
これもピントが合いにくいものの一つ。後日神戸とんぼ玉ミュージアムで撮影させていただきました。

五十四帖 夢浮橋(ゆめのうきはし)
「・・・とぞ本にはべめる」
(浮舟を隠しているのではないかと思うのだった、と本に書いてある。)不可解な終焉。
こちらも神戸とんぼ玉ミュージアムで撮影させて戴き、やっとピント合いました。
奥の方にある不可解なものは、和紙の繊維が透けたものです。

案内の葉書にも使われていて、見るのを楽しみにしていたのに。

※ これらの作品は田上惠美子氏、天善堂及び神戸とんぼ玉ミュージアムの許可を得て撮影しました。
 
 田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展3 十九~三十六帖
               →田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展5 小さな玉の大きな宇宙

関連項目
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展8 截金の文様
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展7 金箔の表情
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展6 レースは揺らぐ
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展2 一~十八帖
田上惠美子氏の蜻蛉玉源氏物語展1
天善堂で田上惠美子ガラス展 蜻蛉玉源氏物語

※参考サイト
自由時間さんの庭【ユーカリに、ミノムシ】
メコンの残翅さんの蓑虫のログハウス
和色大辞典