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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2011/12/16

第63回正倉院展1  今年はヤツガシラが少ない

正倉院展の楽しみの一つにヤツガシラ探しがある。毎年楽しみにしているが、今年は2点だけだった。


紅牙撥縷尺 こうげばちるのしゃく (ものさし) 中倉 長30.2幅3.0厚0.9
図録は、象牙の表面を色染めし、そこに撥彫(はねぼり)を施して図柄を表す撥縷技法で彩られた物差し。本品は紅色に染めた後に撥彫を施し、随所に緑や黄色の彩色を施す。片面に界線を持つものの細かな目盛りはなく、儀礼用と考えられるという。
それぞれが花枝をくわえているのかと思ったが、上の1羽が長い花枝、というよりも、花枝を模した飾りのようなものをくわえ、後ろの1羽は飛んでいるだけだ。
碧地金銀絵箱 へきじきんぎんえのはこ (献物箱) 中倉
縦27.9横17.5高10.6 ヒノキ製
蓋・身の外面は、地を碧色とし、金泥で花文、銀泥で蝶鳥文や花枝文を描く。
蓋表中央に、一対の鸚哥が花枝を銜える姿を描く。鸚哥は大きな花にのり、花は枝葉を伴って鸚哥を取り囲む花枝文と一体化する。その周囲に蝶文がめぐり、さらに尾長の花喰鳥を上下一対ずつ置くという。
こういう場所に描かれる鳥は、ヤツガシラが定番だと思っていたが、この絵箱はそうではなかった。 


側面は、中央に向かい合って翼を拡げる尾長の花喰鳥一対を置き、銜えられた花枝文の左右に飛鳥を描くという。
右側面には、草花を挟んで向かい合う尾長と花が描かれ、その上を両側から中央に向けて、左右対称に同じ種類の鳥が飛んでいる。鳥は金泥で表され、外から2番目がヤツガシラだ。
左側面の方は、飛鳥の内、中央の蝶の次に飛んでいるのがヤツガシラで、銀泥で描かれている。
どうもこのような碧地の絵箱は以前に見た記憶があると探したら、1985年、第37回正倉院展だった。もう30年近く前のことだったが、ヤツガシラを探して、その図録で見ていたのだった。
碧地金銀絵箱(みどりじきんぎんえのはこ)、当時は「碧地」を「みどりじ」と読んでいた。
それにしても、色も形もよく似た絵箱だ。

※参考文献
「第63回正倉院展図録」(奈良国立博物館編集 2011年 財団法人仏教美術協会)
「第三十七回正倉院展図録」(1985年 奈良国立博物館)