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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2011/06/24

ヴェネツィアで見かけた窓ガラスに並ぶ丸いものはロンデル

ツアーでヴェネツィアに行くと、ガラス制作の実演を見てその後ムラーノガラスのお買い物という風になっているものらしい。我々もその例に漏れず、小さな花瓶や馬の置物などを元ムラーノ島の工房で作っていたという職人が作るのを拝見した。
しかし、その場で一番興味を惹かれたのは職人の作る作品ではなく、建物の窓ガラスだった。
じつは田上惠美子氏の個展に、作家在廊の日を選んで出かけたのは、この面白い窓ガラスを見てもらうためだった。
人のいないのを見計らって田上氏に見せると、これはロンデル窓で、窓にガラスという素材をはめ込む一番古典的な方法だと思いますわ。
円形一枚一枚をロンデルと呼び、吹きガラスで容器を作る要領で作った後、更に熱をかけて広げていきながら勢いよく廻すと器が遠心力でお皿になり、最後に真ん中を支えているポンテを切り落として徐冷します。
ですから真ん中にポンテ痕が付いていて、その外側に同心円状の輪が幾つもできるので、光も揺らぎながら入ってきて、とても趣がありますなあ

何となく吹きガラスを幾つか並べてあるなあとは思っていた。

『ガラスの考古学』は、宙吹きガラスの技法が確立されると、ガラス容器の大量生産が可能となり、 ・・略・・ 窓ガラスまでも製作されるようになったという。
しかしそれは、吹きガラスを大きく長く作っておいて、切り開いて平たくするか、丸く吹いて先を切ってクリクリ回すと遠心力で平たく広がって丸い板ガラスができるというように理解していたので、こんな小さな円形のものが並んでいるのが窓ガラスだとは思わなかった。
こんな窓を見て、鉛の輪っかにガラスを吹いて作るのかと思ったくらいだ。
最初の頃は小さなものしか作れなくて、せいぜい10数㎝くらいで、技術が進んでくると40㎝くらいのものも作れるようになったらしいです
この窓ガラスに並ぶロンデルは、多分10数㎝くらいのものだろう。
もう1枚の写真を見せた。それはヴェネツィアのサンマルコ大聖堂の大窓で見つけた丸いガラスだった。
このロンデルの直径はどれくらいですか?
高いところにあったので、大きさまでは・・・40㎝もなかったと思いますわ。
ところで円が2つずつ上下に並んだら、4つの円が囲む湾曲した菱形状の空間が生まれます。この菱形状のガラスはどのように作るのですか?
お店のロンデル窓は現代のものですからフロートガラス、つまり板ガラスでしょう。サンマルコ大聖堂の窓はいつ頃のものですか?
ロンデル窓がいつ頃から作られるようになったのかわかりませんが、そんなに古くはないと思います
そこまで話をしたところで、お客さんが途切れなくなり、話は途切れてしまった。

ロンデル窓は他の建物にもあった。これはサンマルコ広場からボート乗り場までの間にあったレトロな雰囲気のホテル。
そしてその窓。
なんといってもヴェネツィアはガラス製作の本場。このホテルの窓は何時の頃にかサンマルコ大聖堂の窓ガラスを真似たのだろうし、ガラス工房のものは更に時代が下がってから真似て作られたのだろう
何気なく面白いと思って撮った窓ガラスの写真だが、思わぬ発見があった。さすがに古代のガラス技術でガラスを作る人だけのことはあるなあ。八木洋子さんにも聞いてみたかった。

※参考文献
「ものが語る歴史2 ガラスの考古学」(谷一尚 1999年 同成社)