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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/10/02

巻いた鹿の角は鳥の頭に

 
鹿の巻角は、騎馬遊牧民によってどのように表現され続けていくのだろうか。鹿の巻角の起源はこちら

鹿文矢筒覆い ロシア、クラスノダル地区ケレルメス4号墳出土 スキタイ(前7世紀末-6世紀初) 金 高40.5㎝幅22.2㎝ エルミタージュ美術館蔵
『世界美術大全集東洋編15中央アジア』は、隆起線で方形に仕切られた区画の中にスキタイ美術に典型的な鹿文様が打ち出されているという。
枝角の先がそれぞれ小さな円になっている。 鹿形飾金具 ロシア、ミヌシンスク近郊出土 タガール文化(前6-5世紀) 長7.5㎝ エルミタージュ美術館蔵
『世界美術大全集東洋編1先史・殷・周』は、角はS字形を連ねたような形状で背の上に伸び、 ・・略・・ このような脚を折り曲げた鹿のモティーフはつね東は中国北方から西はハンガリーに至るまで、ユーラシアで各地に見出されるスキタイ系の動物文様の代表的な一例として。早くから注目を集めてきた。
頭部から前方に突出した枝角が1本である点は、2本が主流で、ときに3本のものも見られる黒海北岸を中心としたスキタイの鹿文様と区別される、カザフスタン以東の特徴である
という。
鹿の角というよりも鎌首をもたげた蛇が並んでいるようだ。 矢筒装飾板 ウクライナ、イリイチョヴォ古墳出土 前5世紀 金製 ウクライナ歴史宝物博物館蔵
『騎馬遊牧民の黄金文化』は、矢筒を装飾したものと考えられており、枝角を持つ鹿を大きく表している。中央部分が欠けているが、鹿の枝角の先には鳥の頭が見えるという。
鹿に蛇・肉食獣・猛禽が襲いかかっている図だが、鹿の角には嘴の巻いた鳥の頭部がたくさんついている。 前5世紀になると、鹿の巻角はついに鳥の頭になってしまった。
『世界美術大全集東洋編15中央アジア』は、表現されている動物のなかでもっとも多いのは鹿である。鹿の特徴はなんといってもその立派な角にある。角は古代社会ではしばしば豊饒や再生のシンボルとみなされていたというが、その鹿を猛禽や猛獣が襲う場面は、自分たちの狩人としての腕を肉食獣に表したのだろえか。 そうすると、鹿の角が鳥の頭になったのは、たくさんの食糧を得たいという願いが込められているのだろうか。

※参考文献
「世界美術大全集東洋編1 先史・殷・周」(2000年 小学館)
「世界美術大全集東洋編15 中央アジア」(1999年 小学館)
「季刊文化遺産12 騎馬遊牧民の黄金文化」(2001年 (財)島根県並河万里写真財団)