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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/08/11

円筒印章に四弁花文?十字文?

 
円筒印章に気になる文様があった。

円筒印章と印影 花文様 前3000年頃 メソポタミア出土 石彫 古代オリエント博物館蔵
加工し易い石だったのか、かなり深く彫ってあるので、印影にははっきりした四弁花文が表されている。
円筒印章と印影 前3千年紀前半 加熱凍石 5.0X1.1㎝ 大英博蔵
『オリエントの印章』は、オーステン・ヘンリー・レイヤードが1845年から1851年にかけて、メソポタミア地方でおこなった発掘で見つかった円筒印章。細長い形状、印材、十字形のデザインは、前3千年紀初めの数百年にわたってみられる、いわゆる「ニネヴェ第5層」様式に特有のものであるという。
上の円筒印章とよく似ているが、こちらは花文様ではなく、十字形と考えられているようだが、私には四弁花文に見える。  印影を描いた図 印章はウル出土 前3千年紀初頭 高約3.5㎝ 捺印物は大英博蔵
『オリエントの印章』は、ほとんど同一の図柄がイラン東部でアフガニスタンとの国境に近いシャワル・イ・ソホタ出土の印章のかけら(テヘラン・イラン・バスタム博物館蔵)にも見られる。ウルとシャワル・イ・ソホタのあいだは直線距離で1300㎞あり、商人の活動範囲の広さを物語っているという。
こちらは十字形を菱形に近い六角形で囲んだ幾何学文である。
1つの図柄の円筒印章は、1人の商人あるいは1つの商団が使用したということなら、かなりの範囲を移動したんやなあ。  円筒印章と印影 初期地不明 初期王朝時代(前2900-2700年頃) 方解石 6.1X1.9㎝ 大英博蔵 
『世界美術大全集東洋編16西アジア』は、十字形、ロゼット、同心円、ジグザグ形などからなる幾何学文の円筒印章。このほかにも三角形、楕円、アーチ形、波状線、平行線、格子文等々が組み合わされ、隙間なく画面を覆う幾何学文印章は、いわゆる「豊かな三日月地帯」の山裾一帯に広範囲に分布するので、「山麓様式」などと総称されることもあるという。
これはどう見ても十字形である。その右には八弁花文がロゼット文として表され、また下には六弁花文も表されているので、花を幾何学的に表現したのではなさそうだ。
高い山で日の出を待つ時、まず縦に光の帯が伸びてくる。ひょっとして、メソポタミアの平たい大地に日が昇る時、このように四方に光が広がっているように見えるのかも。 四弁花文から十字文のデザインが生まれたのだろうか。よくわからないが、その逆ではないと思う。花弁が4枚の花は実際にあるのだから。

※参考文献
「世界の文様2 オリエントの文様」 (1992年 小学館)
「世界美術大全集東洋編16 西アジア」 (2000年 小学館)
「大英博物館双書 古代を解き明かす4 オリエントの印章」(ドミニク・コロン 1998年 學藝書林)