ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2019/08/27
東洋陶磁美術館 マリメッコ・スピリッツ展に茶室
大阪市立東洋陶磁美術館に「フィンランド陶芸展とマリメッコ・スピリッツ展」を見に行ってきた。垂れ幕の上がマリメッコ・スピリッツ、下がフィンランド陶芸。見たまま😁
ロビーに入ると、マリメッコの鮮やかな色とデザインの布で満ちていた。
フィンランド陶芸展は日本各地で巡回された展覧会だが、マリメッコ・スピリッツ展は東洋陶磁美術館オリジナルの開催のよう。
同展のリーフレットは、テキスタイル・ブランドとして知られるマリメッコは、アルミ・ラティア(1912-79)によれ1951年に創業されました。第二次世界大戦後の困難な時代に登場した、鮮やかな色彩と力強くユニークなテキスタイルは、それまでのフィンランドには見られないデザインでした。
本展では、現在マリメッコで活躍する3名のデザイナーによる「JAPAN」をテーマとした新作パターンと、制作過程をご紹介しますという。
2階の赤で表されている2室がマリメッコ・スピリッツ展の会場となっている。
そして、説明パネルは、
OIVAテーブルウェア10周年
この先もずっと一緒に----
2019年は、マリメッコの新定番となったOiva(最高の)テーブルウェアのアニバーサリー・イヤー。
Oivaの歴史は2009年、マリメッコのデザイナー Sami Ruotsalainen(サミ・ルオッツァライネン)が「たとえ100年先でも使えて、マリメッコの大胆なプリントに完璧に合うテーブルウェアをデザインしてほしい」との依頼を受けた時に始まりました。
そして、イラストレーターでデザイナーのMaija Louekari(マイヤ・ロウエカリ)がテーブルウェアのデザインを完成させるために作画を行い、Siirtolapuutarha(シイルトラプータルハ/市民菜園)柄とRäsymatto(ラシィマット/使い込まれたラグ)柄が誕生。このようにして10年前、機能的でありながらもテーブルセッティングの既成概念にはとらわれない、遊び心に満ち溢れたテーブルウェア・コレクションOivaが完成したのです。様々な形を自由に組み合わせることができ、愛する人たちと集まりテーブルを囲みたいと思わせてくれるテーブルウェア・コレクション。毎日、この先もずっと一緒に過ごせるパートナーのような存在に。
このモダンクラシックとも言えるテーブルウェア・コレクションのアニバーサリーを記念し、Oiva10周年記念コレクションをデザインしましたという。
1室目に足を踏み入れると、そこには3枚のパネルが。この部屋に3名のデザイナーの作品が展示されていた。
左にも3枚のパネル
それぞれ裏側にも別のパネル(反対方向から全部を写すのは無理だった)
こちらはなんとか
3名のデザイナー
アイノ=マイヤ・メッツォラ
クースカヤスカリ(Kuuskajaskari) フィンランドの島 リネン100% 2012年
ユッサロ(Jussarö) フィンランドの島 綿100% 2012年
ユハンヌスタイカ(Juhannustaika) 夏至の魔法 綿100% 2007年
シトルーナプー(Sitrunapuu) レモンツリー 綿100% 2014年
マイヤ・ロウエカリ
ヴェルイェクセト(Veljekset) ブラザーズ 綿100% 2016年
ラシィマット(Räsymatto) 使い込まれたラグ 綿100% 2009年
カスヴ(Kasvu) 成長 綿100% 2014年
パーヴォ・ハロネン
ルースルオホ(Ruusuruoho) スカピオサ(着物) 綿100% 2016年
また会場内には、マリメッコデザイン監修により、大阪会場のために全く新しいお茶室が設計されます。フィンランドと日本が出会い、現代のお互いの文化を受け入れて生まれた創造的な空間を体感してくださいという。
各室のフィンランド陶芸を見た後に、2室目のロビーに入るや、右に小さな女性のパネルが目に留まった。
その手前のコーナーには、
パーヴォ・ハロネン(Paavo Halonen) 「アウレオリ」原画 切り紙
使用した道具や
デザインのヒントになった自然界のものなども展示されている。
そしてできあがったテキスタイル。
説明パネルは、パーヴォ・ハロネンは、もっとも得意とする技法のひとつ、切り紙の技術によって本展のために「アウレオリ(光の輪)」という名のパターンを作り上げた。この作品は、葛飾北斎が描いた河童や円山応挙による鶴の絵、宮崎俊の映画など、さまざまな日本の芸術や映画にインスパイアされたものである。染め抜きの手法でプリントされた「アウレオリ」の連綿と続く表層は、自然の地表を表現している。その他のハロネンの作品にも、同様の切り紙の技法がインクによる描画と合わせて使われているという。
原画と同じところがどこかわからなかったが一部を拡大
この女性は、
階段背後の壁面に登場する人物の一人だった。
キルシカンクッカサデ(Kirsikankukkasade) 桜の花の雨 2017年 マイヤ・ロウエカリ作
本展のために彼女が手がけた新作、「キルシカンクッカサデ(桜の花の雨)」は、賑やかな東京の街並みを題材にしている。桜の花の雨が降りそそぐネオン街を、色鮮やかな服に身を包んだ人々が行き交う様子によって、デザインから活気や喜びが放出されているという。
これが東京の街だとは思わなかったが、確かに桜の花が散っている。
説明パネルは、マイヤ・ロウエカリの作品は、物語性のある線画と、技巧を凝らした力強い色合いの融合によって形づくられている。
彼女が手がけるパターンは、ありとあらゆるモノが生息する庭や野原、そして神秘的なフィンランドの森など、多様なモティーフに基づいた視覚的な物語となっている。忘れがちなことだが、生き物たちは、私たちの暮らす町のすぐ近くにいるのであるという。
そのありとあらゆるモノが今回は東京の街を歩く人々で、町のすぐ近くにいる生き物たちは桜の花びらなのだろう。
アイノ=マイヤ・メッツォラ コケデラ(苔寺) 2017年
説明パネルは、アイノ=マイヤ・メッツォラは、テキスタイルをデザインする際しばしば水彩画を用いるが、本展では特に透明水彩絵の具による技法に焦点をあてている。
自然体験が彼女の作品のなかに強く反映されているが、その気分を見る者へ届ける格好のメディアが水彩画なのである。
本展のために制作された「コケデラ(苔寺)」は、苔むした日本庭園や寺院からヒントを得ており、特に苔寺として知られる西芳寺から大きな影響を受けた。情景にまで触れることができるような魅力を感じるデザインであるという。
そして完成したテキスタイル
ところで、このホールは3階に行くための階段が中央にあるのだが、その下に変わった形の茶室が造られていた。
上は障子、下は石垣のような壁紙でKivet(石、Maija Isola 1956年)。入口も躙り口ではなく、普通の和室への入口のよう。
茶室施工者 設計:飯島照仁 大工:工匠織田 表具:静好堂中島 建具:トクダ 畳:藤本畳店 お菓子:老松
入口から拝見すると、茶室のお花畑のような壁紙はLetto(湿原、Aino-Maija Metsola 2016年)
茶道口からのぞく水屋の大きなピンクの花の壁紙は、Unikko Spring(ケシの花、Metsola Isola 1964年、2019年ヴァージョン)。ケシは四弁ではなかったかな。
畳に炉は切っていないが、三畳に小さな床の間が付いている。天井には赤い線が格子状になっていて、目を惹く。
柱・床柱・床框:北山杉 障子:赤杉・美濃紙(石垣張り) 天井(棹縁) 落掛:赤杉 腰張り:西ノ内紙・湊紙 敷居:檜 壁面仕上げ:手漉き美濃紙張り
床飾り
江月宗玩墨蹟「大聖国師難波江上船中作」 松平不昧 竹一重切花入 銘菊
(ともに大阪市立東洋陶磁美術館蔵、松惠コレクション)
花の名が思い浮かばない。夏に咲く六弁の白い花、葉はこの花のものだろうか。
水屋側
壁紙は緑深い森、あるいはフィンランドにあるのかも知れない緑色の花。Hyasintti(ヒヤシンス、Anneli Qveflander)
左に回ると同じ壁紙で、床の間の分が出っ張っている。
茶室の構造と壁紙
説明パネルは、特別展「マリメッコ・スピリッツ」に当館のための茶室を創りたいと館長がつぶやいたのは2018年の夏だった。フィンランド人と茶席に入るなら、上座や下座のない円形に近くこれまでにない茶室が良いと、手元には六角形の茶室のスケッチが描かれていた。この提案をマリメッコは受け入れてくれた。
とはいえ、お茶が点てられなければ茶室ではない。ここで幸運なことに茶室建築家の飯島輝仁氏のご協力を得られることとなった。館長の構想が出発点となり、飯島氏の設計デザインによって、床の間と水屋の配置、客の動線を考慮した八角形の空間デザインがおこなわれた。飯島氏は、初めて館長から話を聞いた時、利休形を根底として構想した、円形に近い優しい空間の茶室が頭に浮かんだという。実施されたデザインのイメージとして、外観には堂島川の河岸をイメージした「Kivet(石)」を廻し、水屋側には水と緑の自然をイメージした「Hyasintti(ヒヤシンス)」を用いた。室内は床の間から茶道口にかけて、色味を抑えるため「Letto(湿原)」に薄い和紙を施して掛物や花入、点前座の調和が工夫された。
はじめ当館から提示した案(図3)は、デザイナーのサミ・ルオッツァライネンを中心に検討された。マリメッコの回答は、一つの空間に一つのパターン、そして白い天井というものだった。確かに、ただ部屋の壁紙としてファブリックを捉えるなら素晴らしい空間となるかもしれないという。
天井は白ではなく、黒に赤い格子のある奇抜なものだったし、水屋はケシの花になっていたし、ヒヤシンスは黒から緑になっていた。
同展は10月14日まで
→アクアライナーでちょこっと水の都大阪めぐり
関連項目
東洋陶磁美術館 フィンランド陶芸展
東洋陶磁美術館 フィンランド陶芸展 ピクトリアリズム
参考にしたもの
同展の説明パネル