ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2019/03/26
東洋陶磁美術館 オブジェクト・ポートレイト展は楽しかった1
いつものようにすでに終了している展覧会のまとめだが、大阪市立東洋陶磁美術館の「オブジェクト・ポートレイト展」(2018.12.8-2019.2.11)は、当館の所蔵の陶磁器と、それを写したエリック・ゼッタクイスト(Eric Zetterquist)氏の写真とが展観されていた。
同展チラシ表
下の茶碗はともかく、上左の写真で右の瓶を思い浮かべるのは至難の業。ほんまに写真かな👀
裏
器体の想像できるもの、あまりにも局所的でどの作品のものか見当がつかないものなど。
幾つ見つけられるだろうか。
美術館に行った時は雨が降っていたので、美術館を遠望せず、玄関脇だけ撮影。
館内図(同館リーフレットより)
二階に上がると、前方に同氏の写真。
そしてラウンジ1を見回すと、リュトン形の器や上下二色の壺などの記憶にある作品や、水注の注口などの写真が。
最初の展示室(J室)の入口。文字を印刷したボードで中が見えない。
パネルの左から2つの壁面をのぞく。
右からも2つの壁面
左最初の展示ケース
作品と写真が一緒に展示されていなくても、黒い説明パネルの作品はどこかに氏の写真もあるらしい。それがどこか探すのも楽しみ。
2つ目のケース 同氏の写真の背景が黒なので、他のケースの作品が写ってしまった。
3つ目
4つ目
5つ目
そう、J室は矩形の一角から入るので、対角が面取になっていて、そこにも展示ケースがあるのだ。
パネルにゼッタクイスト氏の撮影方法
白磁透彫蓮花文盆台
朝鮮時代・16世紀 高39.5径26.4㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、この樽形の庭園用の椅子には、豊かな透彫の花文が施されているという。
力強くうねる蓮華の花や葉の隙間が、こんなに小さく可愛いものであることに気付く。
エリック・ゼッタクイスト 2016年 73.8X58.4㎝
透かしの穴は、線で隔離され、また結ばれることで、コールダーの作品に似たモビールのような姿をみせるという。
ひょっとすると盆台にはこんな細い線状の隙間があったのかと探した。
こんな風に透かしの穴を強調した写真を見ると、透かしの向こうにも同じ形の穴があるのかなと、身をかがめてのぞいてみるがピンボケ。
白磁壺
朝鮮時代・18世紀 高45.0径43.4㎝ 新藤普海氏寄贈
説明パネルは、こうした大きな白磁の球体の壺は、満月に似ていることから「ムーン・ジャー」と呼ばれているという。
胴部の張りと口縁部の反りに特徴がある。
以前の説明パネルは、本作は志賀直哉から東大寺元管長・上司海雲師に贈られ、東大寺の観音院に飾られていましたが、1995年に泥棒が地面に叩きつけ、粉々になりました。その破片が、すぐれた技術による修復を経て、以前と変わらない姿でよみがえりましたという。粉々の写真はこちら
エリック・ゼッタクイスト 白磁壺 2016年 58.9X173.2㎝
皮肉にもこの大きな壺を縮小し、広く黒い画面に配することで、闇夜に月が高く昇ってゆく様子を目にすることができるという。
満月も、ある気象条件ではこんな風に見えることもあるかも
青磁管耳瓶
南宋~元時代・13世紀 高20.9径13.0㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、この青銅器時代の形は、元時代の新擬古主義の流行を物語るという。
青銅器の形、そういえば・・・
青磁管耳瓶 エリック・ゼッタクイスト 2016年 55.8X244.6㎝
本作は、貫入が作品の全体像を描き、その線は無限に伸びて見る者の心に及ぶ。私は左右へ構成を引き延ばすようよに触発された。宇宙へと拡散しようとする、空間におけるエネルギーの渦に、その効果が見られるのであるという。
小さな釉の掛からない箇所があって、そこから長い貫入が放射状に出ているように見える
青磁劃花草花文多嘴壺
蓋がつけてあったら注ぎ口の数に注目せず、蓋や器体の文様ばかり見ていただろう。
北宋時代・11世紀 高29.7幅17.2㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、肩から頸のあたりに生ずる5つの注ぎ口をもつ壺の形は、この時代に特有のものであるという。
線刻された花は牡丹でもなさそう。
エリック・ゼッタクイスト 56.6X98.5㎝
壺の口と、これら周囲の注ぎ口の開口部のみを描くことで、5つの衛星を持つ惑星のように、イメージは占星術のような雰囲気を呈する。注ぎ口のわずかな歪みを読みとることで、ぼんやりとした中心に動きを与えるという。
このような器を上から見るとどうなるだろうという発想さえしたことがない
こんな感じで撮影したのかな。確かに口縁部がちょっとだけ歪んでいる
写真のおかげで上からのぞいたら、肩には簡便な植物文様が線刻されていた
せっかくなので蓋も
何重もの垂れた葉の間から蕾が伸びてきた?それが少し傾いているのも味わいがある
紫紅釉盆
明時代・15世紀 鈞窯 高9.6径24.0㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、走泥文は、焼成後に冷却される過程で形成される貫入の一種で、鈞窯の特徴とされるという。
外の列点文よりも見込の貫入に注目するとは。
エリック・ゼッタクイスト 58.2X77.9㎝
走泥文は作品ごとに異なり、本作では脳を斜め前から見たかのようであるという。
脳を斜め前から・・・
白磁印花花喰鳥文盤
金時代・12-13世紀 定窯 高2.9径21.7㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、鋭さのあるこの盤の形状は、唐時代に中国へもたらされたペルシアの金属器に起源をもつという。
このような形の盤は中国では後々まで受け継がれていった
エリック・ゼッタクイスト 56.1X75.4㎝
逆さまにすれば、覆輪の付いた鋭い口縁部は、完璧なまでに丸い高台と対照的である。これら二つの要素は、斜め前から見ると、龍を描くミニマリストの水墨画によく似ているという。
伏せて写すしたとは。どんな風に撮影したのかと、盤をあちらから、こちらから見たというのに・・・
青磁劃花葉文八角水注
北宋時代・11世紀 龍泉窯 高29.7幅17.2㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、唐時代に外国から影響を受けた唐草装飾は、宋時代初期に禅からの影響を受け、よりシンプルになったという。
日本では今でも唐草文は蔓草もとして残っているが、中国では蔓がなくなってしまったのかな。ロマネスク期の柱頭に見られるような、二段のアカンサスが平面的に表されているような
エリック・ゼッタクイスト 55.8X66.4㎝
この美しい青磁水注に見られる、蓋を伴った頸部と注ぎ口の間にみられる空間の、単純に幾何学的な形状は、この新たな美意識を証明している。同時にそれは、私たちのモダンな感性にも訴えかけてくるという。
この角度かな
こういう箇所に注目する氏の感性!
私は蓋に並ぶ猪目の穴や、器体の稜とその間の凹面などを見てしまう
そしてのびのびした植物の刻線や釉溜まりのガラス質の色など
把手は2本の綱のようで、胴部に陰のような釉溜まりをつくって、一本の垂れた尾のように器体に沿う
青白磁瓜形水注 北宋時代・11世紀 景徳鎮窯 高25.0幅14.2㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、「エレガンス」とは、宋時代の様式を最も特徴づける言葉である。この繊細なつくりの青白磁の水注は、豊かな弧を描くボディを持ち、そこから把手と頸、盤に、まっすぐに収まるよう考えられているという。
ふくよかさと注口の鋭さ
ラウンジ1の壁面にエリック・ゼッタクイスト氏の写真が掛けてあった。
エリック・ゼッタクイスト 143.5X55.4㎝
注ぎ口はとても洗練されており、輪郭を撮影すると、穏やかに水辺を舞う白鳥が現れるという。
羽根を後方でばたつかせながら、水面を走り回る白鳥の姿が目に浮かぶ
写真と離れているので、氏の視点がわからずこんな風に撮影してしまった。でも、注ぎ口がよく写っているでしょ?
蓋のつまみは瓜の種?
把手の上部の環と蓋の円管は金属で繋いであったのだろうか。
ちょっと前側から。肩から胴部の柔らかな膨らみがなんともいえない。
注口の付け根から下へと、柳の葉のようなものが線刻されている。
白磁鉄地壺 朝鮮時代・15-16世紀 高30.6径27.2㎝ 李秉昌博士寄贈
説明パネルは、「古代のモダニズム」の好例となる本作は、大胆にももはやグラフィックアートであるという。
この作品はいつ見てもその大胆さに驚く
エリック・ゼッタクイスト 142.8X56.2㎝
作品の中心を切り取る描写によって、線は表面の曲がり具合を表す可変的な方法で湾曲する。これにより、私たちの心の眼が作品の全体像を満たすように導くのであるという。
こんな風に見て、この作品が口縁部と底部の径がほぼ同じなのに気付いた。
写した写真を切ってみた。上の方から写しているので、口と底の径がほぼ等しいこの壺の特徴は出ていない。もう少し口縁部が水平になるように写せば良かった
→オブジェクト・ポートレイト展は楽しかった2
関連項目
陶磁器で古いものを倣う
オブジェクト・ポートレイト展は楽しかった3
参考文献
「Object Portraits by Eric Zetterquist オブジェクト・ポートレイト エリック・ゼッタクイスト 展図録」 2018年 大阪市立東洋陶磁美術館
ゼッタクイスト氏の青磁八角瓶の写真をもっと部分的に切り取って、書の作品のような表紙です(分厚い)
裏は飛青磁