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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2019/03/19

アルビ サンサルヴィ教会の柱頭とモディヨン


アルビには、サントセシル司教座聖堂(カテドラル)の少し東に、アルビ最古の教会堂、サンサルヴィ参事会教会がある。
商業地区にあり、店舗が教会に密接しているため、その全貌を望むことはできない。

鐘楼についてSAINT-SALVI』は、初めにロマネスク期に石灰岩で、三方が正半円アーチの開口部のある正方形ポーチの上に塔が建立され、二連の装飾アーケードがあるだけで、狭間のある簡素なものだった。
最上階は14世紀にレンガで造られたという。
狭間は参考文献のところに添付した同書の表紙に
同書は、13世紀第2四半期にその上に石材で建て増した。三つ葉形尖頭アーチで、柱頭彫刻をのせた小円柱が並ぶという。
扶壁には2本の小円柱の密接した付け柱がある。ここに並ぶ小円柱は総て細く、植物文様の柱頭は大きすぎる。
人頭、大きな葉文様などの軒下飾り。
三つ葉形尖頭アーチは風化が進んでいるのに比べ、柱頭は左面のように風化したものと、そうでないものが。後補かも知れない。一段のアカンサスの柱頭はそれぞれデザインが異なる。右端はアカンサスの葉らしい表現だが、天空のコルドで見たフォンペイルズ館(Maison Fonpeyrouse、13世紀末)二階の二連窓中央の柱頭に似ている
軒下飾りの丸いものは何だろう。動物の顔でもなさそう。
柱頭の葉文様も、アカンサスの葉がうねっているもの、巻いているもの、アカンサスの葉ではなくなっているものなど
切れてしまったが、左端の軒下飾りには複数の人頭が。
オリジナルの軒下飾りや柱頭は風化が激しくなにが表現されているのか不明。

現在は北側に正面扉口がある。
同書は、北扉口のアーチは馬蹄形である。
14世紀までは、正門は西側にあった。2つのアーケードのある門で、20もの段があって、ピアル広場に面していたという。
窓はゴシック様式だが、北扉口のタンパンを包むアルシヴォルトが馬蹄形だったとは。そう指摘されると、タンパンが半円よりも長く、アルシヴォルトの下部が少し内側に曲がっているかも。
同書は、12世紀のロマネスク様式は、彫刻のないタンパンと2本の円柱のある隅切りであるという。奥行のあるアルシヴォルト(何重ものアーチ形刳形のある飾り)。
『Albi』は、サンサルヴィ像はおそらく14世紀の像のコピーであるが、元の像は失われたという。
風化しているが、外側のヴシュールや柱頭上の水平帯文様には丁寧な環つなぎ唐草文様の浮彫が巡る。同書は、八弁花文の文様帯という。
左柱頭は二段のアカンサス、刻みのある葉が密に表現されている。
右柱頭も二段のアカンサスだが、そこには絡み文様や環つなぎ唐草のような透彫に近い浮彫となっている。

堂内はゴシック様式の交差ヴォールト天井だが、
横断アーチや複合柱の東西面にロマネスク期の柱頭彫刻が残っている。

平面図は『LA COLLÉGIALE SAINT-SALVI D’ALBI』(以下『SAINT-SALVI』)より(オレンジ色の数字は柱頭とは関係ありません)
同書は、現在の平面は12世紀のもの。ラテン十字で、側廊のある7つの柱間の身廊は、張り出しの少ない交差部、2つの小後陣のあるバシリカ式である。
ロマネスク期の後陣に七角の内陣と、側廊の4柱間に小礼拝室が改築された。交差ヴォールトがロマネスク期の堂内を覆ったが、小後陣には半ドームが残っているという。
北東角の二部屋の建物は聖具納室

教会内におられた神父さんにまず本書『SAINT-SALVI』を買い求め、柱頭彫刻の本はありますかと訪ねると、残念ながらないが、古い写真のファイルがありますよと快く見せて頂いた。西半分に身廊両側と側廊に20個残っているらしい。
写真に撮ってもいいですか?どうぞどうぞ
ということで、厚かましく写し始めたが、暗いのでピントは合わないだろうと、そこそこで諦めたが、後でそこそこ写っていることが判明。もっと写しておけば良かった。
また、Google Earthに堂内を見ることのできる360があったので、柱頭の位置がある程度分かった。
①または⑯
植物文様。短い二段のアカンサスの上に大きく蔓草が彫られいている

場所不明
右側面は牛、主面の2つの角には両手を蔓草で結ばれた人物のように見える。頭は渦巻で押さえられている

場所不明
メソポタミアのラマッスを思わせる人面で有翼の動物?
これは『SAINT-SALVI』にも掲載されていて、12世紀のものという。
左側面には女性頭部。人面有翼の動物は、側面から見ると鳥の足で、長い尾はぐるりと巻いて蛇頭となって翼を噛んでいる。
人頭有翼鳥足蛇尾獣とでも呼んでおこうか。
右側面


主面は2本の茎が捻れながら葉を広げる。左側面は人面有翼の動物が走りながら、或いは飛びながら振り返っている。
頂板は小さな菱形を繋いでいる。
右側面の彫刻は不明

その後自分で写して回ったのは複合柱だけ。側廊の柱頭は気付かなかった。
同書は、この柱頭について、エドゥアール・ネリ(Édouard Nelli、19世紀)によるネオ・ロマネスクの後補であるという。

身廊南側西
12世紀の柱頭に表された人頭有翼鳥足蛇尾獣とはかなり趣の異なる細身の像。技術的には優れているかも知れないが、ロマネスクの味わいは出せなかった。
右側面に猪頭

⑧身廊南側東
嘴の長い鳥

⑨身廊南側東
大食いで肥え太った人物の耳に鳥が噛みついている

⑩身廊南側西
蔓に首や体を巻かれ、雁字搦めの鳥、ウズラかな?
⑫身廊北側東
獣頭鳥足長尾獣だが翼はない。
右側面は垂れ耳の犬

⑬身廊北側東
有翼、2本足の動物?右側面に人頭

⑭身廊北側東
ホルンで駱駝を操っているのかと思ったが、駱駝の背に動物が乗っている
身廊南側西
ダニエルの竜退治?
右側面は女性頭部

身廊北側西
犬頭有翼鳥足長尾獣
左側面はウサギ、しかも笑っている

身廊北側西
三つ葉を大きく渦巻く蔓が両側から囲み、別の先は小さな渦巻
左側面は動物だが何か不明
左の柱頭は不明

身廊北側西
翼のない龍頭鳥足龍尾獣、頭部から長いものが出ているよう中央上部には別の動物の頭部。

回廊
同書は、元の回廊は台形で、そのうち2つの回廊は1796年に売却された。西回廊は民衆の通路となり、崩れた。現在では南回廊だけが残っている。正半円アーチの16のアーケードに屋根が架かっているという。
16のアーケードと、
その中間に小さなアーケードが一つ。
同書は、回廊の中央で、最も小さいアーケードを4本の束ね柱が一対で支えているという。
そこには高さのある頂板の下に小さめのコルベイユという柱頭が2つずつ並んでいた。
回廊

西回廊にも少しだけ残っている。
西端に唯一残る柱頭はドラゴン
龍は双方とも下のアストラガル(彫り出された丸縁)に乗っているが、2本の円柱は上端にもアストラガルが表される。

後は西回廊、順不同で、
大きなアカンサスの葉
サンサルヴィ回廊の柱頭には、上端にもアストラガルが表されるようだ
アカンサスの葉は消滅し、渦巻のある蔓だけになっものか
天空のコルド(コルドシュルシエル)の世俗の建物にもあったこぶし花のような柱頭。ゴジラン館(Maison Gaugiran、13世紀)2階の二連窓のものなど
ドラゴンのような架空の動物だが、肢は2本で、両端とも頭部
人物の登場する物語を表した柱頭
こぶし花
小さなアカンサスの葉が上下交互に配される
植物文様とだけしかわからない
細い茎とこぶし花

4本の束ね柱の西面
木蔦

もう一つの4本の束ね柱は小円柱が1本欠けていた
大小のアカンサスの葉が交互に並ぶ

数少ない人物の登場する物語の柱頭だが、何をあらわしているのか不明
中庭側
東面
全部で13人、キリストと十二使徒かな

後半

4つの角に人物が表されていて、内側の斜めの線は大きなリボンのようで、人物との間には葉のような地文様がある。
中庭側の2人。裾の長さの違いは身分などを表しているのかな
東側の中央には2人の人物。着衣は粗く刻まれているだけ


葡萄の葉?


木の葉だけが大きく表されているよう
クサノオウかな

細めのアカンサス

蔓ではなく樹木の枝のよう

東の端
こちらも木の枝

町の地図は中庭が台形に近い形であることを示している。

回廊の奥から中庭を眺めると、通路から中庭に出てきた人。聖堂の南壁に接して北回廊も少しだけ残っている。
北回廊は近年の修復のようで、
彫刻のないものも。
ニワトリは珍しい
こちらはこぶし花

『Albi』は、北回廊の中にはゴシック期のヴィダル・ド・マルヴジ(Vidal de Malvezi)とその兄弟の墓があるという。
北回廊の外側から写すと、切妻屋根と下部の三つ葉形尖頭アーケードの目立つものだった。
同書は、聖母子に跪いて祈る二人は、参事会員の服装のマルヴジ兄弟だろうという。
半円アーチはそれぞれ柱頭も彫られている。人物の容貌はともかく、直線的な衣褶は兄弟の背後で折れてその跪く様子を表し、直立している聖母の裳裾は、長すぎるためにたるみを表現している。
壁龕下部は三つ葉形尖頭アーチやリブと要石の天井まで表現されていて、ゴシック期に造られたものである。
中央柱に彫られた人物の頭部が失われている。
中央の柱の顔の失われた人像について『LA COLLÉGIALE SAINT-SALVI D’ALBI』は、斬首され、剣を持つ人物はおそらく聖パウロであろうという。
左の柱頭は蔓草を誰かが掴んでいる
中央柱の柱頭は大きなアカンサスの葉
右の複合柱には半分に折りたたまれたアカンサスの葉またはこぶし花

そして見逃していたが、サンサルヴィ参事会教会には飛び梁(フライング・バットレス、arc-boutant)が確かにあった。

アルビ あなたの知らないサントセシル

関連項目
コンク、サントフォワ修道院聖堂の柱頭を時代順に

コンク、サントフォワ聖堂 軒下飾り(モディヨン)
フィジャック、サンソヴール聖堂の柱頭・モディヨン

参考文献
「LA COLLÉGIALE SAINT-SALVI D’ALBI」 Emmanuel Quidarré 
「Albi GUIDE TOURISTIQUE CONNAÎTRE」 DANIÈLE DEVYNCK 2011年 ÉDITIONS SUDOUEST