館内図(同館リーフレットより)
I室はいつもの出入口が閉じられているので、ロビー1に回り込むと、H室入口両側に2枚の写真。左は国宝の飛青磁だと想像できる。
もう一点はこちらのG室前の壁。これはニュウに打ち込んだ鎹の部分だ。
I室にも中国陶磁器がケースに並んでいた。
名品が並んでいたが、
エリック・ゼッタクイスト氏が撮影した作品はなく、
あれこれ撮影しながら次の部屋へ。
H室に入ると、左端には国宝の油滴天目茶碗が。
この部屋は小さいので、5点が展示されていて、油滴天目以外が被写体であることが、説明パネルの黒い枠によって知ることができる。
油滴天目茶碗 南宋時代・12-13世紀
いつも展観されているが、今回はエリック・ゼッタクイスト氏の被写体ではなかった。
天目釉が下まで流れずに高台上でとまっているところなど面白いと思うのだが。
ついでに見込も
さて、エリック・ゼッタクイスト氏の写真にある作品は、
青磁長頸瓶 銘「鎹」 南宋時代・13世紀 龍泉窯 高22.8径13.4㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、南宋時代の龍泉窯青磁は貿易品として数多く日本にもたらされ、「砧青磁」呼ばれ珍重され、数々の作品が伝世しています。本作は金属器を写したもので、胴のふくらみから日本では「下蕪」とも呼ばれている器形です。口縁部には大きな「ニュウ」(ひび)が見られ、それを3本の鉄製の「鎹」で修復していることから、それがこの作品の銘となっています。大阪の鴻池家伝来のものですという。
エリック・ゼッタクイスト 101.2X57.6㎝
同展図録は、日本の水墨画はしだれ柳や花木の描写に満ちている。宋時代から日本に伝世され、尊ばれてきたこの青磁瓶には、二世紀の時を経た鎹で留められたニュウがある。鎹止めされたニュウと、高台に見られる鎹のような形をした穴とを浮かび上がらせ、落下する果実一つを描いた禅画のように表現したという。
今まで見てきた器だが、鎹の部分と青磁の色の素晴らしさ、そしてぽったりとした器形しか見ていなかった。高台の穴に記憶はない
照明の反射は時には邪魔だが、この数本の光の縦線のおかげで、頸部の微妙な凹凸かが強調される。
飛青磁花生 元時代・14世紀 龍泉窯 高27.4径14.6㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、釉上に鉄斑を散らした青磁は、日本では「飛青磁」と呼ばれ、茶人らに好まれてきました。こうした龍泉窯青磁は、貿易品として元時代に日本にさかんに輸入されました。優美な曲線を描くこうした瓶は中国では「玉壺春」の名で知られており、主に酒器として用いられましたが、日本では茶席の花生として珍重されました。本作は大阪鴻池家の伝来品であり、伝世する飛青磁の最高傑作ですという。
エリック・ゼッタクイスト 139.5X100.0㎝
同展図録は、エレガントに広がる口元と洋なし形のボディという、完璧に均整のとれた国宝である。非の打ちどころがない青磁釉には、対比的に鉄斑が散る。しかし鉄斑それ自体が、まったくその器形を物語るのであるという。
確かに氏の写真で見当のつく作品であるが、展示の向きが違っている。
口縁部が掛けることもなく、よく残ったものだ
青磁八角瓶 南宋時代・12-13世紀 官窯 高21.0径13.5㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、灰黒色の胎土に、白濁気味の淡青緑色の釉薬が厚くかけられています。類似の弦文瓶は修内司官窯とも考えられている杭州老虎洞窯址や杭州烏亀山の郊壇下官窯址でも出土していますが、釉色や作行など微妙に異なります。釉色の美しさや造形の端正さ、いわゆる「薄胎厚釉」(胎土が薄く、釉薬の厚いこと)など、南宋官窯と呼ぶにふさわしい特徴を有した作品ですという。
同展図録は、中国陶磁の古典として頂点に位置づけられる作品であるそれを念頭において、宋時代の山水画のスタイルでこれを表現した。前景には小舟を浮かべ、小路を進むと、山上には滝と楼閣が見えるという。
これが本当に写真?
浅い角の稜に引っ張られる肩の端は微妙に曲線となり、胴部は平面かも知れないが、ふっくら感ある。
ロビー1にはもう一点横長の大きな写真が。軒下飾り?の鳥形容器も面白いので一緒に。
青磁水仙盆 宋時代・11世紀末-12世紀初 汝窯 高5.6幅22.0X15.5㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
覆輪についてはこちら
エリック・ゼッタクイスト 68.5X289.4㎝
同展図録は、もっとも希少な中国陶磁である汝窯の作品は、もっぱら宮廷のために制作され、世界中で70点未満しか存在しない。長細い卵形の一角を正面に向け、口縁部の覆輪のみを浮かび上がらせることで、さもなければ静的な形を、二本の力強い筆の運びによって表現することができるという。
こんな感じかなと写したが、逆方向だったみたい
G室へ入ると左側には三彩や加彩俑などが並び、まず横長のエリック・ゼッタクイスト氏の写真が目を惹いた。
その写真の作品は?・・・!隣の小さな三彩水注のものらしい。しかも把手のあたりとしか思えない
三彩貼花宝相華文水注 唐時代・7-8世紀 高22.0径12.2㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、ギリシャの注酒器である「オイノコエ」に起源をもつ器型です。唐時代、シルクロードを通して西方からの文物が大量にもたらされ、唐三彩にはそうした西方の金属器やガラス器などを写したものもよく見られます。全面に褐釉が施され、胴部以下には緑釉が二重がけされ、さらに藍彩も加えられています。三彩の多色釉装飾は異国趣味の器物と見事にマッチしていますという。
検索してみると、文化遺産オンラインの黒色彩文篠木手オイノコエ(前6-5世紀)の口縁部と把手がよく似ている。
この形についてはこちら
エリック・ゼッタクイスト 56.2X141.7㎝
同展図録は、ペルシアの華麗な装飾から影響を受けた本作の口づくりや把手は、シンプルな線で描かれた横顔へと単純化されるこれは楽観的な経済指標のグラフのようにも読み取ることができ、唐時代の繁栄を解説するものとなるという。
この辺りだろうが、角度が難しい
肩の貼花宝相華文もカラフル
ケースの続きを見ていて気が付いた。天鶏壺の耳の部分が入口の上の写真だったのだ。
青磁天鶏壺 南北朝時代・6世紀 高48.0径23.6㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、天鶏壺は「鶏首壺」とも呼ばれ、龍形の把手に、鶏の頭を象った注口が特徴です。注口が単なる飾りで実用性のないものと見られることから、副葬用の明器と考えられ、墓からの出土例も多く知られています。本作は北魏墓出土品に類例が見られることからも、6世紀前半の華北産と考えられます。天鶏壺としては最大級のものです。二度がけされた青磁釉はガラス質の美しい発色を見せていますという。
肩部あたりに二度掛けして厚くなった釉薬の濃い色が認められる
青磁天鶏壺 エリック・ゼッタクイスト 56.5X104.7㎝
同展図録は、この壺は、中国の炻器が発達する重要な時期のものである。つまり一貫して高温焼成が可能となり、均一な青磁釉を大量生産できるようになった時期である。様式的には、形は未だ金属器の模倣であるが、顕著な特徴の一つとして丈夫そうな四角い耳がある。この耳越しに見上げれば、かえるの顔が現れる。もしくは小さなたてものの建つ丘の風景だろうかという。
重い蓋のように見えました
どうやって見上げれば・・・
立てたままではこれが限界!
龍頭も鶏頭も丁寧に表現されているので、四角い穴がかえって印象に残ったのかも
そして最後に気付いたのが左の茶碗
月白碗 金時代・12-13世紀 鈞窯 高8.9径19.5㎝ 住友グループ寄贈(安宅コレクション)
説明パネルは、全面に「月白釉」と呼ばれる鈞窯特有の失透性の淡青色の釉がかけられています。文献では鈞窯の名称は明時代以降にしか見られず、鈞窯の最盛期も金時代以降と考えられるようになりつつあります。窯は河南省禹県鈞台窯を中心とした地域にあり、さらに各地でも鈞窯風の製品が生産されていますという。
口縁部の色が金属的なので覆輪ではと目を凝らしたが、そうではなかった
月白碗 エリック・ゼッタクイスト 55.6X73.3㎝
同展図録は、朝顔形に反ったこの鉢は、口縁部にかけて美しく広がっていく。高台から口縁の外周を表す均整のとれた比率は、その境界線を暗示する。輪郭線を消すことで、境界を思い描きやすくするだけでなく、心の眼で鉢の全体像を満たすことができるのであるという。
天目茶碗ではぼったりしすぎているかも
これは真似して撮り易いと思ったが、結果は少し下から見上げてしまい、口縁部中央が盛り上がり気味。
この程度の高さのものなら、私の背丈でも見込がのぞけます
この部屋にはほかにも私の好きな定窯の大鉢が。
白磁刻花蓮花文洗 北宋時代(11-12世紀) 定窯 住友グループ寄贈(安宅コレクション) 大阪市立東洋陶磁美術館蔵
説明パネルは、器の内外に表された蓮花文は、定窯特有の牙白色(アイボリー・ホワイト)の白磁の中に浮かび上がっています。光を通すほど極めて薄くつくられており、ゆがみがなく焼成するために上下逆にして焼かれました。定窯白磁は宋・金時代に宮廷内でも用いられましたが、本作は宋代定窯白磁の優品の一つです。釉のかかっていない口縁部には銀製の覆輪がはめられていますという。
しかも、何時写してもいまいちの写真ばかりなので、全体を撮影することをあきらめ、部分的に撮ったら、ヘラで文様を描いたその深浅までがよく写っていた。
しかも暗い外側も。
ロビー2にはエリック・ゼッタクイスト氏の写真が2点。作品はどこに?
片隅にルーシー・リーの茶碗も。ルーシー・リーの作品も好きなので、いつかまとめたいと思いながら日はどんどん過ぎてしまった
中央の階段から三階の李秉昌氏のコレクション室となっているD室へ。奥の壁にもうエリック・ゼッタクイスト氏の写真と作品が。
でもそれまでにもケースがあって、
広い部屋にたくさんの作品が並んでいる。
奥の壁に青磁陰刻花文唾壺
高麗時代・12世紀 高11.9径24.9㎝ 李秉昌博士寄贈
説明パネルは、この器形は唾壺とも退酒器とも呼ばれ、中国・唐代から伝わる器形で、高麗青磁では陰刻や象嵌の作例があります。本例のように大形のものは時代的に先行すると考えられています。内面に大きな花文が陰刻され、釉色は灰青緑色で貫入もなく鮮やかに焼き上がっています。器底は浅く内刳りして全面施釉され、硅石目跡が4つ残っていますという。
茶碗と小壺の組み合わせのような作品
エリック・ゼッタクイスト 56.6X59.2㎝
同展図録は、少量の液体を集めるために広い標的を用意する、という機能のために、唾壺はいつも大胆な形状をしている。エッジに沿って視線を向けてホットスポットをを据えることで、この堂々とした高麗青磁の形を、20世紀初頭のフォトジェニックな様式で写したという。
こういう見方ができるとは
真似て撮影を試みる。蛇行する蛇のように側面に陰ができると良いのだが
やっぱり無理
見込の花文
別のコーナーの
角形の容器が並んだ中に1点エリック・ゼッタクイスト氏の写真が。
青花山水文角瓶 朝鮮時代・18世紀後半 高17.9幅8.8X8.9㎝ 李秉昌博士寄贈
説明パネルは、胴の4面に円圏を儲け、山水文を描いています。山水文は4面とも同じ構図で、遠景には月の懸かる山、近景には岩と樹、そして中景には大きな空間が残されています。簡素で静寂、文人趣味豊かな絵付ですという。
エリック・ゼッタクイスト 55.9X23.6㎝
同展図録は、遠くからは厳格な角形のように見える作品は、よく見ると、わずかにカーブし、反っている。これにより、より柔らかでチャーミングな魅力をもつ。これを写真の直線的な枠組みの構成に窮屈に押し込めば、その曲線はより明確になり、劇的な効果をもたらすという。
作った時はまっすぐでも、焼成する過程で歪みが生じたのだろうか。そのせいか器体と底のくっつきが良くないようで、液体を入れるとにじみ出てくるのでは
こんな感じ、でもなさそう
円窓から眺めた景色のようで、何も描かれていない中景には湖があるのか、雲が立ちこめているのかなど想像が膨らむ
こちらには絵の真ん中に文字が刻まれている。持ち主の名前だろうか
そしてまた向こうの壁面にゼッタクイスト氏の写真が、
壺の並ぶケースと皿のようなものが1点展示されたケースの間に。
その写真は左の平たい作品のものらしい。3つも丸い突起があるけれど。
青花仏手柑角皿 朝鮮時代・18世紀後半 高4.7幅21.9X18.8㎝ 李秉昌博士寄贈
説明パネルは、この器は、特異な形から祭器と考えられていますが、類例は稀です。分厚い板状の台の四隅に球状の支柱をつけ、みるからに頑丈な作りの器です。朝鮮時代の陶芸の実用的傾向をよく示し、絵付ものびのびとしていますという。
説明パネルにはそれぞれ底や裏側の写真がある。この作品は側面の厚さそのままの板に各角の丸い脚、そして中心に僅かな出っ張りがあるが、たわみながらもその出っ張りが5つめの脚にはなっていない。
エリック・ゼッタクイスト 55.6X107.7
同展図録は、厚い四角い板が球形の脚に乗った形状の本作は、焼成中にたわみ、結果的に楽しげな歪みが生じた。輪郭を撮影すると、いっそう明らかである。この種の不完全さは、「窯の神」の仕業として、日本の茶文化では賞賛される。完璧にまっすぐな作例よりも望ましいものと見なされているという。
この器が作られた朝鮮半島では、歪みやたわみといったものを良しとしていたのだろうか?
ガラスの向こうにあるものを写真通りに撮影するのは無理だが
別のケースにもゼッタクイスト氏の写真が。
盃と台の重なったものだった。
白磁鉄地堆花牡丹文杯・杯台 朝鮮時代・19世紀前半 杯:高12.6径12.3㎝ 杯台:11.0径14.6㎝ 李秉昌博士寄贈
説明パネルは、杯としてはかなり大形で、日常用ではなく儀器、あるいは祭器と考えられますが、杯、杯台ともに白磁の素地に白磁胎土を盛り上げて牡丹文を表し、周辺を鉄絵具で塗りつめています。白と鉄色の対比が鮮やかな作品ですという。
写真とはちがって口縁部の内側が全く見えない
エリック・ゼッタクイスト 55.7X40.6㎝
同展図録は、貴族的な杯の外側には、濃い柿釉が施され、装飾に侵されない。その外側を消して、白い杯台だけを描くと、白い碗の内側が、その完璧に均整のとれた台の上に、魔法のように浮かび上がるという。
台の縁の角度が二段階になっていることに気付く。
白い牡丹文は線刻だけではなく、浅浮彫のよう
このケースの上にあるゼッタクイスト氏の写真はケースの作品とは呼応していない。
別のケースに3つ並んだ筆立ての右端がその写真の対象であるらしいのだが。
青花陽刻虎文筆筒 朝鮮時代・19世紀前半 高18.1径16.4㎝ 李秉昌博士寄贈
説明パネルは、大形で厚造りの円筒筆筒ですが、底部に透彫の台座を持つものは、多くありません。虎、桐、双鶴、月などを浮き彫りで表し、要所にコバルト顔料を加えています。めりはりの利いた表現の、荘重な趣きを持つ筆筒の優品ですという。
エリック・ゼッタクイスト 87.6X149.8㎝
同展図録は、この朝鮮陶磁の筆頭の透模様を施された台座は、ネガの空間を切り取ると、古代から用いられてきたデザイン要素である。中国の饕餮文に影響を受けたような模様が見られるという。
できるだけ向こう側の穴と合わせて写してみた。饕餮文に見える?
オブジェクト・ポートレイト展は楽しかった1←
→オブジェクト・ポートレイト展は楽しかった3
関連項目
陶磁器で将来されたものを倣う
定窯白磁の覆輪と覆焼
饕餮文は瓦当や鋪首に
参考サイト
文化遺産オンラインの黒色彩文篠木手オイノコエ
参考文献
「Object Portraits by Eric Zetterquist オブジェクト・ポートレイト エリック・ゼッタクイスト 展図録」 2018年 大阪市立東洋陶磁美術館
ゼッタクイスト氏の青磁八角瓶の写真をもっと部分的に切り取って、書の作品のような表紙です
裏は飛青磁