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忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2017/05/30

木X仏像展 東博蔵木造菩薩立像


「木X仏像展」では、かなり以前に東博のホームページで知った飛鳥時代の木造菩薩立像に会えるのを楽しみにしていた。

菩薩立像 飛鳥時代(7世紀) 木造(クスノキ) 高106.1㎝ 東京国立博物館蔵
同展図録は、大きな顔、極端に細いウエスト、両肩と両腕から垂れる魚のヒレのような形状の天衣、一度見たら忘れられない、何とも不思議なすがたの個性的な菩薩立像である。また、両肩にみられる蕨手状の垂髪、天衣が膝前でX字状に交差しその端が左右にヒレ状に広がる表現は、法隆寺夢殿の救世観音菩薩立像と共通する形式であるという。

救世観音立像 飛鳥時代飛鳥期(7世紀前半-半ば) 木造金箔 像高178.8㎝ 法隆寺夢殿安置
『法隆寺』は、頭部に大きな宝冠をいただき、火焔付の宝珠を、右手の掌を前に向けて両手で胸前に捧げ、宝珠形の光背を背に、高く盛り上がった反花座上に立つ。表面は漆で目留めをし、白土下地を施した上に金箔が押された珍しい手法が用いられている。墨書された眉や髭、鮮やかな朱彩がのこる口元は衆生救済の慈悲に満ち、いかにも太子を意識して造顕されたように思える。
金堂の釈迦三尊像と同じく、著しく正面観が強調されながらも、肉体性を具えた、生身の太子の尊像が重なる不思議な像であるという。
東博本は同じような時代に造られているので、様式的に似たところはあるが、当時の仏師が直接本像を見て造ったとは思えない。

顔が大きく見えるのは、脚が膝の下ほどにしか残っていないのだろうと思っていたので、足元を見て廻ったが、足首よりも太くなっているようで、甲やかかとが失われている程度なのだった。
このように見ると、X字状に交差する天衣も膝上辺りまであって、バランスはとれている。やはり顔が大きすぎるのだ。
三日月形で中央に突起のある胸飾りの下方に左から右へ斜めに曲線が走るように見えるが、その面をじっくり見たら、上側が下側よりも出ていた。僧祇支を着けているのだと思って見ていたら逆に着衣の方が凹んでいた。
穏やかだが特徴的な顔は一目見て飛鳥仏と思ったが、似た顔を探しても見つからない。
口元のまわりがくぼみ加減に表現されているところは、法隆寺献納宝物の中で異例の木彫如来立像に似ているように感じる。

N193 如来立像 飛鳥時代白鳳期、7世紀後半 木造(クスノキ)漆箔 像高52.6㎝ 東京国立博物館蔵
『法隆寺宝物館』は、法隆寺献納宝物のなかでただ1つの木彫像。頭から台座まで1本のクスノキから作られている。飛鳥・白鳳文化期の木彫像のほとんどはクスノキから作られている。この像は7世紀後半の白鳳文化期の作という。

『木X仏像展図録』は、現状では両肘先を欠失するが、肘が左右同位置にあることから、両手で宝珠を捧持していた可能性も考えられるだろうという。
不思議なことに、蕨手のかかる肩から腕にかけての鰭状のものが上腕を覆っていると思っていたが、背後から見ると、細い二の腕は天衣と一体化しているようにも見え、そして、前に出ている円筒状の腕とは繋がっていない。おそらくこの像を制作した仏師は、何段か鰭状に拡がる菩薩立像のそれぞれが表すものが分からないままに、見よう見まねでつくったのだろう。

同展図録は、側面から見ると高浮彫像のように薄く前半部しかなく、背面は衣文を表さずのっぺりとしており、奈良・法隆寺金堂の国宝・金銅釈迦三尊像脇侍菩薩立像のように、ほとんど正面観しか考慮されていないのも本像の大きな特徴である。
構造は頭部から脚部までクスノキの一材から彫出したもので内刳は施さず、わずかに彩色がのこる。このような特徴から、本像の制作年代は飛鳥時代にさかのぼると考えられているという。
法隆寺金堂釈迦三尊像脇侍菩薩
側面から見ることを考えずに仏像を制作していた頃の仏像は、正面から見ると肉厚なようで、側面から見ると非常に薄い。本像も幅はないが、側面から見ると腹部が反っている。
しかし、東博本はその反りもない。

同展図録は、同時代の法隆寺諸像をはじめとする「都ぶり」の造像などを手本とし、地方の工匠が造り上げたのだろうか。本像はその時代を超えるプリミティブな造形により、「仏像とは何か」、「人はなぜ仏像を造るのか」という本質的なことを私たちに問いかけているように感じるという。
「都ぶり」を手本とした仏像を真似て造り、またそれを真似て造りということを何回か繰り返しているうちに、細部が何かわからなくなっていき、東博本のようよな仏像が造られたのだろう。
この文にも記されているように、だからといってこの像は仏像としての値打ちがないのではなく、見る人を惹きつけるものを持っている。



木X仏像展 法隆寺四天王像に似た小像←   →木X仏像展 四天王寺の仏像

関連項目
木X仏像展 10世紀の地蔵菩薩立像
法隆寺献納宝物の中に木造の仏像

参考文献
「木X仏像展図録」 編集大阪市立美術館 2017年 大阪市立美術館・産経新聞社
「法隆寺宝物館」 1999年 東京国立博物館