お知らせ

忘れへんうちに 旅編に、中央アジア各地の旅に続いて、イランの旅を記載し始めました。
その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/10/16

打出し列点文も粒金細工から?

 
粒金細工の最古の作品は今のところウル王墓出土の短刀の鞘(前2600-2500年)だが、打出し列点文はギーラーン出土の金製首飾り(前1000-500年)にあった。打出し列点文はどこまで遡るのだろうか。

豊穣の女神の首飾り 前2千年紀(前2000-1000年) ウガリット シリア国立博物館蔵
『シリア国立博物館』は、金の板を加工したものと玉を交互に連ねている。ヒトデ形の金板や筒形のもの、点状に打ちだし飾りをつけたものとさまざまな金属加工の技術が試みられている。中心にたれさがる金盤には豊穣の女神が表現されているという。
①裏向きになっているが、十字文の中央に丸く打出した点文が見える
②ヒトデ形とされている六角形の中心部に打出し列点文がある
③小さな木の葉形の周囲に打出し列点文が並び、その中央には大きな打出し点文が小さな打出し列点文に囲まれている
④大きな木の葉形を打出し列点文がを一周し、大きな打出し点文は文様にも使われている。
冠 前3千年紀後半(前2500-2000年) トルコ、アラジャ・ホユックA墓出土 金 高5.4㎝径19.2㎝ アナトリア文明博物館蔵
『世界美術大全集東洋編16西アジア』は、比較的幅があり、細かな透かし状の装飾が施されるのが特徴である。透彫りは、三角形の透かしを方向をたがえて四つ組み合わせることで格子目文にX字形文(襷状)が組み合わせた形となっている。それぞれの三角形は、外側から鑿(のみ)状の工具で3回打ってくりぬくことで作り出されているため、微妙に形が異なっている。これが水平方向に4段にわたって全周する。上縁と下縁には内側からの打出しによる点文が認められるという。
三角の形はそれぞれ異なるが、列点文はほぼ等間隔に打ち出されている。また、水平の透彫の間には3段の大きめの列点文が並んでいる。どちらの作品も、打出し文は粒金の代わりのような気がする。そうだとすると、それぞれの地に粒金細工の作品があったのか、金冠がほかの場所からもたらされたものということになる。

ところで、金冠の縁に列点文が巡るというのは新羅の金冠と似ている。また、天馬塚出土の金製冠帽では金板に文様を切り出して残った細い直線や曲線にも打出し列点文あるいは打出し文が施されている。しかし、3000年近くの隔たりは、アジア大陸の東端と西端の距離よりも大きいなあ。

※参考文献
「世界美術大全集東洋編16 中央アジア」(2000年 小学館)
「世界の博物館18 シリア国立博物館」(1979年 講談社)