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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2009/10/13

貨幣の列点文は受け継がれて

 
アレクサンドロスの遠征以降、硬貨の列点文はどうなったのだろう。

アンティオコス2世硬貨(表) 銀 セレウコス朝シリア(前261-246年) 平山郁夫氏蔵
ディアデムを戴く右向きの王頭部の周囲に細かな列点文が見られる。マケドニア製のアレクサンドロス銀貨以上に小さな列点文かも。アンティオコス2世の横顔も髪の毛まで丁寧に表わされ、ヘレニズム期らしい作品となっている。 カニシュカ1世硬貨(裏) 金 クシャン朝(2世紀) 平山氏蔵
頭光、身光のある、右手施無畏印の仏陀立像はほぼ隙間なく大きめの列点文が巡っている。紀元後でも硬貨に列点文をつけることは受け継がれていたのだ。 アルダシール1世硬貨(表) 銀 ササン朝(224-241年) 平山氏蔵
鷲文と耳覆いのあるティアラ冠を戴く、右向きの国王胸像には小さな列点文が密に並んでいる。やっと硬貨らしいものに出合った。ササン朝でも列点文のある硬貨が刳られたのだ。  ホスロー2世のディナール硬貨(表) 金 ササン朝(590、591-628年)
『ペルシャ文明展図録』は、王の右向き肖像。弱体化した帝国を、西はエジプト、アラビア半島にまで広げ、一時的に帝国最大の版図を誇り「勝利者」と呼ばれた。やがて東ローマとの戦いで捕虜となり、殺害される。その後ササン朝は短命の王が乱立する混乱期に入るという。
ササン朝末期になると硬貨の縁ぎりぎりに列点文が巡っている。ホスロー2世の横顔はアルダシール1世と比べると表現に深みがなくなり、髭などやたら点々で表現されて簡略化されているが、列点文の外側の余分なものがなくなり、硬貨としては完成度が高い。 ソグド硬貨 銀 時代不明
ホスロー2世の金貨とよく似ているので、同じような時代に製作されたものだろう。こちらの方が列点文が大きい。 アレクサンドロスが遠征したあちこちで、後の時代にも各地で列点文の巡る硬貨が造られていたのだ。

※参考文献
「古代バクトリア遺宝展図録」(年 MIHO MUSEUM)
「ガンダーラとシルクロードの美術展図録」(2002年 朝日新聞社)
「ペルシャ文明 煌めく7000年の秘宝展図録」(2006-2007年 朝日新聞社)
「週刊シルクロード紀行13 タジキスタン」(2006年 朝日新聞社)