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忘れへんうちに 旅編では、イスタンブールで訪れたところを長々と記事にしています。その中で興味のある事柄については、詳しくこちらに記事にします。

2007/04/12

透きとおるいのち 田上恵美子ガラス展は銀座で


田上恵美子さんは田上惠美子さんでした。

田上恵美子氏より次回個展の案内をもらった。タイトルにトンボ玉やコア・グラスではなく、ガラスとあるので、ハガキの写真をよく見てみると、穴がなかった。鉄の棒に粘土を付けて、それに溶かしたガラスを巻いていくトンボ玉の技法とはまた違った作り方のようだ。写真の下側が鏡映だとすると、球あるいはそれに近い形をしていることになる。
確か、ガラスの最初のものは、開放鋳型による鋳造だったはずだ。

1 脈状文方形ガラス珠 前16世紀後半から前13世紀 パレスチナまたはシリア出土 岡山オリエント美術館蔵
『ガラス工芸 歴史と現在』展図録は、白色透明ガラス、現在は風化の為、青色ガラス(原色)。技法は開放鋳型。ほぼ正方形で上部表面は5つのリブ状、下面は平、側面に各2ヵ所の穴があいている。一連の頸飾りに使用したものかという。

どれが青色でどれが白色透明なのか見た目ではわからないくらい風化している。下面が平らということで、たとえは変だが、たこ焼きの型状のものに、溶かしたガラスを流し込み、そのままさますと下側が文様があり、上側が平らに仕上がる。完成品はその逆で、文様のある方が上面になる。2 レリーフ・ビーズ 前15から13世紀 東地中海沿岸地域出土 紺色透明ガラス 岡山オリエント美術館蔵
『ガラス工芸 歴史から未来へ展図録』は、開放鋳型で作られた製品。22点のビーズが1連になっている。 ・略・ 渦巻き文は縮れた頭髪を表したものとみる見解もある。類例はロードス島やギリシア本土各地のミケーネ遺跡などから出土している(各出土地名は省略)。それらは北メソポタミアやシリア・パレスティナで出土する青色鋳造ビーズより薄手で、ラピスラズリを想起させる青色から紺色のガラスを開放鋳型で鋳造成形し、同心円やロゼット、パルメット、蔦、戦士、貝殻などの文様が金属器に似た精巧な浮彫で施されている。 ・略・ ミケーネやクノッソスでは凍石製の鋳型も発見されているという。

出土地とは異なり、ミケーネで制作されたものらしい。確かにミケーネの方が精密な作りである。1のビーズよりも軽量でアクセサリに適していただろう。ところで、古代ガラスの製作方法は現代のガラス作家でも解明できないものがあるようだ。

3 ゲーム・ピース 前2から後3世紀 出土地・所蔵者とも不明 
開放鋳型なら、円錐形のゲーム・ピースは作れるだろうということは、素人の私でも想像がつく。では穴のない球状のものはどのようにして作ったのだろう。

4 ゲーム・ピース 前1世紀 イギリス、ウェリン・ガーデン・シティの墓出土 大英博物館蔵
これが球か半球かは実物を見たことがないのでわからないのだが。半球であれば、上の円錐形のものと同様に開放鋳型で作ることができるだろう。しかし、半球状のものを、2つの平面側を溶かし合わせて球状にするなどということができたのだろうか。もしできたとしても、透明ガラスで制作した田上恵美子氏の作品には繋ぎ目の不自然さがなく、そのような作り方をしたのではないだろう。
はたして、田上恵美子氏はどのようにしてあのような球状のガラスを創り出したのだろうか。実物を見てみたいが、東京は遠すぎる。

    田上恵美子ガラス展は銀座のビーエイブルであります。  
また、その後の田上恵美子氏の個展や作品は以下に掲載しています。

日本にも金層ガラス玉が-藤ノ木古墳の全貌展より
日本のガラス玉は
田上恵美子氏のすきとおるいのちと透明ガラス

※参考文献
「ガラス工芸 歴史と現代」 1999年 岡山オリエント美術館
「ガラス工芸 歴史から未来へ」 2001年 岡山オリエント美術館
「トンボ玉」 由水常雄 1989年 平凡社